産業用ドローンの開発・製造・販売を手がける小笠原工業所は、2025年2月19日から21日まで東京ビッグサイトで開催された「第23回 SMART ENERGY WEEK ~スマートエネルギーWEEK~(WIND EXPO ~風力発電展~)」に出展。洋上風力発電の点検を想定し、飛行時間を大幅に向上させた防水仕様の点検用ドローン「MDS-6pro」を発表した。

飛行時間75分!防水&高耐久設計の最新機体

写真:点検用ドローン「MDS-6pro」

 一般的なドローンの飛行時間は約30分前後とされ、業務用として効率良く連続運用するためには課題がある。これに対し、MDS-6proは洋上風力発電設備の点検や物流用途を想定し、長時間飛行に重きを置いて設計している。担当者は「2kgの積載時でも75分間の飛行が可能(海抜40m、平均風速3m/s、2m/sの運航条件下)で、効率的な点検作業を実現できます」と語る。

 機体には防水型のサーボモーターや専用スイッチングハブを採用し、塩害の影響を受けやすい洋上環境でも運用が可能。担当者は「雨天時の運用や海上での気候変動に対応するため、防水仕様を強化しました」と説明した。

軽量&高剛性のマグネシウム合金フレームを採用

写真:機体のフレーム部分

 MDS-6proは、長時間飛行を可能にするため、機体の空力構造と軽量化を徹底。フレームにはマグネシウム合金を採用し、剛性を保ちながら軽量化を実現した。マグネシウム合金は軽量な金属素材であるが、伸びにくく曲げ加工が難しい。小笠原工業所の曲げ加工技術を活かすことで実現した。

写真:機体のボディ部分

 注目すべき点は機体のボディ設計だ。ボディはリング状に設計されており、空気が抜けるような構造となっている。ボディ内部の空気の流れを最適化し、ホバリング時よりも一定速度で飛行する際に効率的に浮力を得ることで長時間飛行を実現している。本来、長時間飛行を優先するのであればプロペラの少ないクワッドコプターが効率的であるが、1つのプロペラが故障した際でも安全に帰還できることを考慮してヘキサコプターの設計を採用したという。さらに、バッテリーは3系統の並列構成で、万が一の故障時にも即座の墜落を防ぐ安全設計が施されている。

高精細カメラ対応!柔軟なカスタマイズが可能

写真:機体下部、スキッドの間に取り付けられたカメラ

 MDS-6proは、市販の高精度カメラを搭載可能なプラットフォームを採用し、用途に合わせて柔軟なカスタマイズが可能だ。機体の上部・下部のいずれかまたは両方にカメラを搭載できる構造で、ソニーや富士フイルムの1億画素クラスのカメラにも対応している。担当者は「専用カメラではなく、市販の高精度カメラの搭載を可能にすることで、コストを抑えつつ柔軟な運用ができるようにしました」と述べた。

物流支援・災害対応にも活用!長距離運用の実証実験を進行中

 MDS-6proは現在、複数のプロジェクトで試験運用が進められており、物流支援や災害時の活用を視野に入れた実証実験が行われている。

 2024年には、瀬戸内海を挟んで8kmの往復飛行試験を実施し、海上での荷物輸送実験を進めている。また、山間部での物流実証実験にも参画し、小学校跡地を利用した給食センターから地域住民へ弁当を配送するプロジェクトにも貢献した。担当者は「風力発電設備の点検だけでなく、物流支援や災害対応にも活用できるように多方面での試験運用を進めています」とコメントした。

価格と今後の展開

 現在、MDS-6proの販売価格は約800万円としている。販売に加え、実証実験を通じた共同研究の提案も受け付けている。担当者は「多くの企業と実証実験を行い、最適な運用方法を確立したうえで市場投入を進めていきます」と語った。

#第23回 SMART ENERGY WEEK記事