2019年10月15日、エアロネクストは、CEATEC 2019にて新たなコンセプト『空飛ぶゴンドラ』を発表し、そのコンセプトを具現化した原理試作「Next MOBILITY®」を初披露した。『空飛ぶゴンドラ』は、「安全性」のみならず「快適性」も実現させることで、「移動」の利便性を主目的とするこれまでのエアモビリティの概念とは一線を画す、空を飛ぶ楽しさや解放感、空からの景色を楽しめる、新たな空の飛行体験を提供する、全く新しいコンセプトである。

『空飛ぶゴンドラ』Next MOBILITY® 着陸形態(左)、飛行形態(右)

 新コンセプト『空飛ぶゴンドラ』を具現化した原理試作Next MOBILITY®は、回転翼と固定翼のハイブリッド型のVTOL(垂直離着陸機)で、エアロネクストが昨年のCEATEC2018で経済産業大臣賞を受賞したことで注目された独自の重心制御技術「4D GRAVITY®」と、今回新たに開発したVTOLの重心制御技術「ティルトボディ®」を搭載している。人が乗る機体には不可欠の、安定性により担保される「安全性」と、垂直離陸時、離陸から水平飛行への移行時、飛行中、そして垂直着陸時すべてにおいてスムーズで、また揺れも最小限で常に乗客が座った状態で地面と水平で安定する「快適性」を実現する。それは例えていうと、観覧車のゴンドラが空に飛び立ち自由に飛ぶ未来の乗り物であり、新たな空の飛行体験を提供することができるのだ。

 今回、CEATEC 2019で初披露した原理試作一号機 Next MOBILITY®は1人乗りの機体だが、今後複数の人が乗込むことができる機体も発表する予定。この『空飛ぶゴンドラ』Next MOBILITY®の目指すところは、複数の人が時間と空間を共有しながら移動する体験の新たな可能性であり、同機体が社会実装されれば、世界各国で進みつつある次世代移動サービスシステムMaaS(Mobility as a Service)の「空の移動」において、不可欠な移動手段となると確信している、と述べている。

 エアロネクストは「未来の空の移動革命」に今までにない快適な飛行体験を提案することで、ビジョンに掲げる「ドローン前提社会の実現」と「新しい空域の経済化」に向けて引き続き邁進していく、としている。

CEATEC 2019出展概要

・日時:2019年10月15日(火)〜 10月18日(金)10:00〜17:00
・会場:幕張メッセ
・エアロネクスト展示ブース:スマートXエリア Hall2 D008

 CEATEC:https://www.ceatec.com/ja/

資料

1.エアモビリティの新たなコンセプト『空飛ぶゴンドラ』とは
2.VTOLの重心制御の新技術「ティルトボディ®」の概要
3.Next MOBILITY®原理試作一号機の概要
4.「新しい空域の経済化」に向けて

1.エアモビリティの新たなコンセプト『空飛ぶゴンドラ』とは

 日本では2018年12月に『空の移動革命に向けた官民協議会』がロードマップを発表し、2019年の試験飛行、2023年の実用化という目標が掲げられており、政府がロードマップを提言した世界初の国としても注目を集めている。都市部における交通渋滞の緩和などを目的としたエアモビリティの点から点への移動を実現するためには、電動・垂直離着陸・無操縦者(自動運転)・航空機であることが必要であり、多くの自治体や民間事業者が様々な取り組みをしている。

 エアモビリティ社会の実現において人間が安心安全に乗ることができる「安全性」は不可欠で、すでに多くの研究開発機関や民間事業者がエアモビリティの安全性を追求してきた。しかし交通移動手段として広く普及させるためには、「安全性」と同時に、誰もが気軽に抵抗感なく利用できる「快適性」を両立させることこそ、鍵となると同社は考えている。また、単に「移動手段」として、運転者としてあるいは乗客として「空を移動する」だけでなく、人間の「空を飛びたい」という欲求を満たしながら、楽しく快適に「空を飛ぶ」という飛行体験を提供できてこそ、エアモビリティの社会受容性を高められると考えており、これこそ『空飛ぶゴンドラ』が実現する価値であるという。

 新たなコンセプト『空飛ぶゴンドラ』は、まるで観覧車のゴンドラが空に飛び立ち自由に飛ぶことができるような世界をイメージしている。操縦不要で、乗降しやすく、離着陸時や飛行中の揺れが最小限にして乗客が空を飛ぶ解放感や空からの景色をリラックスして楽しみながら、また、単独利用のみならず複数の人が時間と空間を共有しながら移動できるという新たな空の飛行体験を提供するもので、これまでに発表された「空飛ぶクルマ」とは異なる概念でありアプローチであるとしている。

2.VTOLの重心制御の新技術「ティルトボディ®」の概要

 「ティルトボディ®」は、エアロネクストが独自開発した、VTOL(Vertical Take-Off and Landing Aircraft:垂直離着陸機)の離着陸と飛行を安定させる重心制御技術の総称。離陸から水平飛行への移行時に、従来機のようにローターだけが傾斜したり、ローター付きの固定翼が傾斜するのではなく、人が乗っているキャビンとは構造的に分離されたボディ(主翼・プロペラ・モーター・アーム)が、キャビンを地面に対して水平に保ったまま、ボディそのものが傾斜することで、飛行姿勢の安定性を保つ機体フレームで、「安全性」と「快適性」の両方を実現する。

3.Next MOBILITY®原理試作一号機の概要

概要
 「Next MOBILITY®」は、エアモビリティの新たなコンセプト『空飛ぶゴンドラ』を体現した原理試作である。エアロネクストが独自開発した重心制御技術「4D GRAVITY®」と、新たに発表したVTOLの重心制御技術「ティルトボディ®」の両技術を搭載したVTOL機で、今回発表のNext MOBILITY®原理試作一号機は、1人乗り機体の実際の3分の1サイズのモデル。今後複数の人が乗込むことができる機体も発表する予定であるという。

『空飛ぶゴンドラ』Next MOBILITY®着陸形態

特徴
・パイロットの同乗が必要ない遠隔操縦自動航行の乗り物
・離陸から水平飛行への移行がスムーズで安定
・座席が地面に対して水平に保てるので快適な乗り心地

利点
・リラックスして同乗者とのコミュニケーションを楽しめる
・乗降位置が低く、スカートやハイヒールでも乗り込みやすい
・前方左右はガラス張りで、空からの景色を楽しめる
・主翼とプロペラを備えることで、有事の際にも即時墜落を回避できる
・着陸時の衝撃を緩和できる

スペック (実際の3分の1サイズのモデル)
全幅1,380mm × 全長1,400mm × 全高700mm
重量:8,200g
定員:1名
ドア:2面両開き

4.「新しい空域の経済化」に向けて

 エアモビリティは、増加する人口が都市部に集中することに起因する交通渋滞や環境破壊などの社会課題を解決する有望なソリューションとして世界各国で注目を集めている。さらに「課題先進国」日本においてエアモビリティは、都市部の交通インフラとしてだけではなく、観光・インバウンドと地方創生、消費者弱者対策、災害対策にも有効な手段である。エアロネクストはエアモビリティの早期事業化における機体の軽量化および低廉化の重要性、さらに次世代移動サービスシステムMaaS(Mobility as a Service)においてエアモビリティが不可欠な移動手段となる未来を見据え、「4D GRAVITY®」と「ティルトボディ®」搭載のVTOLの社会実装ならびに「新しい空域の経済化」に邁進していく、としている。