JapanDrone2021でひときわ注目を集めていたのがソニーの「Airpeak S1」だ。昨秋、Airpeakのブランド立ち上げとともに突如発表されたAirpeak S1は、プロフェッショナル向けドローンとして登場。JapanDrone2021では開発責任者の川西氏による講演が行われ、さらに詳細な情報が明らかになった。

αシリーズと各種センサーの独自技術で構成されたプロ向けドローン

展示されたAirpeak S1は市場推定価格110万円と発表。まずは、日本と米国で販売していく。
専用ジンバルにはα7Sが搭載されていた。

 Airpeak S1は自社製の一眼レフカメラ「αシリーズ」を搭載することによって、これまでにないダイナミックな撮影表現を実現した。その機体の狙いは、川西氏が「αのために開発したドローンとも言える」と話すなど、プロフェッショナルな映像制作のために尽力してきたことがうかがえる。なんといっても8K撮影が可能なα1(フルサイズカメラ)の搭載は、ドローンを使った最高峰の空撮が可能になる。搭載可能なボディはFX3、α7R/S、α9、α1の5種類で、レンズは14~85mmをカバーする12種類と豊富なバリエーションを用意した。αシリーズを搭載するジンバル「T3 for Airpeak」はAirpeak専用にカスタマイズされたGremsy社製で、別売りとなる。

 Airpeak S1はαシリーズの搭載が武器となるが、空撮用ドローンとしては後発になるため、先進的な搭載技術などにも期待が寄せられていた。そこでソニーの強みとなったのが、これまで手がけた製品に投入してきた独自技術で、それらの技術を結集したドローンがAirpeak S1となる。ドローンはあらゆる最新技術をもって進化してきたが、いずれは他社でも同じ機能が開発され、独自性は薄れてしまう。ソニーが培ってきた独自技術であるAI、ロボティクス、センシング、イメージング、通信の結集は、高い飛行性能や品質向上につながり、最大の強みとなる。

 川西氏は「ドローンはすでに多数販売されており、社内から「もうコモディティではないか」という声があった。ただ、小型のおもちゃのようなドローンはたくさん売られていても、プロの撮影機材として使える製品は少数で、すなわち、そこには何かがあるのではないか・・・と。必要なものは、高い空力性能と安全性、そして大量に安定して量産できる能力だ。ならば、そこをソニーがやるべきではないかと考えた」とコメントしており、いかに飛行性能に重きを置いているかがうかがえる。

オリジナルに開発したAirpeak S1用プロペラ。

 川西氏がコメントした ”高い空力性能” は独自に開発したモーターとプロペラによるもの。高回転でプロペラを回しても機敏な動きは実現できず、低回転で回ることが重要だと川西氏はいう。そこで、低回転で浮力を得るための空力特性を重要視し、専用のプロペラを開発した。その結果、80km/hまで3.5秒の加速力と機敏な操縦性が備わり、公開したプロモーション動画のように自動車の並走撮影などにも対応するプロフェッショナル向けドローンとなった。さらには、風洞実験施設でのテストを行い、耐風性能は20m/sというから驚きだ。

細部のシステム構成を表した図。

 JapanDrone2021では機体の詳細なシステム構成図が発表された。メインプロセッサは一般的に普及しているSnapdragon 845だが、ソニーが得意とするビジョンセンシングプロセッサやIMU、各種センサーが搭載されていた。

左右のステレオビジュアルセンサーで撮影した映像と、生成した周囲の障害物情報の例。

 Airpeak S1には、上下方向の赤外線カメラと前後左右下部の5カ所にステレオビジュアルセンサーを搭載。このセンサーがとらえたステレオ映像は、ビジョンセンシングプロセッサで画像解析され、周囲の障害物情報を生成する。これは機体内部で処理を行い、飛行しながらその立体空間を把握。非GPS環境下においても障害物を自動で回避しながら自律飛行を行うといったものだ。

Airpeak Flightを表示した送信機。コントロールスティックには、ユーザーが使い慣れている双葉電子工業製を採用。

 送信機はタブレットが装着でき、飛行時の情報は専用モバイルアプリ「Airpeak Flight」で管理される。そして、クラウドサービスの「Airpeak Plus」を利用することで、自動飛行の作成を行う専用Webアプリ「Airpeak Base」の全機能が使用できる。

 Airpeak S1は2021年9月より順次出荷。ソニーは今後、大容量バッテリー、SDKの対応、RTKの搭載、拡張性ペイロードの拡充、LTEと5Gの対応を予定していると発表した。