滑らかなカメラワークを実現する、“ベジェ曲線”による飛行ルート設定

 この日の最後のデモフライトでは、Airpeak S1の自動飛行機能を披露した。同機はPCソフト「Airpeak Base」を使って飛行ルートや速度、ジンバルの向きや撮影の開始・停止といった操作を計画し、それを再現する「ミッション飛行」に加えて、過去のフライトログから、飛行軌跡だけでなくカメラジンバルの動きをトレースする「再現飛行」ができる。特に再現飛行は同じカットを何度か撮影して、その中から最良のテイクを採用するといった場合に、忠実に同じワークを再現できるという点でメリットが大きい。
「再現飛行の機能を使えば、普通なら2オペレーションで行う撮影で、一度カメラワークを作ってしまえば、二度目以降の飛行に関してはドローンに任せて、カメラジンバルのオペレーションに集中して撮影するといったこともできる」(説明員)という。

 また、事前に飛行計画を立てるミッション飛行では、スムーズな飛行軌跡を作ることができるのもAirpeak S1の特長のひとつだとしている。こうしたミッション飛行では飛行ルート上の旋回するポイントをウェイポイントとして設定する。「一般的な自動飛行アプリケーションの場合、ウェイポイントで旋回する動作を設定した場合、その場で急に旋回するためカメラワークとしてはぎこちないものとなってしまうが、Airpeak Baseではベジェ曲線でルートを描くことができるため、スムーズなカメラワークができる」(説明員)という。

飛行場の敷地中央にあるひょうたん型のプールの縁をなぞるようなルートでミッション飛行を実施。カメラは中央のオブジェの上空数メートルに常に向くように指定して飛行した。
アプリ上に表示されたミッション飛行のルート。ウェイポイントは「スタート地点とひょうたんの手前側の凸部に2点、奥(画面上方)に1点」(説明員)としており、そのウェイポイントをベジェ曲線でつなぐ形で設定している。

産業用途にはSDKの公開によりソリューションの開発に期待を寄せる

 Airpeak S1はもっぱらプロフェッショナル向け空撮用ドローンとされているが、ソニーとしては搭載できるミラーレスカメラ「α」シリーズの撮影性能を生かして、点検や測量といった分野でのニーズにも期待を寄せており、すでに「産業系ユーザーからの引き合いは想像以上」(説明員)だという。こうしたニーズに応える形で、大容量バッテリー、SDKの提供、RTK機能の追加、ペイロードの拡充、携帯電話ネットワークへの接続などについて検討することを、9月に開催されたJapan Drone 2021で発表。

 また、ドローンを産業用途で利用する場合、ドローンというハードはデータを取得するツールであり、ビジネス面ではそのデータの後段処理と活用に企業の関心が高い傾向がある。しかしソニーとしてはあくまでもハードウェアとしての機体とフリート管理のためのクラウドサービス「Airpeak Plus」の提供を行い、データの後段処理や活用はSDKを公開することで、多くのベンダーがソリューション開発を行うことに期待を寄せている。