建築分野におけるドローンを活用するための技術の開発と普及、人材支援を行う日本建築ドローン協会は、3月23日に「第9回建築ドローン技術セミナー」を開催した。同セミナーは2017年に同協会が設立して以来、開催しているもので、建築分野におけるドローンの技術や活用の最新動向を解説している。
 今回は国土交通省が進める3D都市モデル整備・活用・オープンデータ化プロジェクトの「Project PLATEAU」のほか、消防防災や建築施工におけるドローン利活用の最新動向、さらに4月から解禁となった建物調査におけるドローン活用の技術などについて、それぞれの専門家が解説した。

ドローンの航路検討や風況シミュレーションでの活用が期待される「PLATEAU」

 基調講演に登壇したのは、国土交通省都市局都市政策課Project “PLATEAU”チーム企画専門官の大島英司氏。PLATEAUは都市のデジタルツインのもととなる基盤を整備して、市民参加型のオープンデータベースをつくるためのプロジェクトだ。海外ではすでにシンガポールやロッテルダム、ヘルシンキといった都市で取り組みが行われている。日本では令和2年度補正予算の中で、プロジェクトに参加する都市を公募し、その中から56都市約1万平方キロメートルの3D都市モデルを作成。このデータを行政だけでなく、民間企業からITスキルを持つ市民まで幅広く活用してもらうのが狙いとなっている。

PLATEAUの3D都市モデルは、一般的な3D地図の地形を3D化したGeometryモデルに対して、さまざまな属性が与えられたSemanticsモデルとなっている。また、LOD概念が導入されている。

 この3D都市モデルに似たものとしてGoogle Earthがあるが、Google Earthは地上の構造物を地形データとして扱っている。一方PLATEAUの3D都市モデルはGeometryという地形データに加えて、ビルの屋上や壁面といった構造、駅をはじめとした用途、建物の所有者といったSemanticsという属性情報が含まれているのが大きな違いだ。また、LOD(Level of Details:詳細度)の概念があり、平面図から高さ情報だけを立ち上げたものをLOD1、そこに屋根の形をつけたものをLOD2、さらに壁面の開口部などの情報を含むものをLOD3、さらにBIMのデータなどから建物の内部の情報を加えたものをLOD4と定義し、これらを一元的に扱うことができるのが特徴となっている。

 PLATEAUのユースケースとしては、視覚性(ビジュアライズ)、再現性(シミュレーション)、双方向性(インタラクティブ)という3つの観点で利用が始まっている。例えば駅周辺の歩行者移動データを重ねあわせて歩行者導線の改善に活用したり、屋内外のモデルから災害時の避難シミュレーションを行うといったことが行われている。また、PLATEAUのWebアプリでは洪水浸水想定区域図の災害リスク情報を3D都市モデルと重ねあわせることで、災害リスク情報の三次元可視化といった用途でも利用されている。

 ドローンにおけるユースケースとしては、高層ビルが立ち並ぶ都市部において、安全かつ効率的な物流ドローンの航路を検討したり、都市部の風況シミュレーションを行うといったことが考えられる。また、ドローンを使った建築物の赤外線外壁検査において、太陽光の入射状況をシミュレーションしたり、土砂災害において発災後の写真測量データを3D都市モデルに重ねあわせることで、流出家屋の推定を行うといった用途が想定されると大島氏は説明した。

3D都市モデルの中で林立する高層ビルを避けたルートの選定や、ルート直下の施設の検討、さらに電波の伝搬状況などをシミュレーションするといったことに利用することができる。
2022年度のユースケース開発の中には、ドローンを活用した土砂災害対応やドローンによる建築物外壁検査支援といった用途が挙がっている。※全て現時点の想定

 データはOGC(Open Geospatial Consortium)の標準データフォーマットであるCity GML形式(日本の3D都市モデル仕様)でG空間情報センターから公開されている。また、国土交通省の「PLATEAU by MLIT」サイトでブラウザベースのWebアプリとして利用することができる。