測量・調査・施工管理・点検分野などさまざまな場面でドローン技術の導入が進んでいる。ドローン技術を活用して「測る」「量る」「図る」に関連するビジネスを展開するアミューズワンセルフの冨井天夢氏が、同社が手がける国産ドローンシリーズ「GLOW」やドローン用レーザースキャナシステム「TDOT」、さらにドローン技術を活用したブルーカーボン領域での取り組みまで、さまざまなドローン測量手法について解説した。2024年9月に開催された「ドローンジャーナルカンファレンス 2024」の講演内容を紹介する。
「測る」「量る」「図る」に関するハード/ソフトを自社開発
ドローン技術を活用して「測る」「量る」「図る」に関連したビジネスを展開するアミューズワンセルフ。「測る」は測量分野でのサービスを、「量る」は体積などの計量サービスを、「図る」はハードウェアやソフトウェア開発などによる企画や作戦の立案サービスをそれぞれ指している。
アミューズワンセルフが自社開発したハードウェア、ソフトウェアは、2001年の創業から2023年までに400以上に上る。得意としているのは、有人航空機、船舶、自動車など、移動するものにセンサー類を搭載し、3次元化していくことだ。
2007年には自動車よる3次元測量を行い、点群データをモデリング処理してメタバースのような空間を作り上げた。エジプトのピラミッドを測量した際は、27万枚の画像や60億点の集合体データを作成した実績もある。
「2007年の新潟県中越沖地震、2008年の岩手・宮城内陸地震では、有人航空機による測量を行いましたが、災害現場での測量に限界を感じました。そんななか取り組んだのが、誰もが空からの計測が可能となる自律飛行型小型航空機、今でいうドローンの開発です」(冨井氏)
災害時の課題に直面し、長時間飛行が可能なドローンを開発
2014年に同社が開発した小型軽量のドローンは、飛行時間が10〜20分程度だった当時の他社ドローンと比べ、3kgの機材を搭載しても1時間の飛行を可能とする性能を持っていた。
このドローンを使用し、公的機関の要請により噴火した御嶽山火口の撮影を敢行した。標高2400mの駐車場から離陸して1200m上昇し、標高3600mを飛行。サーモカメラ、赤外線カメラ、分光計、サンプラーなどを活用して、火口付近の調査や噴煙の体積推定などを行った。また、風速25mの悪天候でも飛行できる全天候型ドローンも開発し、2018年に台風で冠水した関西国際空港の被災状況の把握で活躍した。
「多くのドローンを作り、飛ばすことで見つかった問題の1つは飛行時間です。20〜30分の飛行では安心できません。そこで開発したのがエンジンを搭載したハイブリッドドローンです。小型バッテリーを充電しながら何も搭載しない状態で4時間程度、2.7kgのグリーンレーザーを搭載しても2時間の飛行が可能です。LTE通信も標準搭載しています( 図1 )」(冨井氏)
ハイブリッドドローンのメリットは3つある。1つめは飛行時間が長いこと。実験では11時間30分の飛行も可能だった。2つめは燃料の現地調達が可能なこと。3つめはバッテリー充電が不要なことだ。飛行しながらバッテリーの充電を可能とした。
「弊社のハイブリッドドローンは長時間飛行に加え、NVIDIA Jetson NXが搭載され、画像の自動識別などAIコンピューティングが可能です。日本が誇る準天頂衛星みちびき(QZSS)が提供する『CLAS(センチメータ級測位補強サービス)』に対応するほか、LTE通信に対応し、遠隔からの制御が可能です。国交省による砂防ダム点検の実証実験でも活用されました」(冨井氏)
レーザースキャナシステムを開発、浅海域計測で活躍
アミューズワンセルフは、メインプロダクトとして、ドローン用レーザースキャナシステム「TDOT」も展開している。
2013年にドローン搭載型では世界初となる レーザースキャナシステムを開発。カメラではなくレーザーを利用することで、樹木に隠れた地表のデータを正確に計測できるようにした。2015年には、ドローンと一体化していたシステムを分離し、さまざまなドローンに搭載できるようユニット化を進め、2016年にDJI社からリリースされたMatrice 600 Proへの搭載が進んだ。
同年には専門家が行なっていた複雑な処理をクラウドで処理できるようにし、誰でも使えるレーザーソリューションに進化させた。TDOTの測量データをクラウドにアップすると、数分ののちに解析結果がダウンロードされる。
2017年には計測速度を向上させ、2018年には国交省の革新的河川プロジェクトのなかでグリーンレーザーを開発。2019年にグリーンレーザーの販売を開始し、2021年にはDJI社のベストセラー機Matrice 300 RTKに搭載できるようバージョンアップを行った。
「地上から河川の底、浅海域まで測れるのはグリーンレーザーだけです。これまで水底の測量はマルチビームなど音波を使って測ってきました。グリーンレーザーのように光を使うものではないので水か濁っていても測れる利点はありますが、浅い海や川の場合、ボートが入らなければ測量ができません。これに対し、ドローンによるグリーンレーザー測量は、浅い底を含め広い範囲を測れることが大きな特徴です( 図2 )」(冨井氏)
海外の事例としては、イスラエル死海で海底の地形測量、チリの塩田の埋蔵量調査などがあり、2022年度は14カ国で調査を行った。
海藻などのCO₂吸収量を測るブルーカーボン領域にも展開
また、ドローンやグリーンレーザーを活用して測量とは異なる新しい取り組みにも力を入れている。それがブルーカーボン領域だ。
「政府は2050年までに温室効果ガスの排出を全体でゼロにするカーボンニュートラルを目指すことを宣言しました。排出を全体としてゼロにする際には、温室効果ガスから植林、森林、海藻、藻などの吸収量を差し引いてゼロにします。海の藻などCO₂を吸収するもののポテンシャルをはかるブルーカーボン分野で弊社製品は活躍しています」(冨井氏)
これまでのブルーカーボンの取り組みでは、藻のサンプリングを行い、藻が分布している面積から吸収量を算出していたという。しかし海中の大型海藻の立体形状を得ることは難しかった。そこでグリーンレーザーを使って、大型海藻の分布状況を把握できるようにした。海中の消波ブロックを測量し、大型海藻を含んだ消波ブロックの形状を抽出、設計上の消波ブロックとの差を藻の量として算出した。
CO₂吸収量についても、計測したい場所をホバリングしての計測が可能となった。このため従来のように計測箇所に足場を組む必要がなくなり、さまざまな場所で計測が可能になったという。
冨井氏は最後に、「全天候型ドローンやグリーンレーザーは、日常の測量から防災、減災、防衛まで幅広く活用されています。私たちは製品開発において開発者自身が業務を遂行することでここまでの製品が実現できたと考えています。引き続き、お客様のニーズに即したかゆいところに手が届く製品を開発、提供していきます」と述べ、講演を締めくくった。
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