狭小空間向け点検ドローン「IBIS2」が登場し、「Japan Drone & AAM Awards 2023」ハードウェア部門にて最優秀賞を受賞した。その実力に迫る。

　Liberaware（リベラウェア）は2023年6月26日に、インフラ設備やプラントなどの屋内狭小空間点検に特化した新型ドローン「IBIS2（アイビスツー）」をリリースした。インフラ設備やプラントのメンテナンスは、老朽化や人材不足、維持費の高騰など、さまざまな課題を抱えている。そんな状況の中で、IBIS2は、「狭くて、暗くて、危険な」設備の点検の可能性を拡張し、効率化や安全性の向上などに貢献すると期待されている。Liberawareは、IBIS2のリリース後、6月26日～28日に開催された「Japan Drone 2023」に出展し「Japan Drone & AAM Awards 2023」のハードウェア部門で最優秀賞を受賞するなど、業界の注目を集めている。

最小クラスの機体と独自技術で「狭くて、暗くて、危険な」設備の点検を効率化

壁面などへの接触や空気抵抗を考慮し、丸みを帯びたフォルムが採用された。
高感度の広角カメラ（垂直：80.1°、水平：131.0°、対角：143.9°）や自然光に近い色のLEDライト、防塵構造モータにより、暗闇や粉塵環境でも撮影可能。
壁面との衝突が想定されるエリアでの安定飛行のため、独自開発のラウンドフォルムを採用。上下反転した状態から再離陸できる「タートルモード」も備える。
機体150gに対し、バッテリーは93g。最長11分の飛行が可能。40gのペイロードによって上方カメラ・サーモカメラなどを搭載する場合は、最長9分。

　IBIS2の機体は、業界最小クラスの20cmサイズ、重量は243gと非常にコンパクト。飛行の安定性を高めるため、ボディはラウンドフォルムとなっており、独自開発の飛行制御システムによって、壁面との衝突が予想される狭いスペースでも安定した飛行を実現している。独自開発のモータはIP51規格の防塵構造を持ち、高感度・広角のイメージセンサと、自然光の色に近く照射角度にもこだわって設計したライトによって、暗闇や粉塵、水滴など過酷な環境でも鮮明な映像を記録できる。最大飛行時間は前モデルの8分から11分に延長し、さらに、衝突や墜落などで上下反転して落下した場合でも、片側のブレードのみを動作させて機体を離陸体勢に戻す「タートルモード」を搭載し、帰還率を向上している。ボディ素材には軽量かつ柔軟なポリカーボネート素材を採用し、施設に接触した場合でも、設備・機体双方の損傷リスクを低減する。40gのペイロードをサポートし、上方カメラやサーモカメラなど、要望にあわせた撮影オプションにも対応する。動作可能温度は-5℃～60℃となっており、人が長時間滞在できない空間でも点検作業を可能とする。また、電波が届き難い場所で点検業務を行うため、独自にエクステンションアンテナを開発し、通信距離が向上した。IBIS2はこれを常時つないで運用する。

外形寸法は194mm×198.5mm×58mm、重量243gとコンパクトながら、最大ペイロードは40g。業界最小クラスの20cmサイズで、30cmの点検口への進入や、直径50cmの配管内の飛行なども可能とした。

　Liberawareでは、IBIS2の提供プランをいくつか用意している。「点検サービスプラン」は、同社認定のドローンパイロットが現地へ赴き、点検箇所で飛行・撮影を行い、動画を納品する。要望に応じて3Dモデルや点群データ、オルソ化などのデータ生成に加え、点検報告書作成までワンストップで提供可能とする。ユーザー自身がドローンを操作する「導入プラン」には、点検ドローン2機と必要備品一式セットを年間レンタルするプランと、販売するプランがある。導入・運用を支援する講習会や修理サービスも提供している。設備点検における小さなドローンのメリットとして、稼働停止時間の削減が挙げられる。

要望に応じて、形状・距離・体積を正確に把握できる3Dモデル化や点群化、立体的な設備を平面画像で管理可能にするオルソ化、各種調査報告書の作成にも対応するプランを用意。

人が立ち入れない場所を可視化！

　従来の設備点検では、足場の設置や撤去に多くの時間を必要としていたが、これらが不要となり、設備の稼働停止時間を短縮できる。ボイラー、煙突、下水道、ダクト、配管、エレベーター、立体駐車場、天井裏、タンク、アスベストが疑われる場所など、狭い空間や危険な環境に人が立ち入る必要がないため、人身事故のリスクがゼロに近づき、安全性の向上にもつながるだろう。

ダクト内部

ダクト内部など、粉塵や水滴の影響がある環境においても鮮明な映像を残せるよう、イメージセンサやライトの照射角度にこだわった。

煙突内部

動作可能温度は-5℃～60℃となっており、煙突や配管、タンク、熱処理炉の内部など人間が快適に過ごせない環境でも点検可能。

下水道、カルバート

衝突しても姿勢を崩しにくい飛行制御システムを独自開発。石や異物が堆積した下水道のような場所でも安定した飛行で調査をサポートする。

天井裏

配線やダクトが行き交う屋根裏や地下の状況把握が可能。衝突などで上下反転した場合でも離陸できるタートルモードにより帰還率も向上。