KDDI、KDDIスマートドローン、日本航空、JR東日本、ウェザーニューズ、そして、医薬品卸事業のメディセオの6社は11月27日、医薬品ドローン配送ビジネスの社会実装に向けた実証実験プロジェクトについて、東京都西多摩郡檜原村で行ったドローン運航の内容を説明する会見を行った。

ドローンによるオンデマンド配送で物流効率を改善

 このプロジェクトは東京都の「ドローン物流サービスの社会実装促進に係る実証プロジェクト」に基づき、都心部におけるドローン物流サービスの早期社会実装を目指している。使用頻度の少ない稀用医薬品は、在庫として保持しておかなければならず、さらには期限切れで廃棄しなくてはならないなど、管理ロスや物流コストがかっている。そこでドローンを使ってオンデマンド配送を行うことで、こうしたコストが削減できるほか、災害時など緊急に医薬品が必要な場合も早期対応が可能になる。

各病院が稀用医薬品を管理している現状→医薬品卸倉庫よりドローンで各病院に配送する
医薬品ドローン配送ビジネスのイメージ図(出所:KDDI)

 実証プロジェクトは2021年11月から開始され、3カ年計画でドローンを活用した医薬品配送ビジネスモデルの業務フロー(手順)の策定と検証を行ってきた。

 2022年は都内で橋を横断しての医薬品輸送。2023年には東京都西多摩郡の檜原村でレベル4飛行での医薬品輸送の実証実験を行ってきた。今年は人口の多い都市部での目視外飛行を見据えた安全運航の検証などを目標として2023年と同じ檜原村で行った。

檜原村と、運航管理室のある飯田橋を示した地図
運航管理室と現地との位置関係(出所:KDDI)

航空会社の安全に対するノウハウをドローンの運航に導入

 今回の大きな特徴はレベル3.5飛行とレベル4飛行の両方を実施したことと、安全性を高めるために旅客機パイロットなどに対しても教育される「CRM(クルー・リソース・マネージメント)」を導入、実証実験前に運航関係者全員にCRM訓練を実施したことだ。

 「CRM」とは運航に関わる者が機体状況や気象、その他運航に関連する情報を共有。事前に危険要素などを検討、予測し安全な運航を実現する手法。日本航空や全日空をはじめ国内外の多くの航空会社で導入されている。今回は実証実験前の6~7月にドローン運航関係者全員が、ノウハウを持つ日本航空で教育を受けたという。

 ドローンの運航は10月21~25日と11月5~7日の2つの期間、同村三都郷の「檜原診療所」と同村内の特別養護老人ホーム「桧原サナホーム」間の約2.4kmで行われ、稀用医薬品の保存に使われるアンプルを輸送、オンデマンド配送フロー全体をロールプレイで検証した。

写真:上空写真に示された2つの飛行ルート(レベル4、レベル3.5)
実証実験で設定されたドローンの飛行ルート(出所:KDDI)

 10月の運航では、ACSL社製のAirTruck(最大ペイロード5kg)によるレベル3.5飛行を実施。1人のパイロットが2機のドローンを管理する「1対2運航」を行った。一方、11月の運航は第一種型式認証を取得したACSL社製PF2-CAT3(最大ペイロード1kg)を使用し、第三者上空を飛ぶレベル4飛行を行っている。

AirTruckの外観
実証実験で使われたACSL社製AirTruck。レベル3.5飛行を行った。(出所:KDDI)
PF2-CAT3の外観
実証実験で使われたACSL社製PF2-CAT3。レベル4飛行を行った。(出所:KDDI)

 いずれの運航も東京都千代田区にあるKDDIスマートドローン社内の「運航管理室」から操縦及び運航管理を遠隔で行ったという。運航管理室にはパイロットを含む4人、現地の檜原村には機体点検担当者1人と補助者1人の計6人体制で運航が実施された。CRMの手法を使って運航前に予測される危険を事前に洗い出して「運航手順書」を作成し、この手順書に沿って運航が実施された。

病院から発注→医薬品卸会社が発送→ドローン配送→病院
医薬品ドローン配送のサービスフロー(出所:KDDI)

 日本航空の担当者は、「ドローンは旅客機などと違い、限られた環境の中での運航となります。今回は有人航空機のパイロット経験者が教官を担当し、人や機材などの情報をいかに有意義に活用するかやチームメンバー同士の連携など、無人機でも活用できる部分の概念を学んでもらいました」と話した。

 KDDIスマートドローンの担当者は、今回の実証実験について「ロールプレイやCRM導入などを通じて、リアルタイムで安全な医薬品ドローン輸送の実現へ近づきました」と評価する一方で、「都心部でのサービス実現のためには、利用者である病院などを交えての検証、機体の開発、法制度の検討、さらにより少人数での運用による効率化などが必要です」との課題を指摘した。