レベル4を見据え、人が住んでいる住宅地上空を飛行

 配送に使われるドローンは、ACSLとエアロネクストが共同で開発した物流用ドローンを使用。同機はエアロネクストが山梨県小菅村で取り組むドローン配送で200回以上の配送実績を持つドローンだ。機体は大きな胴体を持つヘキサコプターで、胴体中央のジンバルに専用の段ボール箱を搭載。ドローンは離陸から着陸まですべて設定されたルートに従って自動航行することになっており、ANAのオフィスの専用PCからNTTドコモの携帯電話ネットワークを介して飛行中の機体の状態の監視と緊急時の操作などを行う。

ACSLとエアロネクストが共同で開発した物流用ドローン。最大積載重量は約5kgで、最大飛行時間は40分。荷物は機体中央に空いた四角い空間のジンバルに搭載する。
離陸から着陸まですべてが自動飛行とされ、ANA HDのオフィスにいるフライトディレクターが、ノートPCの遠隔操作ソフトの画面に表示された、機体の状態を示すデータと機体のカメラの映像を見ながら監視を行う。

 飛行ルートはいずれも日の出町のほぼ山の上空に設定されており、セブン-イレブンから山林の上空に至るまでは住宅地の上空を飛行する。そのため、この住宅地上空を飛行するときのみ、補助者を立てて「家の外に出ないようにするなど、注意喚起を行っている」(ANA HDスタッフ)という。また、山林のルート直下には飛行ルートの左右に幅を持たせる形で、立入管理措置を行っているとしている。

「今回は人が住んでいる有人エリア上空を飛ぶことが画期的。ただし現時点では有人地帯上空を補助者なしで飛行することができないため、レベル3の飛行として、住宅地のような有人地帯には人が立って安全確保を行うことで航空当局には許可をもらっている。また、事前に自治会の方々と話し合ったうえで、回覧板やポスティングといった方法で周知を行っている。2022年末以降、レベル4の飛行が実現すれば、こうした人の配置をはじめとした対応が不要となるためドローン物流としての事業性が増す」(信田氏)という。

セブン-イレブン日の出大久野店を離陸したドローンは、隣接する川と山林の上空を飛行しながら配送先を目指す。途中、道路を横断する際には一時停止して、補助者を配置した道路上の通行を確認していることがわかる。(映像:ANA HD提供)

 セブン-イレブン日の出大久野店を離陸したドローンは、直線距離で約1.4km、約1.8kmのルートを5分ほどで配送先の2号公園の着陸地点に着陸。荷物を取りに来た利用者は「団地内にコンビニがなく、坂を下って大通り沿いにあるコンビニまではクルマで行っている。110円の配送料であればとても安く、また利用したい」と語った。

 ANA HDでは今後もこうした実証を様々な形で続けて行くとしており、レベル4飛行の実現により遠隔のフライトディレクターが“1対多数”の遠隔監視ができるようになること、飛行経路直下や着陸場所での補助者・オペレーターを廃することなどが、今後の継続的な事業化への課題だとしている。その中でも実証を重ねることで「2022年度中の定常的なサービス提供を実現したい」(信田氏)としており、同社デジタル・デザイン・ラボの久保哲也チーフディレクターは「2025年頃にはビジネスとして成立させることを目指している」と説明した。また、セブン-イレブン・ジャパンの新居義典ラストワンマイル推進部総括マネジャーは、「チェーンオペレーションに乗せて行くことが大事であり、今回の実証はそのひとつの形。これが可能となれば次は、という形でひとつずつ課題を設定しながら進めていきたい」と語った。

ANAホールディングス デジタル・デザイン・ラボ チーフディレクター 久保哲也氏
セブン-イレブン・ジャパン 企画本部ラストワンマイル推進部 総括マネジャー 新居義典氏