2025年3月26日、建設業界におけるドローンの活用事例や、測量および点検向けの最新機体について各社が紹介し、ドローンへの理解を深めることを目的としたドローンジャーナル主催の「ドローンジャーナルコンファレンス2025春」が、東京都台東区の浅草橋ヒューリックホール&カンファレンスで開催された。全国の建設事業者などを中心に約250名が来場し、専門的なドローン活用の最新事情にまつわる講演に耳を傾けた。
当日は国土交通省 無人航空機安全課と、以下の6事業者が下記のテーマで発表した。
- 「無人航空機に係る制度運用の状況と最近動向」
国土交通省 航空局 安全部 無人航空機安全課 課長補佐(総括) 勝間裕章氏 - 「さまざまな分野における効率的なドローンソリューションの事例」
株式会社アミューズワンセルフ 技術部 冨井天夢氏 - 「ドローン型レーザースキャナーBLK2FLYによる簡単・安全・スピーディーなDX化」
ライカジオシステムズ株式会社 リアリティキャプチャー事業部 主任 及川史崇氏 - 「自律型ドローンプラットフォームの活用動向」
株式会社大林組 DX本部本部長室 室長 堀内英行氏 - 「ドローンDXのベストバランス」
株式会社スカイマティクス 代表取締役社長 渡邉善太郎氏 - 「屋内点検用ドローン『IBIS2』を活用したBIM・点群活用」
株式会社Liberaware 代表取締役 閔弘圭氏 - 「海外の建設分野におけるドローンの最新動向」
ドローンビジネス調查報告書2024【海外動向編】著者/With World JP代表 伊藤英氏
製造事業者と協力し認証機増加を目指す
国土交通省の勝間氏は無人航空機制度の整備の経緯や現状、機体認証、今後の展望といった点について解説した。このうち、許可承認申請の件数については2023年度末時点で約6.7万件、無人航空機の登録数は約44万機となっていると報告。また、2022年に制度開始となった国家ライセンス「無人航空機操縦者技能証明」の取得者数について、一等は2700件超、二等は約2.2万件にのぼり、順調に伸びているという見方を示した。
その一方で、同様に2022年制度開始の「型式認証・機体認証」については、型式認証が6機、機体認証が約20機にとどまっており、認証機体が少なく制度のメリットが活かせていないと現状を認識。試験データの活用、手続き明確化、安全基準の見直しなどを通じて認証基準の合理化を実施し、製造事業者と連携して認証機体の開発とラインナップの増加を進めていくとしている。
また、3月28日に発表されたドローンの多数機同時運航を安全に行うためのガイドラインについても触れられた。現在のドローンは一般的に1人の操縦者が1機を飛行させる形態になっているが、諸外国では自動操縦を活用して複数機を運航する研究が進められている。日本でも多数機同時運航を実現する環境整備が求められることから、2024年10月以来5度にわたり検討が進められたことが紹介された。このガイドラインは多数機同時運航の複雑化に応じてアップロードしていくという。
「GLOW.H」で点検、測量業務におけるレベル3.5飛行の有用性を確認
大阪府に本社を置くアミューズワンセルフは独自の技術力を活かしたドローンや、グリーンレーザー搭載測量機を開発・販売している。同社は安全性を担保するため多額のコストをかけて開発する有人航空機と比較し、ドローンでは安全を担保しながらも一般的にそこまでのコストを負担していないと指摘。これに対して同社は、ドローンの安全性を担保するために8枚羽や複数バッテリーの搭載、そして長時間飛行を実現することで、冗長性を確保するのが重要と表明した。
また、現状の点検業務がどのような状況で行われているかについても解説し、レベル2飛行とレベル3飛行が多いと指摘した。レベル2飛行とは目視内飛行と事前にプログラミングした飛行経路を自動航行する飛行を組み合せたもの、レベル3飛行は無人地帯における目視外飛行を行う形態だ。
