広島県廿日市市消防本部は2020年10月1日に実施した海域潜水訓練において、スペースワンの協力のもと、水難救助現場での水中ドローン活用の可能性を探るデモンストレーションを実施した。水深5〜10mの海底に要救助者に見立てた人形を置き、CHASING M2を使い、捜索を行った。

水難救助における水中ドローンの活用可能性について説明するスペースワン代表取締役 小林康宏氏
水中ドローンの映像をHDMI出力でモニター表示した様子

宮島も含む「沿岸部」が水難救助のフィールド

 広島県廿日市市は、広島県の西部に位置する市だ。このたび同市消防本部が、水中ドローンによる水難救助デモ実施に踏み切ったきっかけは、スペースワンが福島県会津若松消防本部の水難救助訓練にて水中ドローンのデモンストレーションを実施したニュースを見たことだったという。

 2020年6月に実施された、この会津若松での水中ドローンデモは、スペースワンが総務省消防庁、郡山地方広域消防組合、須賀川広域消防組合、安達地方広域行政組合消防本部との連携協定の枠組みの中で2019年に実施した水難救助訓練における水中ドローンの使用を受けて、会津若松消防本部からの要請で行われたとのこと。いま、消防の水難救助現場における水中ドローン活用の可能性を模索する動きが、じわりと広がりつつある。

デモを行った現場の様子

 廿日市市消防本部では、主に沿岸部で発生する事故での水難救助活動を行っている。具体的には、釣り人の岸壁からの転落、海で遊んでいた子どもがいつの間にかいなくなっているなどのケースだ。また、同市が管轄する世界的な観光地である宮島でも、観光客が桟橋から転落する事故が過去に少数ながら発生しているという。

 こうした水難事故において、要救助者の捜索救助を担うのが潜水士だ。しかし、水温が非常に低い場合や、夜間なども含めて視程が悪い状況など、人間を潜らせることが難しい環境もある。また、沿岸部に船が多く停留する場所などでは、水中のロープに潜水士が絡まって溺れてしまう危険や、汚濁が激しい場所では衛生上の問題もある。

 今回、水中ドローンデモを実施する狙いは、「人間が実際に潜る前に、水中ドローンで現場の状況を確認して、要救助者が発見できた段階で人間が潜るという連携プレーを実現できれば、隊員の負荷を減らし安全を担保し、最短時間と最短距離での救出が可能となる。その実現性を確認したい」とのことだった。

水中ドローン デモ事前説明の様子
水中ドローンを岸から潜らせる様子