カメラやセンサーを使い周囲の状況を確認し安全な自動走行を実現

写真:走行するロボット
ロボットは米国・Cartken製の「Model C」を使用。今回のサービスでは2台が稼働する。
写真:ロボットの天面がフタになっており、フタが開いてロボット内部の保管スペースが見える様子
ロボット内部の大半は保管スペースとなっている。
自動配送ロボットが移動する様子。

 今回のサービスで使用する自動配送ロボットは米国・Cartkenが開発し、三菱電機グループのメルコモビリティーソリューションズが本サービス向けに調整した「Model C」。サイズは、長さ71cm×幅45.5cm×高さ120cm(視認性確保のための旗を除くと61.8cm)。積載容量は約24L。今回のサービスでの最高速度は時速5.4km。ロボットデリバリー協会の安全基準に基づく審査に合格している。

写真:スライド資料の説明をする塚越氏
ロボットについて説明するメルコモビリティーソリューションズ アフターマーケットサービス事業本部 搬送ロボット開発プロジェクト 塚越裕太氏。
歩行者が自動配送ロボットの直前を横切ると歩行者を検知し、自動的に停止する。

 前方に高解像度カメラ3つと距離測定カメラ3つ、後方に高解像度カメラ1つを搭載し、高度なAIモデルやアルゴリズムを活用した自動走行機能や衝突回避機能を備え、安全な自動走行を実現している。メルコモビリティーソリューションズ アフターマーケットサービス事業本部 搬送ロボット開発プロジェクト専任の塚越氏によると「Cartkenはグーグルでロボットを開発していたグループがスピンアウトして作った会社です。自動運転や画像処理技術を使い、シンプルなセンサー構成でロボットを開発しています。Model Cもカメラのみを使用したシンプルな構成のロボットとしました」と話す。

 自動配送ロボットは、歩行者と同じ交通ルールに従って自動走行する。基本的に自律走行するが、信号に差しかった場合は必ず停止し、信号を渡るタイミングをオペレーターが遠隔から指示するという運用を行っているため、安全面は配慮されている。

自動配送ロボットは物流の「2024年問題」を解決するカギとなるか

 インターネット通販の市場拡大や即時配送ニーズの高まりにより、配送需要は増加を続けているが、物流の現場では人手不足が深刻化している。たとえば、トラックドライバーは3年後の2027年には約24万人が不足し、2030年には物流需要の約34%が運べなくなるという試算がある。さらに、働き方改革関連法の適用により、2024年4月からはトラックドライバーなどの時間外労働の上限が定められ、物流の停滞が懸念されている。物流の「2024年問題」と呼ばれており、問題解決が急がれている。

EC、QC市場の成長、物流業界の人手不足、公道走行の制度整備、AI等の技術革新
自動配送ロボットによる無人配送への追い風。(提供:楽天グループ)

 その解決策の1つとして注目されているのが、自動配送ロボットの活用だ。今回紹介した楽天の無人配送サービスでは、人手が足りない早朝・深夜でのサービスは行っていないが、オペレーションや店舗対応などに目途がつけば実現も可能であろう。制度なども整いつつあり、2022年1月に設立されたロボットデリバリー協会には、すでに30社以上が参画しており、今後もさまざまな企業が自動配送ロボットサービスに参入することが期待される。

 一方で課題もある。1つはサービスを展開する上でのコスト面だ。自動配送ロボットを活用してサービスを始める際には、使用するロボットの本体料金のほか、マップ作成費や経路設定費、充電や待機スペース、オペレーションセンターの確保費などが発生する。また実際に運用を開始すると、ロボットの遠隔操作、事故時の駆け付け、メンテナンスなどにかかる人件費や保険料などの費用が発生するため、収益モデルの確立が必要不可欠となる。今回の「楽天無人配送」は、経済産業省の令和5(2023)年度補正予算「物流効率化に向けた先進的な実証事業」における「自動配送ロボット導入促進実証事業」による支援を受けており、支援終了後にビジネスとして成立するかがカギとなる。牛嶋氏は「まずはお客様に使っていただく段階から始めていきたい」と話しているが、支援終了時には料金体系の見直しも必要となってくるだろう。もう1つは、今よりもきめ細かく、利便性の高いサービスを提供できるかということだ。自宅玄関前まで配送してほしい、早朝・深夜でもサービスしてほしいなど、現状よりも柔軟なサービスが求められるだろう。

 これらの課題ついては、技術革新やサービスエリア拡大などによってクリアできる可能性がある。塚越氏によると、Cartken社と三菱電機グループでは、ロボットとエレベーターを連携させるシステムの開発を進めており、今年8月から実証を開始しているという。晴海エリアは高層マンションが多いため、自動配送ロボットがエレベーターを自在に使用できることになれば、玄関先までの直接配送も可能となり、利便性が各段に向上する。また、牛嶋氏は「サービスエリアと提携店舗を順次拡大していく予定。物流課題の解決に貢献していきたい」と話すなど、自動配送ロボットの事業拡大を進めていくという。今後、自動配送ロボットが、物流の新たな担い手の1つとなる可能性に期待したい。