建築分野におけるドローンを活用するための技術の開発と普及、人材支援を行う日本建築ドローン協会は、3月23日に「第9回建築ドローン技術セミナー」を開催した。同セミナーは2017年に同協会が設立して以来、開催しているもので、建築分野におけるドローンの技術や活用の最新動向を解説している。
 今回は国土交通省が進める3D都市モデル整備・活用・オープンデータ化プロジェクトの「Project PLATEAU」のほか、消防防災や建築施工におけるドローン利活用の最新動向、さらに4月から解禁となった建物調査におけるドローン活用の技術などについて、それぞれの専門家が解説した。

法改正で活用ニーズが高まった係留ドローンによる建物外壁点検

 本セミナーを主催する日本建築ドローン協会からは、理事の二村憲太郎氏が登壇した。同協会では2021年3月から高層マンション等の点検を想定した、係留技術による外壁点検技術の研究を行っている。2021年9月には航空法施行規則の一部が改正され、30m以下の紐等でドローンを係留すれば、人口密集地上空、夜間、目視外、第三者から30m以内、物件投下の各飛行について、許可・承認が不要となった。

 二村氏はこの係留方法について説明。係留には地上の1点にワイヤーなどを使ってドローンを係留する「1点係留」のほか、地上の1点と建物の屋上から張り出した竿を結ぶ形で主索を張り、そこに30m以内のワイヤー等でドローンを係留する「2点係留」(主索から係留索を接続)を説明。さらに、この係留の応用として1点係留装置を屋上に設置することで、地上から30m以内の係留索でドローンを係留した場合に届かない、建物の高層部の点検を行う例を紹介。

地上の1点からドローンを係留する「1点係留装置」(左)と、建物屋上から伸ばした竿との間に張った主索に係留索を紐付ける「2点係留」(右)。
1点係留装置を建物屋上に設置した例(左)と、主索に直接ドローンを係留した2点係留装置(右)の例。

 一方、2点係留の応用として主索に直接ドローンを固定することで、ドローンが主索から離れないため、地上の立ち入り禁止範囲を極めて狭くすることができる2点係留装置を紹介した。同協会では福島ロボットテストフィールドで、2点係留装置によってドローンの墜落位置が特定されることや、落下で破損した機体の破片の飛び散り具合を検証するなどしている。

福島ロボットテストフィールドで行ったドローン落下実験の様子。

 こうした係留技術の検証を踏まえて、同協会では2022年1月に東京都中野区の中野駅前にある中野サンプラザにおいて、係留したドローンによる外壁調査の公開実験を中野区と共同で行っている。本実験では2点係留装置による方法を採用。建物の東西面がおおよそ三角形となっている中野サンプラザの形状に合わせて、上部の係留は1点で固定しながら、下部は係留地点を移動させることで、三角形の壁面前面に沿って飛行させることに成功したと報告した。