おもにドローンやロボット向けの無線通信システムを手がけるTKKワークスは、Wi-Fi HaLowを使ったマルチキャストテレメトリ無線機や、独自に開発したフライトコントローラーをはじめとしたドローン用アビオニクス機器(航空機等に搭載する電子機器)を出展していた。

Wi-Fi HaLowの通信システムを搭載したドローン。ドローンを無線LANのアクセスポイントと見立てて、左右のPCから同時に接続ができるため、地上局の受け渡しといった使い方が可能だ。

 Wi-Fi HaLowはIEEE802.11ahという920MHz帯を利用したLPWA(Low Power Wide Area)のひとつ。Wi-Fi規格の中でIP(インターネット・プロトコル)を使った標準的な通信規格でありながら、920MHz帯を用いるために、2.4GHz帯や5GHz帯に比べて通信エリアが広い、というメリットがある。2022年9月に電波法が改正されたことで、日本でも利用できるようになった。920MHz帯はISM(産業・科学・医学)バンドのひとつであり、Wi-Fi HaLowは特定小電力データ通信の扱いで無線従事者免許(従免)や無線局免許(局免)を必要とせず利用することができる。

 TKKワークスでは今回のJapan DroneでこのWi-Fi HaLowをドローンのテレメトリ通信に利用することを提案。これまで、機体と地上の操縦者を結ぶ通信には2.4GHz帯が使われてきたが、その通信距離は実質数百メートルが限度とされている。そこでこのテレメトリ通信に920MHz帯のWi-Fi HaLowを利用することで、通信距離を1km程度に広げることができるという。

 Wi-Fi HaLowは2.4GHz帯や5GHz帯のWi-Fiと同じようにIPを利用するため、独自の通信規格を用意する必要がない。また、WPAをはじめとした一般的な無線LANに使われるセキュリティにも対応できる。

 さらに、いわゆるWi-Fiアクセスポイントとして1対多数のネットワークを組むことが可能。そのため、機体にアクセスポイントとしての無線機を搭載すれば、複数の地上局の無線機と通信できる。理論上は8000の機器とネットワークを組むことが可能で、例えば近年、一度のショーで1000機を超えるドローンが飛ぶ例が増えているドローンショーなどで利用すれば、より多いドローンによるショーが可能になる。

 また、離陸地点から離れた場所に別の地上局を設置しておけば、地上局を切り替えながら長距離の飛行ができる。例えば1kmごとに地上局を設置すれば、数十kmにわたってドローンを飛行させることが可能だ。

TKKワークスが行った実験でテレメトリ通信の状況を示したグラフ。おおよそ200kbps程度のスループットが得られているという。

「近年、ドローンの長距離や広範囲の飛行ではモバイル通信が利用されることが増えているが、山間部だとサービスエリア外であることが多い。そういった場所で、モバイル通信と共にこのWi-Fi HaLowを使ったシステムをハイブリッドで利用したいというニーズがある」(説明員)という。

 これまでに同社がこのシステムをドローンに搭載して行った実験では、150~160mの範囲で安定した通信ができたという。今後、より広域にネットワークを作ることができるか検証を行っていくとしており、2023年末にはサンプル出荷をしたいという。

「TKK Works Wi-Fi HaLow マルチキャストテレメトリ無線機」(TKKワークスのYouTubeより)

東京航空計器のドローン「GNAS SKY」シリーズに搭載のアビオニクス機器

 TKKワークスはもともとアビオニクス機器メーカーである東京航空計器のグループ会社として2017年に設立された。東京航空計器はアビオニクス機器製造のノウハウを生かしてドローン向けモーションセンサーやフライトコントローラーを開発し、同社のドローン「GNAS」シリーズに搭載する形で市場に提供してきたが、2023年からはこうしたドローン向けアビオニクス機器をTKKワークスが単品の形で市場に提供することになった。

 今回のJapan Drone 2023のブースでは、こうしたフライトコントローラー、モーションセンサーに加えて、フライトレコーダー、キルスイッチ、ライティングユニット、パワーメーター、対地高度計といったアビオニクス機器を展示していた。いずれも航空機向け機器を開発・製造してきた東京航空計器のノウハウを生かした信頼性の高い製品であり、また、昨今高まっている国産コンポーネントに対するニーズに応えるものとなっている。

今年からTKKワークスがコンポーネントとして市場に提供するようになったドローン向けアビオニクス機器。
東京航空計器のドローン「GNAS SKY」にも搭載されているフライトコントローラー。独自のプロトコルのほか、MAVLinkに対応している。
6軸IMU、コンパス、気圧センサー、GNSS受信機を内蔵したモーションセンサー。

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