写真:配送ロボットと商品を受け取った家族
自動配送ロボットによる商品配送サービス「楽天無人配送」。

 楽天グループは2024年11月6日、自動配送ロボットによる小売店や飲食店の商品配送サービス「楽天無人配送」を、東京都中央区晴海全域、月島と勝どきの一部において開始した。

 現在のところ注文できる店舗は、スターバックスコーヒー、スーパーマーケット文化堂、吉野家の3店舗で、商品数は5300品以上。配達時間は午前10時~午後9時まで。配送時間は、最短30分から最長6日先までの15分ごとの枠から指定でき、配送料は100円となっている。

 自動配送ロボットによる配送サービスの都内での提供は楽天として初の取り組みだ。8月からテストサービスとして試験的に運用を開始しており、11月6日から正式にサービス開始となった。

改正道路交通法により「遠隔操作型小型車」を取り決め、完全無人配送が可能に

楽天グループが2019年から取り組んできたロボット配送の取り組みを時系列に並べた一覧
楽天グループのロボット配送に関するこれまでの取り組み。(提供:楽天グループ)

 楽天グループは、2019年にロボットによる配送サービスをスタートした。大学や公園、リゾート地といった私有地での実証実験を経て、2021年3月に神奈川県横須賀市の西友で国内初となる自動配送ロボットの公道走行によるスーパーマーケットからの配送サービスを実施している。さらに期間を限定しない定常サービスとして2022年11月~2023年12月までの間、茨城県つくば市つくば駅周辺にて展開してきた(配送ロボットには監視者が付き添っていた)。また、2022年に関係各社らと共に「ロボットデリバリー協会」を設立。2023年4月の改正道路交通法の施行に当たり、安全基準とガイドラインを策定し、審査制度を構築してきた。

ロボットの行動走行ルールの説明図
2023年4月に施行された改正道路交通法によるロボットの公道走行ルール。(提供:楽天グループ)

 2023年4月には道路交通法が改正され、ロボットの公道走行におけるルールが明確化された。道路交通法では、長さ120cm以下、幅70cm以下、高さ120cm以下の大きさで、最高速度が6km/h以下、非常停止装置を備えたロボットが「遠隔操作型小型車」と位置づけられ、公道を走行できるようになった。実際に走行するためには、ロボットデリバリー協会の安全基準に合格し、合格証とともにそのロボットを使用する旨を、地域の警察署に届け出ることで、ロボットの公道走行が可能になる。

 今回の無人での自動配送ロボットによるサービスの実現は、楽天グループが蓄積してきたノウハウと改正道路交通法が施行されたことによるものという。なお、今回の取り組みは経済産業省の令和5(2023)年度補正予算「物流効率化に向けた先進的な実証事業」における「自動配送ロボット導入促進実証事業」による支援を受けおり、これによって配送料100円(税込)でのサービス提供が可能になっている。

専用サイトで簡単に注文可能!ロボットの現在地もリアルタイムでチェックできる

楽天無人配送の利用方法の説明
楽天無人配送の利用方法。(提供:楽天グループ)

 楽天無人配送を利用するには、スマートフォン向け専用サイトを開き、販売店舗と商品を選択し、晴海周辺のマンションやオフィス、公園などの62カ所の配送場所と15分刻みの時間を指定するだけと簡単な操作で注文できる。普段の買い物や仕事の合間、外出時などの利用を想定しており、サービスは年末年始などを除き毎日提供される。夜間や雨天時(荒天除く)も稼働する。支払いは、クレジットカード、楽天ポイント、楽天キャッシュの3種類となる。

写真:配送ロボットの上面が開き、ロボット内の収納部分に荷物を入れる様子
店舗スタッフが商品を自動配送ロボットに積み込む。
自動配送ロボットに荷物を積み込む様子。

 現在の対象店舗は「スターバックスコーヒー晴海トリトンスクエア店」「スーパーマーケット文化堂月島店」「吉野家晴海トリトンスクエア店」の3店舗で、対象品目は温かい料理や冷たい飲み物、生鮮・冷凍食品、日用品など5300品以上。配送場所は晴海1丁目~5丁目と月島2丁目、4丁目の一部と勝どき2丁目の一部におけるマンションやオフィス、公園など62カ所となっている。今後、対象店舗や品目は順次拡大する予定だ。

写真:広い歩道を走行するピンク色の車体の配送ロボット。側面にはRakuten MobileのロゴやQRコードが表示されている
歩道を走行する自動配送ロボット。ロボットのカラーリングは楽天モバイルの広告となっており、人の目に触れることから移動型の広告としての使い方も提案している。

 配送中は、自動配送ロボットの現在地や到着予定時刻を専用サイトで確認できる。配送場所に接近するとスマートフォンに「あと5分で到着」などの通知が届く。自動配送ロボットが配送場所に到着すると、SMSと自動音声電話で通知されるという仕組みだ。商品の取り出しは、ロボット本体の天面にある操作パネルに、SMSで通知される暗証番号を入力すると扉のロックが解除され、商品を受け取ることができる仕組みなので、盗難される恐れはない。

搭載カメラと遠隔監視による安全運用をデモ

 サービス開始となる11月6日には、サービス提供エリアでデモンストレーションが行われた。自動配送ロボットは、想像よりも速い速度で走行しており、最高速度は時速5.4km(人間の歩く速度は一般的に4km/h)とのことで、かけあし程度の速度となる。しかし、障害物や人が突然飛び出してきたとしてもピタリと急停止し、安全に対する機能が設けられている。

写真:赤信号で横断歩道手前で停止しているロボット
横断歩道では一時停止。遠隔でオペレーターが確認したうえで渡る。
横断歩道での様子。

 デモンストレーションのルートでは、横断歩道を渡る箇所もいくつか設定されていた。横断歩道では、遠隔監視者が搭載したカメラで信号機の状況を確認し、停止と発進の操作を行う。中には画像認識の技術を使い、信号の状況に合わせて自動で停止と発進を行えるロボットもあると担当者は言うが、誤作動を起こす可能性もゼロではないため、人が管理しているという。

 商品の受け取りでは、近隣住民の親子が駆け付け、ロボット天面にある操作パネルを操作してロックを解除していた。天面の操作パネルは大きく押しやすそうであるし、扉は子どもでも簡単に開閉できることから、誰もが煩わしさを感じずに操作できそうだ。

 また、デモンストレーション後半では、小学生の下校時のタイミングと重なったため自動配送ロボットに興味津々の様子で、「かわいい」「凄い」と歓声があがった。明るいピンクの機体もかわいらしく、晴海の街で見かけるのが楽しみになりそうだ。

写真:子どもが暗証番号を入力する様子
SMSで通知される暗証番号を入力すると扉のロックが解除され、商品を受け取ることができる。子どもでも簡単に操作できる。
写真:スライド資料の説明を行う牛嶋氏
「自動配送ロボットによる無人配送サービスが物流課題解決のひとつとなれば」と話す楽天グループ 無人ソリューション事業部 ヴァイスジェネラルマネージャーの牛嶋裕之氏。

 楽天グループ 無人ソリューション事業部 ヴァイスジェネラルマネージャーの牛嶋氏は、「8月のテストサービスでは、走行の安全性に問題はなく、利用者からは『商品が早く欲しいときに便利』『ロボットが動く様子は新鮮で面白い』『ペット連れでスーパーに行けないので利用した』などのお声をいただきました」と、利用者から好評とのことだ。