輸送コストやメンテナンス、部品の調達が課題

 肝心の性能についても、静音性が高められた18個のローターは安全性を重視しており、飛行中に3個が停止しても飛び続けられる。動力は後部に格納された9個のリチウムイオンバッテリーパックを使用しており、現時点での航続距離35km、巡航速度は最大で時速110kmだが、バッテリー技術の改善でさらに飛行性能を高めていく。

大きなリング状のフレームに18個のローターが取り付けられ、航行灯もある。
後部を開くとバッテリースロットが並んでいる。

 展示を行った時点では、万博でどのように運用するのか詳細は決まっていないということであったが「空飛ぶクルマが今後受け入れられるような方法を考えている」という。Volocopter社は「万博の先に続く日本でのビジネス展開」を視野に入れて動いており、飛ばす以外での連携も検討している。

 例えば、機体の製造開発は本拠地があるドイツのブルッフザールとミュンヘン、シンガポールでそれぞれ行っており、公開された機体はシンガポールで製造されたものを大阪に運んできたが、その負担はかなり大きい。関係者は「日本で運用するのであれば、少なくともメンテナンスはできるようにする必要があり、その点については対応を進めている。できれば部品や機体の製造もできる方がいいので、将来的に東大阪で作ることも考えられる」と話す。

ビジネスの実装に向けて握手を交わすBauer氏と大阪府副知事の山口信彦氏(写真右)

ライセンス不要の1人乗り小型機での有人飛行に成功

 大阪では3月14日に空飛ぶクルマの有人飛行テストも実施している。アメリカのLIFT AIRCRAFT社(以下、LIFT社)が製造開発する1人乗りeVTOL機「HEXA(ヘクサ)」をパイロットが操縦し、国の許可が必要な屋外スペースでの実証実験としては初めての成功事例となった。

 実証実験を実施した丸紅は万博の空飛ぶクルマ運航事業者にも選定されており、イギリスのVertical Aerospace社が開発する「VA4」の運用を予定している。今回使用されたHEXAは、米国航空当局がウルトラライト級として認可する小型軽量のeVTOL機で座席は1人乗り、両サイドのドアは無くパイロットはヘルメットを装着して乗り込む。

米LIFT AIRCRAFT社の1人乗りeVTOL機「HEXA」

 飛行に使用された機体は、18個のローターの下に取り付けられたリチウムイオンバッテリーを動力にしており、飛行前に装着する。飛行時間は10~15分で、飛行中にローターが6個までなら止まっても安全性に影響がない。公開されている仕様書ではパラシュートが付属し、足(スキッド)の部分は水に浮くとあるが、用意された機体はバッテリーの部分も含めてやや異なるテスト機のようであった。

今回使用された機体はバッテリーが着脱しやすいような仕様になっていた。

 HEXAの操縦だが、離着陸は自動で行われ、飛行中の高度調整や前後左右の移動、旋回などをコクピットに取り付けられた大型タブレットを見ながら操縦桿を使って行う。米国の規定でウルトラライト級の機体は飛行免許が不要だが、LIFT社は専用ライセンスを発行しており、VRシミュレーションを含む座学とテスト飛行をあわせて約60分の操縦訓練プログラムを米国で実施している。

コクピットは操縦桿と大型タブレットがあるだけで、離着陸は自動で行われる。

 大阪城公園内野球場で2日にわたって行われた実証実験の初日、最初のパイロットとして搭乗したGMOインターネットグループ代表の熊谷正寿氏も米国でライセンスを取得している。予定されたプログラムにあわせて3回の飛行を成功させた熊谷氏は「以前に取得したヘリなどに比べると操縦はとても簡単で、ライセンスもすぐに取得できた。今までにない高さから景色を見ることができ、気分は最高だった」とテスト飛行の感想を述べた。

最初のパイロットはGMOインターネットグループ代表の熊谷正寿氏が務めた。
熊谷氏による試験飛行の様子