多摩川の上空を遠隔制御技術で飛行する東京航空計器のドローン。

 ドローンと関連ソリューションを展開するTEADは、2022年10月24日に東京都狛江市と神奈川県川崎市の都県境を流れる多摩川の河川敷で、ドローン空撮画像とAI画像解析結果の遠隔モニター視聴のデモンストレーションを行った。

災害時にドローンを活用するためには平時の日常的な利用が欠かせない

 TEADでは以前からパナソニック システムデザインと共同で、遠隔地からドローンの運航を監視・制御するシステムを開発している。2021年11月には東京都奥多摩町において、自然災害が発生したことを想定して、同町においてカメラを搭載したドローンを飛行させ、東京都新宿区の東京都庁からドローンを制御するという実証実験を行った。

 この実証実験ではドローンの制御と映像伝送の通信にNTTドコモの携帯電話ネットワークを利用。また、災害によって発生した遭難者の捜索活動に、会員制捜索ヘリサービス「ココヘリ」の受信アンテナをTEADのドローンに搭載。遭難者から発信される電波を受信すると、東京都庁のモニターにその位置を表示するとともに、その場所に向かってドローンが自動で飛行するというものであった。

 今回の実証実験のテーマは、ドローンをこうした発災時だけでなく平時からも利用しておいて、その中で得られた運航ノウハウを発災時に生かすというものだ。「自治体は災害が発生すると、いかに素早く情報収集して対策に役立てるかが重要。しかし、いつ起こるかわからない災害のために高価なドローンを導入して、さらにそれを運用するために訓練をしておくというのはなかなか難しい。そこで平時にはパトロールに使って、日常的に運用しながら慣れることで、災害時にもすぐに使うことができる」とパナソニック システムデザインの三原氏はいう。多摩川河川敷で行われたこの実証実験は、発災時にドローンで上空から河川の状況を監視することを見据えたうえで、平時に河川敷の不法侵入の人影や車両、ボートといった物体を検出すると同時に、漂着物や粗大ごみの不法投棄といった変化を捉えるというものだ。

この日の取り組みとソリューションについて説明する、パナソニック システムデザイン 技術総括の三原孝氏。

リアルタイムに河川敷の異常を検知して、前回撮影時との違いを識別

 TEAD、パナソニック システムデザイン、東京航空計器の三社は、このテーマに沿って「あらかじめ決められた地点における物体の検知」と「前回撮影した写真との差分を識別」、「携帯電話ネットワークを使って遠隔地に伝送する」システムを開発。ドローンは東京航空計器の「GNAS SKYクアッドマルチコプタ・固定ピッチモデル」を使用し、カメラはザクティの「CX-GB400」光学ズームジンバルカメラを装備。また、機体にはアドバンテック社製のコンパニオンコンピューターを搭載し、AIを使って撮影した映像から物体の検知と差分解析を行っている。

 東京航空計器のドローンは同社独自のフライトコントローラーを採用。行政機関や公共性の高いインフラの点検などで使われるドローンに対するサプライチェーンリスクの点において、近年強まっている国産志向に対するニーズに応えるものとなっている。また、IPx4相当の防滴性能を備えているほか、今後始まる機体認証制度にも応えられるつくりとなっているといった理由で採用された。

 この日のデモンストレーションでは、東京都狛江市の多摩川左岸の河川敷からドローンが離陸し、川を横断する形で神奈川県川崎市の右岸側まで飛行して戻ってくる約800mのルートを飛行。その間に利水用の取水堰をはじめ河川敷に設けられた観測地点を撮影して、各地点の物体検知と差分解析を行った映像を、携帯電話ネットワークを介してパナソニック システムデザインのクラウドにアップロード。その映像を狛江市役所と川崎市のKawasaki-NEDO Innovation Center(K-NIC)でリアルタイムに共有するというものであった。

ドローンの位置や河川敷の異常の有無といった情報と、ドローンが撮影した映像は、狛江市役所(左)と川崎市にあるK-NIC(右)で共有する形でモニターされた。