3月31に最終回が放送されたNHK朝の連続テレビ小説「舞いあがれ!」では、東大阪のベンチャーが製造開発した空飛ぶクルマ「かささぎ」が、ヒロインの操縦で長崎の五島列島を初飛行したところでエンディングを迎えた。日付は2027年1月となっているが、大阪では現在、2025年に開催される大阪・関西万博(以下、万博)での商用飛行を目指して、さまざまな動きが加速している。

 万博では空飛ぶクルマの運航事業を「未来社会ショーケース事業出展」に位置づけており、2月21日に「スマートモビリティ万博」に参加する企業を選定したと発表している。ドラマの中でも言及されていた機体の型式証明も、飛行予定となる機体申請はすべて国土交通省に受理されている。

▼大阪・関西万博における空飛ぶクルマ運航事業の参加企業が決定

大阪・関西万博では「スマートモビリティ万博」に空飛ぶクルマの運航事業が複数参加することが決まっている。

 航行ルートは会場と会場外に設置されるポートの2地点間としており、候補地として大阪城東部地区(森之宮)・大阪港地区(中央突堤)・桜島地区・関西国際空港が挙げられている。2月27日には諸条件等を検討する「大阪・関西万博 空飛ぶクルマ 準備会議」も設置され、運用側の準備は着々と進められている。

▼大阪・関西万博2025-「大阪・関西万博 空飛ぶクルマ 準備会議」を設置

ほぼ実機に近い自律飛行タイプの機体を披露

 大阪では空飛ぶクルマの運用を万博だけに終わらせず、社会へ実装することを目指しており、実現に不可欠な社会受容性の向上と機運を醸成するための取り組みにも力を入れている。

 運航事業に選定された日本航空(JAL)と商用飛行を目指すドイツのVolocopter社は、大阪梅田の商業施設グランフロント大阪でeVTOL機「VoloCity」の実物大モデルを披露する「ヴォロコプター・アーバン・モビリティ・ショーケース」を3月8日から12日まで5日間開催し、一般にも公開された。

独Volocopter社の「VoloCity」は機体の設備や乗り心地が確認できる形で実物大モデルを披露した。

 初日には来日した同社COOのChristian Bauer氏をはじめ、大阪府副知事の山口信彦氏やVoloCityの実装に取り組む関係者が参加するオープニングセレモニーが行われ、空飛ぶクルマの開発と運用がどのように進められているのかが紹介された。

 Volocopter社は自動車業界と航空業界出身のエキスパートが集まるeVTOL開発のスタートアップとして、世界で初めてeVTOL機の有人飛行に成功したことでも知られる。2020年にJALと連携をスタートし、21年に大阪ラウンドテーブルに参画。22年に社会受容性の向上で万博開催地の夢洲(ゆめしま)がある大阪市此花区と覚書を締結している。今年に入って住友商事、積水化学工業から出資を受け、2月21日にVoloCity(VC2-1)の型式証明申請が受理された。

▼国土交通省-ドイツVolocopter社からの空飛ぶクルマの型式証明の申請受理について

日本でのマイルストーンを説明するCOOのChristian Bauer氏

 今回の展示では、飛行予定の実機がシンガポールやパリなどでまもなく開始する商用飛行に向けて試験中ということで、実用化を進めている自律飛行タイプが披露された。大きな特徴といえるのがコクピットの仕様で、2人乗りで操縦桿などは無く、大型のタブレットを使ってタッチパネル操作だけで運航する。

 実際の運用ではパイロットが同乗するため乗客は1人になることから、交通手段としての効率性よりも、飛行機やヘリとも違う高さから空の移動を楽しめるようにデザインされている。広々とした機内はラグジュアリー感あふれる内装になっており、大きな窓は視界も良く、大型照明の搭載で夜間飛行も楽しめる。空飛ぶクルマのイメージを高めるという目的にはぴったりの機体だと言える。

ラグジュアリー感あふれる広々とした機内。
大型の照明が搭載されている。
機内の様子