自律制御システム研究所(以下、ACSL)とエアロネクストが、物流ドローンの共同開発と量産化に向けた動きを加速している。ドローンの基本性能を向上させる、エアロネクスト独自の機体構造設計技術4D GRAVITY特許群の製造・販売に関するライセンス契約を締結したのだ。両社は本契約の約11か月前、新機体の共同開発に着手することを公表したが、今回はドローン物流機体の量産化に向けて具体的に一歩前進した形だ。

 エアロネクスト代表取締役CEOの田路圭輔氏は、ACSLとのライセンス契約締結を受けて、「これで心おきなく、さまざまなステークホルダーに対して、ドローン物流サービスを一緒にやりましょうという会話ができる。エアロネクストは2020年度中に、ドローン配送サービス事業を立ち上げる予定だ」と明かした。

ACSLがエアロネクスト「初のライセンシー」に

 ACSLとエアロネクストは2020年8月31日、4D GRAVITYを搭載した用途特化型ドローンの共同開発と量産に向けて、ライセンス契約を締結したことを発表した。4D GRAVITYとは、ドローンの安定性、効率性、機動性などの基本性能を向上させるハードウェアに関する構造設計技術で、エアロネクストが独自に開発し、特許ポートフォリオ群を展開している。

 今回の契約によって、ACSLはエアロネクスト「初のライセンシー」となるという。ACSL代表取締役社長 兼 COOの鷲谷聡之氏は、中期経営方針において「10年後、売上高1,000億円以上、営業利益100億円以上を目指す」と目標数値を公表したことに触れて、4D GRAVITY搭載機の製造・販売に踏み切る背景をこう語った。

 「昨年より着手した4D GRAVITY搭載機の共同開発を経て、ライセンス契約を締結したほうが、自社だけでハードウェアを改良していくよりも工期短縮を図れると判断した。2022年度のレベル4に向けて開発スピードを上げ、一緒に市場を立ち上げていくことは、国内市場の期待に応えることにもなると考えている。将来的には米国など海外への進出も視野に入れている」

(出所:ACSL 中期経営方針「ACSL Accelerate 2020」)

 エアロネクストはかねてより、4D GRAVITYによる知財戦略を打ち出してきた企業だ。CEATEC JAPAN 2018では経済産業大臣賞を受賞、中国・深センで開催された国際ピッチ大会では3位入賞と知的財産賞をダブル受賞するなど、国内外で存在感を示しており、点検、物流、エアモビリティなど、さまざまな領域でプロトタイプを発表している。エアロネクスト代表取締役CEOの田路圭輔氏は、ACSLとのライセンス契約について、このように話す。

 「量産機の製造販売に関するライセンスは、世界初。ACSLさんに、僕らのステージを一段引き上げていただいたと認識している。ACSLさんは、日本におけるドローン物流のあらゆる実証実験の場で機体を提供されてきたリーディングカンパニーで、僕らの提携先であるANAホールディングスからの信頼も厚いと感じている。僕らのハードの技術と、ACSLさんの企画力、製造能力が合わされば、世界でも戦える物流専用機体を量産できると考えている」

ACSL 代表取締役社長 兼 COOの鷲谷聡之氏(左)と、エアロネクスト代表取締役CEOの田路圭輔氏(右)