SkyLink JapanとWorldLink Protech、MMラボ、徳島大学、京都大学は9月29日、滋賀県の琵琶湖において、VTOL型ドローンを使ったレベル3運用による琵琶湖横断実証実験を行った。これまでにもレベル3運用による長距離の物流ドローンの飛行実験は行われてきたが、16kmという飛行距離はこれまでで最も長く日本初の事例となる(※1)。この日午後、琵琶湖東岸の彦根市を離陸したドローンは、西岸の高島市までの約16kmを約16分で横断し、無事、荷物を届けることに成功した。

湖岸から電波が届かない湖上は携帯電話ネットワークがカバー

 今回のプロジェクトを取りまとめているSkyLink Japanは、DJIやエンルートなどのドローンの販売のほか、KLAU PPKやPix4Dなどドローンソリューションの開発、販売を手掛けている。2019年からはこうしたマルチローター機だけでなく、ドイツのWingcopter GmbH社のVTOL型ドローン「Wingcopter 178 Heavy Lift(HL)」(以下Wingcopter)を販売。2020年3月には徳島県阿南市において、このWingcopterを使ったレベル3運用による離島への海上輸送実証実験を行っている。

 実証実験は滋賀県の約6分の1を占める琵琶湖において、湖上を飛行して横断するルートを開拓するというもの。琵琶湖上空をレベル3で長距離飛行するにあたっての課題の確認と、湖上の飛行条件や安全管理手法の整理、そして社会実装に向けたノウハウを蓄積して、⼩型無⼈機に係る環境整備に向けた官⺠協議会へ提言を行うことを目的として実施した。

 実証実験に使用したWingcopterは、翼長約178cm、機体重量7.5kgのVTOL機。4つのローターを備え、水平飛行時には前方2つのローターによって推進力を得るスタイルだ。最高速度は150km/hにも達し、飛行時間は最大120分とされ、航続距離は100km以上とされている。ペイロードは2バッテリーの場合6.7kg、4バッテリーの場合2.9kgとなっており、貨物は胴体下に取り付けたカーゴポッド内に収納する。機体と地上の通信は、操縦とテレメトリーに2.4GHz帯、FPVの映像伝送に5.7GHz帯を使用。さらに、彦根市と高島市の離発着場所から電波が届かない湖上については、飛行はドローンの自律航行に任せ、飛行の監視用にテレメトリーと映像の伝送用として4G LTEの携帯電話ネットワークを実用化実験局として利用している。

独Wingcopter GmbH社の「Wingcopter 178 Heavy Lift」(写真は飛行したものとは一部異なる)。
4つあるローターうち、後方の2つは固定翼モードでは回転を停止してブレードが折りたたまれるようになっている。
機体前方下部にFPV用のカメラを搭載。飛行した機体にはこのほか、機体下部に無人移動体画像伝送システムのアンテナなどが装備された。
彦根市側基地局の直接波通信用アンテナ。
彦根市、高島市の湖岸周辺は、2.4GHz帯と5.7GHz帯による、ドローンと基地局が直接通信を行い、湖上のエンルートを携帯電話ネットワーク(LTE)が受け持つ形で運用された。

(※1)SkyLink Japan調べ