測量や点検などのドローン関連サービスやドローン運航管理システム(UTM:Unmanned Aircraft System Traffic Management)を手掛けるTerra Drone(以下、テラドローン)は、2024年11月29日に東京証券取引所グロース市場に上場した。株式コードは「278A」、業種は精密機器、主幹事はSMBC日興証券。初値は2162円で、公開価格2350円を下回るスタートとなったが、初日の取引は2363円で終えた。

写真:「祝上場 Terra Drone株式会社 2024年11月29日」と表示されたモニター前に並ぶテラドローン関係者
上場セレモニーの様子

インフラ維持の課題解決や、日本発のグローバルベンチャー創造を目指す

 テラドローンは、「低空域経済圏の構築」というビジョンのもと、ドローンや空飛ぶクルマを活用した持続可能なエアモビリティ社会の実現を目指している。測量、点検、農業など多岐にわたる分野で累計3000件以上のプロジェクト実績を持ち、ドローン運航管理システム(UTM)は世界10カ国で導入されている。これらの実績により、海外の市場調査レポートである「Drone Industry Insights」のランキングでは、2020年以降連続してトップ3入りを果たしている。

 2024年1月期の連結売上高は29億6332万3000円で、前年の19億4935万円から52%増収と大きく成長した。一方、連結当期純損益は3億5386万8000円の赤字だったが、前年の11億1163万2000円の赤字から大幅に縮小した。先行投資の影響で2025年1月期も赤字が見込まれるが、売上高は41億円を超える予測をしている。

 上場記者会見で、代表取締役社長の徳重徹氏は、テラドローン設立には2つの背景があるとした。1つは高齢化に伴い増大するインフラ維持費への対応で、ドローンを活用して迅速かつ安全で低コストの解決策を提供する必要性だ。もう1つは、米国でスタートアップがイノベーションを牽引する中、日本からも世界に通用するメガベンチャーを生み出すという強い信念だ。同社は設立当初から世界市場を視野に入れ、グローバルな事業展開を積極的に進めてきたと強調した。

写真:話をする徳重氏
代表取締役社長 徳重 徹 氏

 テラドローンは、量産型ハードウェアを製造する企業ではなく、現在は主に2つの領域で事業を展開している。1つ目は測量や点検、農業といった領域のソリューション分野。2つ目はドローンの運航管理システム、いわゆるUTMを手掛ける事業だ。このUTMは、ドローンが多数飛行する状況において安全を確保するための管理システムであり、各国の国土交通省や航空局に採用されることを目指している。徳重氏は、「どのような作業においても最終的にはプラットフォーム事業が重要になると考えており、このUTMの分野に注力している」とした。

国土交通省傘下のファンドとも連携し、測量事業で存在感を示す

 日本国内では測量事業を主力として展開している。2016年ごろから国土交通省が打ち出したi-Constructionの取り組みを背景に、建設現場での人手不足や高齢化が深刻化する中、土木測量の効率化とデータ化の重要性が増している。国土交通省傘下の官民ファンドである海外交通・都市開発事業支援機構も株主に名を連ねており、日本では特に道路分野で土木測量が進んでいる。同社はこれに対応するため、ドローンを活用した測量を行っている。

 土木測量には、カメラを搭載したドローンによる写真測量と、レーザーを用いるレーザー測量の2種類があるが、同社はより高度な技術を必要とするレーザー測量に特化している。自社開発のレーザースキャナーを用いることで、高精度なデータを提供している。この測量サービスは建設会社や測量会社を主要顧客としており、ハードウェアとソフトウェアを組み合わせたソリューションを通じて、収益基盤を確立している。

従来の測量(約45日)、ドローンレーザー測量(約1.5日)
ドローンによる測量は高い効率性を誇る