「2種類の選べるセンサー」

 Skydio X10は、サーマルカメラ(赤外線カメラの一種)と可視光カメラがセットになったセンサーが、「VT300-Z」と「VT300-L」の2種類用意されており、用途に応じて選んで使用できる。

 当日の使用機体には、「VT300-Z」が搭載されていた。左側にサーマルカメラ、右側に狭角カメラと望遠カメラが搭載されている。もう1つの「VT300-L」は、左側にサーマルカメラとフラッシュライト、右側にワイドカメラと狭角カメラが搭載されている。

機体前方の選べるセンサー(本機体はVT300-Zを搭載)
Skydio合同会社発表資料より引用

 サーマルカメラとは、対象物が放射している赤外線の光を強弱として捉え、熱分布イメージとして表すカメラで、暗闇も可視化できるという。このため、GPSがあればナイトセンスを用いなくても、夜間飛行が可能になる。ただし、この場合は障害物を回避できないため、何かあれば赤外線カメラの映像を頼りに操作介入する必要がある。

 勉強会では事例を用いて、可視光カメラの使い分けについても言及された。例えば、「VT300-Z」の望遠カメラを用いて、243メートル離れた場所から車のナンバープレートを読み取ることができた事例や、「VT300-L」のワイドカメラを用いて、離れた場所から構造物下部にある0.1mmのひび割れを検出した事例などが紹介された。

Skydio合同会社発表資料より引用

 日本では、インフラ点検、道路点検や、建設現場での巡回や進捗管理、生産設備の現場モデリングなど、さまざまな分野で利活用が進んでいる。2023年12月現在、1000台強の出荷実績があるうち、ほとんどがSkydio2+だという。Skydio X10の導入でどのような効果が見込まれるのか、国内の事例で示されればよりいっそう注目度が高まりそうだ。

Skydio合同会社発表資料より引用

「暗所での障害物回避」

 Skydio X10は、「ナイトセンス」を用いることで、暗所での自律飛行および障害物回避が可能になる。アメリカでは夜間のファーストレスポンダー(第一応答者)として、警察や消防から非常に期待されているそうだ。

「一刻を争う捜索救助活動、事件・事故対応時、自然災害時などにおいて、最初にドローンを派遣し、迅速かつ効率的に状況把握したい」というニーズのもと、すでに各州の警察から各件1~2台ずつオーダーが入っているという。

 具体的には、ナイトセンスに搭載された可視光または赤外線を使って、取得した画像データをもとに、周辺環境の把握と障害物回避を行うことで、暗闇の中でも自律飛行ができる。

Skydio合同会社発表資料より引用

 また、ナイトセンスと組み合わせて、スポットライトを用いて照度を上げる、スピーカー&マイクを用いて要救護者への呼びかけや注意喚起を行うといった活用方法もおすすめだという。機体は、IP55対応、動作温度範囲マイナス20度からプラス45度というタフさで、さまざまな環境での活用が見込めそうだ。

Skydio合同会社発表資料より引用

 そうなると電力消費も気がかりだが、ナイトセンスを使用した際の飛行可能時間は非公表だ。夜間飛行で推奨される照度や障害物との離隔なども、同様に非公表。ただし今後、ナイトセンス単体で用いる場合のバッテリー制限については、環境にもよるものの、推奨数値の発表を予定しているとのことだ。

 こちらは、アメリカでの製品発表会での暗所飛行デモンストレーションの様子を紹介しながら、屋内の暗所でのナイトセンス利用について、柿島氏が説明した動画だ。Skydio X10が障害物を回避しながらステージに現れると、大きな歓声が上がった。また、CEOのアダム氏に向かって飛行し、自律的に回避する様子も披露されていた。

アメリカでの製品発表会の様子

日本では電力会社と建設会社が注目

 当日は、屋内でのデモンストレーションも実施。コントローラーをHDMIでモニターに接続し、コントローラーの画面を投影しながら機体を飛行させた。

屋内デモンストレーションの様子
飛行中
コントローラー画面

 Skydio X10は、日本では2024年春出荷予定だが、価格は非公表。まずはジャパン・インフラ・ウェイマーク(JIW)やNTT Comなどの国内パートナー企業に提供する。また、電力会社や建設会社などのエンドユーザーからも、パートナー経由ですでに受注を受け付けているという。

 なお、Skydio X10のドックも開発中だ。スケジュールは未定とのことだが、「自動化を促進していく上で、ドックは必須のプロダクトです。非常に力を入れて進めています」(柿島氏)。2024年の続報に期待したい。

Skydio合同会社 柿島氏(左)と、エンジニアの小山氏(右)
Skydio X10
Skydio合同会社発表資料より引用
製品説明の動画