DJIは、ブラジルのサンパウロで開催された「Agrishow 2025」(2025年4月28日~5月2日)において、第4回農業用ドローン産業の動向に関する年次報告書を発表した。農業用ドローンを中心に構築されたグローバル産業は成熟しつつあり、次の成長段階に向けて準備が整っていることが明らかになった。

 近年、地域航空当局は、世界中で精密農業とより高度な作物保護技術の普及を促進させるため、友好的な政策を実施する動きを強めている。パイロット訓練の標準化も、産業への若者や女性の流入を促進している。

 2024年末には、世界中で40万台のDJI製農業用ドローンが使用されていると推定され、2020年から90%増加。ドローン技術の採用により、約2億2200万トンの水が節約され、30.87トンのCO2排出量が削減されたとしている。

写真:圃場の上を飛行する2機のドローン

研究に基づく政策が採用を加速

 農業用ドローンの使用は2024年を通して拡大。限定的なテストから正式採用へ移行する国や、単一作物からさまざまな作物への広範な適用へと拡大した国もある。これは主に現地航空当局の規則によるもので、例えば、アルゼンチンは農業地域におけるドローンの配備に関する制限を緩和し、スペインは農業用ドローンの使用に関する承認手続きを簡素化した。ブラジルなどではパイロット訓練のプロセスをさらに標準化し、散布ドローンを運用しやすくしている。

散布ドローンのための抗ドリフト機能とデザイン

 ドリフトの制限は、散布ドローン、従来の航空機、地上機材を含むすべての方法での農薬散布における課題である。DJI Agricultureは、2021年から2024年にかけて実施した広範なドリフト試験に基づき、ドローンのノズル設計と気流動力学を最適化した。また、ドリフトを最小限に抑えるためのベストプラクティスを共有しており、低風速条件、適切な飛行高度、異なる農薬やフィールド条件に基づく液滴サイズを推奨している。

散布、果樹園管理のケーススタディ

 DJIの農業用ドローン産業の動向に関する報告書では、トウモロコシ、コーヒー豆、キャノーラ、ヒマワリ、米、バナナ、ブドウ園の散布および播種アプリケーションの新しいケーススタディを紹介している。

  • ブラジル:ドローンを使ったコーヒー栽培
     DJI Agras T40およびAgras T50ドローンを使用して農薬、殺菌剤、葉面肥料を適用することで、コーヒー豆栽培者の運用コストは手動散布と比較して70%、トラクター散布と比較して50%削減。
  • ドローンを使った稲の播種のベストプラクティス
     世界中の米農家と協力し、DJIは稲の播種に関する考慮事項を文書化した。これには、ルート間隔に応じて飛行高度と播種ディスクの速度を調整すること、トラクターを使用して地形の高低差を均一化して測定すること、事前発芽させた稲の種子が3mmを超えないようにすることが含まれる。
  • ルーマニア:ブドウ園管理
     DJI Agras T50を使用することで、ブドウ園の化学薬品の使用量を約241Lから約111Lに半減。従来は3〜4日間を要していた散布作業を2.5時間で完了した。散布ドローンを使用することで、雨の後でも傾斜地の作物への散布作業を、従来のトラクターよりも効果的に実施できるようになった。


▼2024/2025農業用ドローン業界の動向に関する報告書全文
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