コンビニ駐車場に“2階建て”のドローンポートを設置

 近年、全国各地で行われているドローン配送の取り組みでは、その多くで定時的に運航スケジュールが設けられていて、利用者はその中から運航枠を選ぶ形で配送サービスを受けることが多い。一方、今回のANA HDらの取り組みでは、利用者がネットコンビニサービスで注文を受け付けるたびにフライトが設定される。離陸準備から利用者の手元までおよそ30分以内に届けるとしており、これはセブン-イレブンネットコンビニのサービスでも同じだ。ただし、荷物や機体の準備、補助者の配置といった作業も必要となるため、事実上30分程度の間隔があくことにはなる。

 利用者はスマートフォン等を使って、セブン-イレブンネットコンビニのWebサイトから商品を選択して注文。店舗側ではこの注文が専用端末に届き、店員が商品を専用の箱に詰めてドローンに搭載する。今回の実証ではセブン-イレブン日の出大久野店の駐車場に、自走式立体駐車場と同様の構造のドローンポートを設置した。このポートは一般の利用客の駐車枠2台分のスペースを使っており、駐車スペースとしても使える上に、関係者以外の立ち入りを制限できるドローンポートとしても使えるという点で新しい取り組みだといえる。

今回の実証のために店舗駐車場の一角に設けられたドローンポート。自走式立体駐車場の部材を利用して作られているが、ポートの床は磁気や電波の干渉を防ぐため木製となっている。

 商品はセブン-イレブンネットコンビニで設定される約2,800品目の中から選ぶことが可能。機体が傾いても荷物を水平に保つ機能があるため、コーヒー(ホットのみ)やおでんといった液体が入ったものにも対応。また、冷凍、冷蔵が必要なものに対しては、保冷剤を付けている。一方、ライターや電池といった危険物は航空法上運ぶことができず、また、箱に入らない大きなものや温度管理が必要な肉まん類、さらにタバコは対象外だ。配送料は税込110円で、通常のセブン-イレブンネットコンビニの税込330円に対して、戸宅前まで届けられないことや、気象などの条件次第で運航できないことがあるという理由から、安く設定されているという。

セブン-イレブンネットコンビニのWebサイトから商品を注文する利用者。注文画面の中には配送までの時間の目安も表示される。なお、今回実証を行った日の出大久野店は通常のネットコンビニのサービス対象外であり、画面は実証のためだけのシステムとなっている。(映像:ANA HD提供)
セブン-イレブン店舗で注文を受けると、専用端末を使って店員が商品をピックアップ。専用の段ボール箱に詰めて、店舗敷地内にあるドローンポートの機体に搭載する。(映像:セブン-イレブン・ジャパン提供)

 配送先となる着陸地点では、ドローンが数十秒間着陸している間にジンバルが開いて箱を地面に降ろし、再び離陸して出発地に帰還。そしてドローンが離れたらそこで待っている利用者自身が荷物を取り、持ち帰る形となっている。なお、今回は離着陸時に機体に異常が発生した場合に備えてオペレーターを配置しており、離着陸時は利用者が機体に近づかないように誘導を行っている。ただし、ANA HDとしては将来的には戸宅配送を想定して、着陸地点に人がいない形を目指しているという。「離着陸地点の安全の担保は課題のひとつ。解決法としては、荷物を自動で回収して人が立ち入らなくてよいようなポートを作る方法や、荷物を吊下げて降ろすといったことが考えられる」(信田光寿ANAホールディングス ドローン事業化プロジェクトディレクター)という。