レベル3飛行において無人地帯を設けるためには、補助者や看板を設置するという立入管理措置が必要だった。だが、これを機上カメラによる確認に代替することで、立入管理措置を簡略化するレベル3.5飛行が2023年12月から行われている。もともとは物流で取り入れられることが想定されていたが、国土交通省 長島ダムにおいてダムの維持管理を目的としたレベル3.5飛行が行われ、同社製ドローン「GLOW.H」が採用された。また、同社と豊田通商株式会社は、「GLOW.H」を用いた港湾設備、海岸、林道の状況把握および複数の送電鉄塔の巡視をレベル3.5飛行で実施した。これらの実績から、測量や点検においても有用な飛行形態だと判明したことを強調した。
同社はドローンのほか、水中の計測を可能にしたドローン搭載型のグリーンレーザーを提供している。グリーンレーザーは水に吸収されにくい性質を持ち、陸上から浅い水底まで計測が可能となっている。これを活かして同社が提供する「TDOT 7 GREEN」などのグリーンレーザー測量機は、近年の豪雨災害後に路面が濡れている状況でも問題なく計測できることを大きな強みとしている。また、船でしか入れない狭い河川などもドローンにグリーンレーザー測量機を搭載することで、人による作業で約2か月を要していた作業を半日で終えた実例も紹介された。
ライカジオシステムズ、広範囲を一度に測量可能なドローン「Leica BLK2FLY」を紹介
ライカジオシステムズはスイスで設立され、約200年の歴史を持つ測量機メーカーだ。近年はレーザースキャナーを多数開発しており、2022年にはハンディ型SLAMレーザースキャナー「Leica BLK2GO」を日本国内でリリース。今回紹介された「BLK2FLY」はいわばその空中版で、飛行中の点群計測を可能にしている。
BLK2FLYの最大の特徴は機体の先頭部から前方向に270度、横方向の360度に対して42万点/秒のスピードでレーザーを照射することにより、対象となる壁面だけでなく、天井や床面まで一度に広範囲かつ高精度な点群データを短時間で取得可能になる点だ。またLiDAR SLAM、Visual SLAM, IMUなど様々な技術を包括的に活用しており、屋内外問わず色付き点群データの計測が可能だ。これらの点群データはリアルタイムで確認ができ、現場での必要に応じてのチェックに即応できるのも大きな強みといえるだろう。
地上からでは計測が難しい範囲もドローンで計測の幅が広がるため、BLK2FLYはこれまで歴史的建造物のデジタルアーカイブ用のデータ計測やプラントアズビルドの計測に利用されている。屋内外問わず活用できるBLK2FLYは、今後の点群活用の可能性をさらに広げることができるだろう。
大林組、大阪・関西万博工事でドローンポートを活用
大林組は建築のDX化を実現する中でドローンの可能性に注目。2010年代後半から活用を進めている。土木分野と同様に建築分野でも、ドローンの活用目的としては生産性の向上と省人化が挙げられる。ドローンの空撮能力を使用し、現場の安全巡回や進捗管理、測量といった業務に導入が進められている。いずれの業務も人間が行う場合には歩いて回り、人の目で確認するため時間がかかるが、ドローンで自動化することにより、その時間の削減・短縮が期待できるという。
事例としてまず、米スカイディオ社のドローンと、自動充電・自動航行に対応したドローンポート(離着陸場)「Skydio Dock」を使用した、東京都港区の大規模建設現場での進捗管理が紹介された。「逆打ち工法」と呼ばれる地上と地下の工事を同時に進める方法が取り入れられた現場で、ドローンは毎日21時に自動巡回した。また、動画データを利用した点群データの作成にも取り組んだ。
4月13日開幕の大阪・関西万博ではドローンポート「DJI Dock」とDJI製ドローンを組み合わせ、会場のシンボルである大屋根リング(直径約615m、周囲約2km)をはじめ、各パビリオンの工事の進捗管理にも使用された。
大林組としては、2025年度にはドローン利用を実用段階に移行していきたい考えで、これまで蓄積したノウハウをもとに情報系子会社を通じてサービスの提供を目指すことにしている。