初展示のSkydio Dock for X2(Outdoor)を中心に据えたNTT Comの展示ブース

工事現場での省人化にまた一歩、稼働現場での無人巡回ソリューションを紹介

 NTTコミュニケーションズ(NTT Com)のブースでは、2023年6月に初めて実証した稼働中の屋外建設現場での補助者無し目視外飛行による巡視実験の紹介や、実験で使用した国内でも珍しいドローンポートSkydio Dock for X2(Outdoor)を初めて展示。その他、災害対策や医薬品物流、農作業支援、インフラ点検といった多分野の実証動向を紹介した。

 NTT Comは6月、大林組(東京都港区)の協力の下、Skydio Dock for X2(Outdoor)を活用した稼働中の屋外建設現場における補助者無しでの目視外自動巡回実験に国内で初めて成功した。現状、建築現場での自動巡回をめぐっては、巡回システムやオペレーション体制が構築途上のため、現場が稼働していない早朝などの時間帯に補助者を立てて飛行をすることが一般的で、飛行時間帯が限られることや補助者の省人化が課題となっていた。

 今回、これまでの実証実験のノウハウなどを踏まえ、運用体制の構築が一定の段階に達したことから稼働現場での同条件下での実証実験に着手。国土交通省から飛行承認を得た上で、大林組が手掛ける静岡県内の高速道路建設現場を舞台に、橋梁下などGPSが入りにくい環境での動作確認や映像のリアルタイム伝送といった無人オペレーションの実現性を検証した。

 NTT Comの強みはSkydioを活用した運用体制の構築とデータ処理ソリューション。建設現場でのドローン利活用では、状況を撮影して終わりではなく、そのデータを解析することで付加価値が生まれる。担当者が「枚数を多く撮ればデータ解析の精度が上がるというわけではない」と話すように、同社では解析結果や現場の3Dモデルの精度を高めることをゴールとした飛行ルートの最適化や運用体制ノウハウを蓄積しており、今回の実験にも活かされているという。

Dockから機体を出し入れする実演や実証実験の内容をまとめた動画、概要資料などを配置したNTT Comの展示ブース

 ブースでは実験で使用したSkydio Dock for X2(Outdoor)を初めて展示。Dockを稼働させて機体を出し入れする様子を実演したほか、実験の内容をまとめた動画や概要資料も用意。パネル展示では建設現場の他、JFEエンジニアリングでのプラント内設備巡回事例などを紹介した。

 今後NTT Comが力を入れるのがデータ処理ソリューション。具体的には建設現場などでのDAY1とDAY7の画像から差分を検出することによって進捗をレポートにまとめるサービスの開発などを進め、最終的には上空利用プランなどとの組み合わせによるサービスのパッケージ化も見込む。ブースには建設やインフラ関係者などが訪れ、国内初の実証実験を実現できた理由や他社との違いなどについて質問していた。

災害対応ではセルラードローン×Buddycomの新サービスを紹介

 モバイル通信を活かしたドローンの利活用を進める「セルラードローン」事業では、災害対応や医療品輸送について紹介。特に力を入れていたのが、自治体や防災関係者向けの映像伝送ソリューションサービスだ。

セルラードローン事業について説明するNTT Comの担当者

 これまで、災害現場と指示を出す災害対策本部の連携を巡っては、複数のデバイスが必要な上、通信が不安定という課題があった。例えば、現場でドローンが撮影した映像を災害対策本部に伝送する場合、現場で機体から記録媒体を取り出してパソコンに保存した上で本部に転送するか、ウェブ会議アプリなどを通じて中継する必要があったという。しかし、データを差し替えて転送する場合、PCなど転送用デバイスが必要になる上、リアルタイムなコミュニケーションが取れないことが課題だった。また、ウェブ会議アプリを活用して中継をした場合でも、通信の安定性に懸念があるほか映像の利活用が難しいという声が寄せられていたという。

セルラードローンコーナーで展示したANAFI Aiと映像伝送シーンで活躍するコントローラー

 そこでNTT Comは、LTEに対応した仏Parrot社製の最新産業用ドローン「ANAFI Ai」と映像コミュニケーションアプリBuddycom(バディコム)、LTE上空利用プランをセットにした「映像伝送セット」の販売を開始。バディコム×LTEを活用することでドローンの映像を自動的に遠隔地へ高速伝送できるようになり、転送用PCが不要になるほか、現場と本部でリアルタイムのコミュニケーションが可能となる。さらに、映像は自動的に録画される上、通話内容を自動で文字起こしする機能(多言語に自動翻訳も可)などもあり、教育や検証場面での活用も期待できるという。

 展示ではANAFI Aiの実機や実証実験の紹介動画などを展示。大型スクリーンを活用し、担当者による定期的なシステム紹介などもあった。

今年から医薬品配送にも着手、南海トラフなどに備えた医療体制構築へ

 NTT Comは今年から医薬品配送の実証実験にも着手。3月に和歌山市内で、医薬品卸企業と和歌山医科大学の約1.5kmを結んで医薬品を配送する実験に成功。NTT Comによると、①ドクターヘリ指令室との連携、②顔認証による受領者確認、③輸送品質(温度センサー、加速度センサーの活用)の検証が目標で、課題であったドクターヘリとの連携では実証実験時刻に3回のヘリ出動があったものの連携が成功し、安全確保をした上で飛行できたという。会場では配送で利用したイームズロボティクス社製ドローンやプロジェクト概要を展示。南海トラフ地震などに備えた医療体制構築の為、今後はレベル4を見据えた運用面の検証や、同県内に複数ある僻地診療所への医薬品配送を想定した実証実験などを進めるという。

今年初めて実施した医薬品配送の実験概要資料と採用機体の展示

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