2025年5月8日、SkyDriveは、台湾の大型ドローンシステム会社の新楽飛無人機(以下、7A Drones)、台湾政府の研究開発機関である工業技術研究院(以下、ITRI)と、台湾での空飛ぶクルマの事業化に向けた検討を行うことを目的に、業務提携契約を締結したと発表した。

 この提携では、SkyDriveが開発する空飛ぶクルマ「SKYDRIVE」を活用し、台湾・澎湖諸島において患者や医師の緊急医療輸送を対象としたユースケースの共同開発を目指す。最初の航路として、澎湖諸島の馬公市の島しょ間でのルートを検討している。また、7A Dronesから最大10機のプレオーダーを受注した。

写真:協定書を手に持ち並ぶ3人
(左から)SkyDrive代表取締役CEO 福澤知浩氏、7A Drones CEO 許新勝氏、ITRI 機械與機電系統研究所 副所長 彭文陽氏

 SkyDriveは、2024年3月に7A Drones、ITRIと業務提携を締結し、日本・台湾での双方の事業開発および市場拡大に向け、協業を行ってきた。今回、新たに結んだ業務提携では、空飛ぶクルマSKYDRIVEを活用し、台湾海峡上の澎湖諸島において、本島と周辺有人離島(約10km圏)を結ぶ運航モデルを構築し、医師派遣を中心とした新たな医療輸送インフラ整備を行う。

 澎湖諸島は、大小合わせて90の島々で構成されており、19の島に人が住んでいる。医療体制が整っていない二次離島の救急医療が課題となっており、まずは馬公市で市内の病院と虎井嶼間の運航をユースケースとして進める方針だ。

台湾周辺地図に示された澎湖諸島(台湾本島の西側)

 今後3者は、台湾政府が掲げる「AAM(先進航空モビリティ)」政策における初期モデルとして、2028年以降のサービス開始を目指す。このプロジェクトでは、台湾における官民連携のもと、各機関・企業がそれぞれの専門分野で役割を担い、運航や制度設計、技術評価、離着陸地整備、医療連携などに関して、関連省庁、研究機関、民間事業者が連携し、空飛ぶクルマを活用した新たな公共医療インフラの実現に取り組んでいる。

 SkyDriveは、澎湖諸島でのモデル構築を足がかりに、台湾の他エリアでの都市型航路構想や、観光・医療への展開を検討していく。

各者コメント

SkyDrive 代表取締役CEO 福澤知浩氏

 このたび、7A Drones社およびITRIと業務提携を結び、台湾における空飛ぶクルマの事業化を進められることを大変嬉しく思います。台湾、特に離島地域では、救急医療に関する重要な課題があり、空飛ぶクルマがその解決の手段として期待されています。当社の専門知識、7A Drones社の豊富な運用経験、そしてITRIの広範な組織力を連携させることで、台湾の地域社会に貢献し、アジアの他地域にとっても先例となるような持続可能なエアモビリティモデルを構築していきます。官民パートナーとの中長期的な協力を進め、持続可能で長期的な事業基盤の確立を目指してまいります。

新楽飛無人機(7A Drones)CEO Hsin-Sheng, Hsu(許新勝)氏

 日本の先進的な空飛ぶクルマメーカーであるSkyDrive社と、台湾の最高峰の公的研究機関である工業技術研究院(ITRI)との協業を光栄に思っております。本プロジェクトは、台湾における空の移動社会の実現を目指しており、特に数多くの離島が点在する台湾では、日用品や医療品の輸送に加え、医師や患者のための緊急医療輸送システムの構築が喫緊の課題となっています。SkyDriveおよびITRIと密に連携しながら、本プロジェクトを進め、市民が地理的制約に関わらず、適切な医療サービスにアクセスできる環境を整備してまいります。官民連携を通じて、より持続可能で包括的な次世代の空のインフラを築くことに尽力してまいります。

工業技術研究院(ITRI)Deputy General Director Wen-Yang Peng(彭文陽)氏

 本パートナーシップの締結を非常に光栄に思っています。共に、台湾における空の移動社会の実現を目指します。

 工業技術研究院(ITRI)では、台湾と日本の技術の統合を支援し、社会の利益のために革新的技術の実装と産業化を加速することに尽力しています。台湾が超高齢社会に突入する中、特に離島地域に住む全ての住民が適切な医療サービスを受けられる必要性が高まっています。この課題に立ち向かうため、私たちは、先進的な技術の支援のもと、法的および規制の整備、インフラの構築、運用フレームワークの策定、そして公共の受容を促進する努力を加速しています。

 プロジェクトは、台湾における公共と民間の協力で進んでおり、各参加機関や企業が自分たちの専門分野で重要な役割を果たしています。これには、運用計画、規制システムの設計、技術評価、離着陸インフラの開発、医療連携など、さまざまな分野が含まれます。今後も政府機関、研究機関、民間企業と密に連携し、空飛ぶクルマを通じて新たな空の移動社会を実現し、台湾の次世代公共医療インフラの構築に貢献していきます。