建築分野におけるドローンを活用するための技術の開発と普及、人材支援を行う日本建築ドローン協会は、3月23日に「第9回建築ドローン技術セミナー」を開催した。同セミナーは2017年に同協会が設立して以来、開催しているもので、建築分野におけるドローンの技術や活用の最新動向を解説している。
 今回は国土交通省が進める3D都市モデル整備・活用・オープンデータ化プロジェクトの「Project PLATEAU」のほか、消防防災や建築施工におけるドローン利活用の最新動向、さらに4月から解禁となった建物調査におけるドローン活用の技術などについて、それぞれの専門家が解説した。

火点探索や避難誘導などさまざまな建築物火災のフェーズでドローンの利用が可能

 次に登壇したのは、消防防災分野の観点でドローン利活用について説明した東京理科大学理工学部建築学科の大宮喜文教授。消防防災分野では水害や土砂災害、地震といった大規模災害時の被害状況の早期確認、また、建物火災などでは状況の確認、さらに山間部における要救助者の捜索などにドローンの利活用が始まっている。
 全国の消防本部における活用率は年々増しており、その活用率は2020年に4割となっている。運用種別による実績では、火災調査が最も多く、次いで救助や捜索活動での活用が多い。

全国の消防本部に対する調査では、2020年時点でドローンの活用が4割となっており、火災調査や救助・捜索活動といった用途での利用が多い。

 JADAでは2019年4月から建築ドローン消防防災利活用検討委員会を設置。建築と都市の防火に関わる消防防災分野において、ドローンを利活用するための技術的なデータの収集と技術改良のための課題を検討している。この中では可視光カメラや赤外線カメラを用いて、被災現場を撮影して火災の状況を把握したり、消火活動の補助や救助はしごといった消防防災資材の運搬などでドローンの利活用が有効だと示している。また、日常的に消防設備の状態把握にもドローンの利活用が考えられるとしている。

火災フェーズに対してドローンが活用できる目的を示したチャート。すべての火災フェーズで、消防活動支援や調査・報告といった目的での利用が考えられるほか、おもに出火から火災の拡大、さらに爆発的に延焼する「フラッシュオーバー」段階において、幅広い目的でドローンの利活用が考えられるとしている。

 同委員会は今後の検討事項として、上下階の階層差がある空間や、倉庫、工場、地下街といった大きな空間のほか、人的活動が難しい空間でのドローンの利活用の可能性を探るとしている。また、建物内の火点の探索、ガスや温度などの情報収集、避難経路の選択・誘導・監視、逃げ遅れ者の探索、防炎マスク・消火器・消火弾といった資機材の運搬といった用途も検討するとしている。
 さらに、非GPS環境下の操縦安定性や、耐熱・防塵・防水・防爆・装備搭載性、周辺環境や人との接触・墜落についての安全性能、映像伝送の安定性といった面でも検討を進めるとしている。