建築分野におけるドローンを活用するための技術の開発と普及、人材支援を行う日本建築ドローン協会は、3月23日に「第9回建築ドローン技術セミナー」を開催した。同セミナーは2017年に同協会が設立して以来、開催しているもので、建築分野におけるドローンの技術や活用の最新動向を解説している。
 今回は国土交通省が進める3D都市モデル整備・活用・オープンデータ化プロジェクトの「Project PLATEAU」のほか、消防防災や建築施工におけるドローン利活用の最新動向、さらに4月から解禁となった建物調査におけるドローン活用の技術などについて、それぞれの専門家が解説した。

ドローンの飛行の自由度と設置の容易さがバランスした三点係留方式

 東京理科大学理工学部建築学科の兼松学教授は、「建築保全とドローン係留による新たな調査技術」と題して、二村氏が説明したドローン係留をさらに発展させた技術を紹介した。

 高さ60mを超える超高層のマンションは、2000年頃から特に増えているといい、一般的にこうした建築物では12~15年で修繕が行われる。つまりこれから10~20年に大規模修繕を迎える超高層マンションが増えてくることになる。しかし、こうした超高層マンションは劣化現象や変状にアクセスできるアクセシビリティという観点で捉えると、地上から目視で変状を確認できるのは全体の10~30%と極めて小さい。

 そのため、高層部の点検には足場を設置する必要があるが、修繕工事において足場費が占める割合は13~39%にも上り、住戸当たりの負担は200~300万円にもなると兼松氏は紹介した。そのため、超高層マンションにおいて点検は、修繕工事のタイミングで行うにとどまっているというのが現状だという。そんなアクセシビリティの低い、超高層マンションでこれまで見えなかった部分を見るのがドローンだ。兼松氏はこのドローンを使った外壁の点検において、より安全に行う技術として「三点係留」を紹介した。

 三点係留は地上で2点、屋上で1点という3点から伸ばした索でドローンを直接係留することで、ドローンの飛行範囲を広げるというものだ。兼松氏は一点、二点、三点、四点の各係留方式を比較し、点検調査時のリスク評価を行った結果、安定性と設置の簡易さで有利であると結論付けている。特に壁面に対して横移動する際の係留点の盛替えがない分、二点係留に比べて三点係留の方が短いというメリットがあるという。

一点から四点まで各係留方式による飛行範囲や安定性、設置の作業性などを検討した表。
三点係留によるマンションの外壁点検を想定した飛行実験の概要。総作業時間は二点係留より短く、特に縦方向の飛行が、効率が高かったという。