国土交通省航空局(以下「航空局」)は2025年2月25日、「カテゴリーII飛行に関する許可・承認の審査要領」(以下「審査要領」)の改正内容を公布した。本改正は2025年3月24日より施行される予定だ。
また航空局は公布に先立ち、審査要領の改正に関する説明会(以下「説明会」)を2月12日および14日に実施した。説明会資料は2月28日に航空局ホームページで公開されているため、本記事とあわせて参照してほしい。
▼国土交通省-無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領(カテゴリーⅡ飛行)改正について
本記事では、改正の背景と目的、具体的な改正内容、事業者・操縦者への影響、および改正に伴うDIPS2.0のメンテナンスについて解説する。
カテゴリーII飛行とは?
無人航空機(以下「ドローン」)の飛行は、空域や飛行方法によりカテゴリーIからカテゴリーⅢに分類される。このうち、航空局等の許可・承認を取得する必要が特定飛行はカテゴリⅡ及びカテゴリーⅢが該当する。
- カテゴリーII飛行:特定飛行のうち、立入管理措置を講じて行う飛行(=第三者の上空を飛行しない)
- カテゴリーIII飛行:特定飛行のうち、立入管理措置を講じない飛行(=第三者の上空を飛行する)
特定飛行とは、航空法で定める飛行する空域または飛行の方法のいずれかに該当する飛行をいう。ドローン飛行では人工集中地区(DID地区)での飛行、夜間での飛行、目視外での飛行、人または物件と距離を確保できない飛行のいずれかに該当することが多い。
カテゴリーⅡおよびⅢに該当する特定飛行を実施する場合、航空法に基づく許可・承認を航空局から事前に取得する必要がある。審査要領には、航空局が許可・承認を判断する基準が定められており、事業者・操縦者はその内容を理解しておく必要がある。
なお、多くのドローンの飛行はカテゴリーⅡ飛行に該当するため、本改正は多くの事業者・操縦者に影響を与えると考えてよい。
改正の背景と目的
2024年5月31日に開催された規制改革推進会議において、「規制改革推進に関する答申~利用者起点の社会変革~」(以下「答申」)が公表された。
▼規制改革推進会議-規制改革推進に関する答申 ~利用者起点の社会変革~
答申では、ドローンの事業化促進のための環境整備が求められている。特に、人口減少や高齢化が進行する中、省人化を実現しつつ地域の生活サービスを維持する手段として、また災害時の迅速な初期対応手段として、ドローンの活用が不可欠であると指摘されている。
これを受け、航空局は許可・承認手続の迅速化(1日化)を目指し、本改正を実施したと説明している。
具体的な改正内容
本改正により、ドローンの許可・承認申請手続きが一部簡略化された。主な変更点は以下のとおり。
機体および操縦者に関する手続きの簡略化
許可・承認申請時に必要な情報は以下の4点。
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従来、申請時に提出していた機体および操縦者に関する資料は、改正後、申請者自身の確認結果の提出に変更された。
許可・承認申請の具体的な変更点
- 無人航空機の機体認証書番号または機能および性能に関する事項
1. 取扱説明書や設計図の添付が不要。確認事項の記載のみ必要。
2. 審査基準「5.飛行形態に応じた追加基準」に該当する飛行を実施する場合、適合性の確認は申請者の責任で実施し、確認結果を提出。
ただし、2については、例外として、補助者なしの目視外飛行を行う場合のみ、改正前と同様に機器または機能を追加するための追加装備を記載した資料の添付が必要となっている。
この例外において、以下の場合は、追加装備を記載した資料に代わりに申請者の責任で確認した確認結果の提出もできる。- ホームページ掲載機と同一の製造者名、名称、総重量および飛行形態の場合
- 審査基準5-4(1)d)ウ)(ii)に該当する飛行の(機体に取り付けられたカメラにより進行方向の飛行経路の直下およびその周辺への第三者の立ち入りが無いことを確認できる)場合
- 無人航空機を飛行させる者の無人航空機操縦者技能証明書番号または無人航空機の飛行の経歴ならびに無人航空機を飛行させるために必要な知識および能力に関する事項
1. ドローンを飛行させる者に対する審査基準「5.飛行形態に応じた追加基準」の適合性について、飛行実績や訓練実績の証明書類の提出が不要となり、申請者の責任で確認した確認結果を提出。
- 許可等の条件
1. 「無人航空機の機能・性能に関する基準適合確認書(様式2)」および審査基準「5.飛行形態に応じた追加基準」に掲げる基準への適合状況の確認に係る添付資料は不要となるが、作成・保管義務は継続。
2. 航空局から適合状況に関する資料の提出または説明を求められる場合あり。
事業者・操縦者への影響
本改正により、申請様式の簡略化と添付資料の削減が実施され、申請書類の大幅な簡素化が実現される。これにより、事業者・操縦者等にとって申請に関する負担は大幅に軽減され、また申請から許可・承認が得られるまでの期間が今より短縮されることが期待できる。
ただし、先に述べたように基準への適合状況の確認に係る資料は申請者において引き続き作成・保管が必要とされている点には注意が必要である。説明会では、航空局が適合状況の確認に係る資料の提出または説明を求めた際に適切な対応ができない場合、許可を取り消すことがあると説明された。
このため、改正により負担軽減が図られる一方で、許可・承認申請時の基準への適合状況は申請者が責任を持つことが明確になったといえる。
DIPS2.0のメンテナンス
説明会では改正内容の説明に加えて、改正による申請書式の変更を反映させるため、DIPS2.0のメンテナンスを実施することがアナウンスされた。
メンテナンス後は新たな申請様式による運用が開始されるため、メンテナンス前の申請に対し3月17日以降に補正が発生した場合、3月24日以降に補正申請はできない(新規申請が必要)としているため注意が必要である。また同様の理由によりメンテナンス前に取得した許可・承認は、3月24日以降は複製や変更申請、更新申請ができなくなる(新規申請が必要)としている。
▼国土交通省-審査要領改正に伴うDIPS2.0メンテナンスのご案内
また今回のメンテナンスでは、操縦者の追加基準への適合に関する登録方法が変更される。これまでは許可・承認申請の都度、審査基準「5.飛行形態に応じた追加基準」に該当する適合状況を入力する必要があり、申請者に大きな負担をかける作業となっていた。メンテナンス後は操縦者を登録する段階でこれらを入力することにより、申請時の入力は不要となる。ただしこの変更により、全てのDIPS2.0ユーザーにおいて、メンテナンス後に操縦者情報の再登録が必要になるとしている点に注意が必要である。
まとめ
審査要領の改正に関する要点をまとめると以下となる。
- ドローン飛行の許可・承認申請時に、機体および操縦者に関する情報入力が簡略化され、適合状況の確認に係る資料の添付が省略される
- ただし、適合状況の確認に係る資料の作成・保管する義務がある点は改正後も変更が無い
- 改正にあわせてDIPS2.0のメンテナンスが発生する
- メンテナンス後はメンテナンス前に取得した許可・承認の複製、変更申請、更新申請ができなくなる
- メンテナンス後は全てのDIPS2.0ユーザーで操縦者情報の再登録が必要になる