DJI Air 3Sは、フラグシップコンシューマー機「Mavic 3 Pro」を一部凌駕するスペックを誇るハイコストパフォーマンス機だが、実際のところはどうなのか。そのカタログ値ではわからない “質的な評価” を、紅葉が始まり木々が鮮やかに彩りをまとい始めた景色で検証してみたい。
DJI Air 3Sの驚くべき飛行・撮影能力!
空撮現場は、美しく不思議な “四万ブルー” の青い湖「奥四万湖(群馬県)」。紅葉の赤や朱色と掛け合わせてとても美しい景色を見せる景勝地だ。
紅葉や湖面の色合い、奥行き感、明暗のコントラストによる立体感など、筆者としてはとても満足な映像だった。1インチに拡大したセンサーや14ストップのダイナミックレンジというスペックが遺憾なく発揮されている印象だ。
映像のカットの中には、1カットだけ70mmのサブカメラを使ったカットが入れてあるのに気づいていただけただろうか。下記の岩場の展望台のカットなのだが、機体を動かしながら撮影すると手前の被写体と背景の動く速度に差が生まれるパララックス効果により立体感がよく出ている。
また、Mavic 3 Proとの映像比較もテストしたが、撮影後にシンプルな色調整や撮って出しの利用を想定するならAir 3Sのほうがむしろ高画質な映像に見えるほどだ。実際には、Mavic 3 Proはより色調整の幅が広いD-Logでの撮影が可能(Air 3Sは簡易的なD-Log Mのみ)なため、本格的なグレーディングを入れればMavic 3 Proのほうが思い通りの色に調整できると思われる。ユーザーの映像使用用途によってこの評価は分かれることとなるだろう。
せっかくなので静止画も撮影比較。両方ともRAWで撮影して色調整をしたものだが、Air 3SとMavic 3 Proの見分けはほぼつかないくらい高レベルだ。
便利な機能も搭載!安全に遊べるDJI Air 3S
DJI Air 3Sには、便利な機能も搭載されている。LiDARが前方に搭載されていて障害物検知機能がレベルアップしているのは既報のとおりだが、実は車のミラーのような「視覚アシスト」も見やすくなっていた。Mavic 3 Proでは黒く潰れがちな映像だったが、Air 3Sでは色幅の広い見やすい映像となった。視覚アシストに頼りきりになるのは危険だが、周囲の地形や障害物を把握したうえで “ヒント” として視覚アシストの映像を利用しながら安全管理するのはとても便利だった。
また、撮って楽しいパノラマ写真も、あえて全自動ではなくパノラマ写真の開始位置と終了位置を設定できるようになった。この機能は意外と便利で、意図したパノラマ画角の写真を撮影することが容易だ。
唯一最大の弱点はカメラに絞りがないこと。それ以外は死角なし!
DJI Air 3Sで紅葉を空撮していて気になったことは、カメラに絞りがないこと。Fly More ComboセットにNDフィルターも付属しているので減光して撮影することはできるのだが、微調整を絞りで行うことができず、シャッタースピードを1/120~1/180にすることで対応する必要があった(60fps撮影時)。滑らかな映像を撮影するのであれば、シャッタースピードを1/60あたりに設定しておきたいところだが、それでは固定された絞りがF1.8と明るいため、画面の一部が白飛びしてしまう…というところが唯一の弱点だろうか。
ほかは、見ての通りの高画質を撮って出しで撮影でき、多少の風の中でも安定して飛行し、飛行時間も十分なほど確保することができるバッテリー&USB-C充電+集電機能だ。撮影に必要なものはFly More Comboのバッグだけという状態で移動もできるので機動性も高い。
Mavic 3 Proと比較して考えると…
・本格的に色調整を前提とした撮影をしたい。撮影時の明るさも微調整したい。
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DJI Mavic 3 Pro Fly Moreコンボ(DJI RC Pro付属)を購入!:49万5,000円
※別途 DJI Mavic 3 Pro NDフィルターセット(ND8/16/32/64)が必要:1万8,700円
・色調整は微調整でよい。手軽に高画質撮影したい。
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DJI Air 3S Fly Moreコンボ(DJI RC 2付属)を購入!:20万9,000円
となる。圧倒的なコストパフォーマンスはAir 3Sだが、色編集をより高度に楽しみたいのならばMavic 3 Proを選ぶほうがベターだろう。ぜひ、本記事を機体選びの参考にしていただきたい。