TKKワークスのブースと東京航空計器のブースに展示されていたのが、三井化学のドローン向け炭素繊維複合材製品だ。機体の胴体部分を形作る筐体素材とローターブレードを組み合わせたクワッドコプターが、ブースの入り口に展示されていた。

TKKワークスのブースに展示されていた、「TAFNEX適応ドローン筐体(開発品)」。三井化学が開発したローターブレードとモノコック筐体を採用している。

 三井化学はポリエチレンやポリプロピレンを中心に、さまざまな化学原材料や製品を製造する総合化学メーカーだ。同社では2014年から炭素繊維強化ポリプロピレン材料の開発を手がけ、炭素繊維とポリプロピレンを複合化した一方向テープ(UDテープ)である「TAFNEX」を素材として、自動車をはじめとしたさまざまな産業に供給している。

 ドローンで一般的に使われている炭素繊維強化プラスチック(CFRP)は、エポキシやポリエステルといった熱硬化性樹脂(熱を与えると硬化する素材)が広く使われている。三井化学ではこうした熱硬化性樹脂に対して熱可塑性樹脂(熱を与えると柔らかくなる素材)であるポリプロピレンを使ったCFRP製品を開発した。

 ポリプロピレンは熱を与えることで柔らかくなるため、折り曲げたりするなど加工が容易なうえに、さらに熱を与えると液体状になるため、再び射出成型ができるなどマテリアルリサイクルにも向いているとされる。同社ではこうしたポリプロピレンの特性を生かしたTAFNEXをドローンのローターブレードや筐体に使うことを提案している。

 ローターブレードは、同社のポリプロピレン発泡シートを中心に、TAFNEXを上下3枚ずつ重ねてプレス成型。一方向の炭素繊維素材TAFNEX3枚を適切な方向で重ね合わせることで、効率よくローターブレードに最適な強度を実現することができるという。また、同社の技術と体制を生かして、材料・部品設計、解析支援や、試作、部品供給も提供できるとしている。

「TAFNEX適応CFRPドローンブレード(開発品)」。28.2インチのブレードで、重量は170g。ポリプロピレンの発泡材(青色)の上下をTAFNEX3枚ずつで挟んでプレス成型したものだ。

 また、筐体はTAFNEXを使った外側の部品と、ポリプロピレンを射出成型したリブやボルトなどの締結部分を一体成型することでモノコック構造化。一般的なドローンではCFRPの板材と金属や樹脂のマウントを組み合わせて筐体を形作ることが多いが、こうした要素を一体化したモノコック構造とすることで、部品点数で66%削減、重量で14%の軽量化(いずれも同社公表値)ができるという。部品点数を減らすことは重量面だけでなく、部品やその組み立てにかかるコストを削減する効果もあるといえる。

TAFNEXを使ったドローン筐体。一般的なドローンではCFRPの板材をボルトなどで組み立てるが、モノコック構造とすることで筐体を形作るための部材が大幅に削減できる。
TAFNEXを使ったベース領域(左)に射出樹脂を使ったカスタマイズ領域を組み合わせて各機体のニーズに合わせた生産が可能だ。

 さらに、TAFNEXで形作られた外殻にあたる部品を「共通ベース領域」に対して、射出樹脂のリブや締結部を「カスタマイズ領域」として機体仕様に応じてカスタマイズすることが可能。将来的に国産ドローンの量産が本格化した際にも、ドローン筐体のプラットフォーム化によって、設計工数が削減できるとしている。

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