魚群探査、旅客・観光など用途は幅広い

エバーブルーテクノロジーズの今後の事業展開

 エバーブルーテクノロジーズは、今回の実証テスト成功を受けて、「今年度中に魚群探査を実用化し、来年には旅客用途のテスト運用を始めたいと考えている」(野間氏)という。同社は「海洋上のローエミッション化」を最終ゴールとしながらも、「ヨットが自律制御できれば、どんな社会課題を解決できるのか、どんなニーズが生まれるのかを考え、幅広い用途のハードとサービスを開発していく」という。

(1)魚群探査や海底地図作成

 同社は今後、「Type-A」をベースに、魚群探査を無人で行う探索船を開発する予定だ。(有)二宮漁場(神奈川県中郡二宮町)の全面的な協力を得て、無人探索船による魚群探査の試験運用を実施する。従来は有人船で魚群を探しながら漁を行っていたが、無人探索船の導入で、燃料費や稼動時間を削減して漁業従事者の肉体的・経済的負担軽減を図る。将来的には、定置網漁に必要な詳細海底地形図の自動作成や、無人魚群探査船の遠隔操船による “リモート釣り” なども構想中だ。

二宮にて深夜0時から行われている定置網漁の様子

(2)離島や半島における渡し船

 魚群探査や海底地図作成など「海洋データ取得」の次なる段階は、無人自動帆船ドローンによる「海上タクシー」だ。Uberのようにアプリ操作で帆船を手配して、目的地まで自律航行でクルーズするためのハードとサービスを開発予定で、2020年度中にプロトタイプ開発、2021年度にはテスト運行を目指すという。乗船定員は2〜6名を想定。約10km以内の渡し船のような海上移動ニーズは、葉山〜江ノ島のほか日本全国津々浦々にありそうだ。また、このような近海エリアなら、同社が遠隔操船で用いた3G/4G通信回線のカバーエリアである可能性が高い。

 「離島における海上交通事業者の多くは、利用者減少と運用コスト高により、厳しい経営状況に追い込まれています。通常の旅客船は、大型化・大量輸送のビジネスモデルですが、無人自律航行の小型帆船ドローンを旅客用途として導入すれば、人件費や燃油代を削減できるほか、カップルや友人同士、ファミリーなどでプライベート空間として安心して楽しめるという付加価値向上も期待できます。」(野間氏)

オープンイノベーションで業界の進化を加速したい

「動力船をゼロエミッション帆走船や電気推進船に置き換える未来を目指すために、自動帆走を手がけることになった」と話す野間氏

 野間氏は、「この業界が早く進化し、より良い未来に到達するためには、オープンイノベーションのスタイルをとっていきたい」と明言する。もともとは、風力・波力・潮力といった海上再生可能エネルギーを水素に変換して自動帆船ヨットで運搬する、海上水素サプライチェーンの構築を掲げる同社。その一翼を担う「自動帆走」の技術開発・用途開発と実用化を加速度的に進めるため、ハードの設計・デザイン・製造からソフトウェア開発まで、今後も様々な領域のプロフェッショナルと協働していく構えだ。