エバーブルーテクノロジーズは2020年6月11日、開発中のプロトタイプが、海上での自動操船および長時間自律航行テストに成功したことを発表した。今後は、漁場における魚群探査などのサービス開発に着手し、年内のサービス提供を目指すという。同社代表の野間恒毅氏に、帆船型ドローン開発の現況および用途と、今後の展開について訊いた。

船体はオリジナル設計された全長2m全高3.75mの三胴船で、3Dプリンタを活用して製造

帆船型ドローンが海上で自律航行

 帆船型ドローンの開発を手がけるエバーブルーテクノロジーズは、全長2m級のオリジナル帆船型ドローン「Type-A」の海上における自動操船と自律航行に成功した。テスト実施エリアは、逗子海岸(神奈川県逗子市)。動力は、自然風による帆走と2基の補助モーター。予め地図に設定した海上2箇所の経由地を半径5mの範囲で通過したのち、自動でスタート地点に戻ることができた。

1m級では、葉山〜江ノ島間の実証に成功

 実は同社では、2019年から帆船ドローン開発を手がけてきた。すでに、葉山〜江ノ島間の約7kmを、自然風のみで自動航行させるテストにも成功していたという。「この無人ヨットが航行した日は強風で、転覆防止のために2枚ある帆を1枚取り外したため低速となり、7kmの航行に約2時間を要したが、通常の4~5mサイズのヨットでは5〜10ノット、時速10〜20km弱の速度は出せるので、葉山と江ノ島を片道約1時間で移動できる計算です」(野間氏)という。

葉山港~江ノ島間、約7kmの自然風のみによる自動航行の軌跡(提供:エバーブルーテクノロジーズ)

帆船とドローンの技術を合体

 帆船は、風力をダイレクトに動力とするため、稼動時間が長く、燃油代がかからないうえ、地球温暖化ガス抑制にも有効だ。「風力で推進してバッテリー消費を制御系のみに抑えられれば、飛行型ドローンが20分程度しか稼動できないところ、帆船型ドローンは5時間〜最大8時間の稼動が可能だ」(野間氏)という。同社では、太陽光発電を組み合わせ、数日から数週間の無充電運用も視野に入れている。

 「我々のコアテクは、自動帆走です。大航海時代にはインドとヨーロッパを交易で結ぶなど、産業革命以前の主要な海上交通だった帆船を、21世紀のテクノロジーで進化させる、要は帆船とドローンの技術を合体させた自動帆走で、持続可能な社会に貢献したいと考えています。」(野間氏)

エバーブルーテクノロジーズ代表の野間氏

全長2m帆船型ドローン「Type-A」の特徴

 このたび自動操船と自律航行に成功した「Type-A」は、同社がオリジナル設計したプロトタイプ機で、三つの胴体から成り立つトリマランと呼ばれる艇。ハル(船体)と左右の浮きの長さが同じである点が特徴的だ。これにより無人でも転覆しにくく安定する。野間氏は、「通常の小型ヨットは人間が乗り込み、体重移動してバランスを取る前提の設計。無人で自律航行をさせるためには、オリジナルで設計する必要があった」と話す。

航行性能に関するハル(船体)の基本設計は、世界的ヨットレース「アメリカズカップ」のレース艇や貨物船の設計も手がける船舶設計のプロ、ACTの金井亮浩氏が担当

 設計製造には、3Dプリンタを活用。3Dモデリングされたデータを直接プリントアウトし、製造期間削減と製造費低減を実現した。制御ソフトウェア開発では、ドローンのオープンソースArduPilotをベースに、セール(帆)やラダーなど航行制御や衝突回避の独自技術を実装して、開発期間短縮およびオープンイノベーション推進を図った。遠隔操船の通信には、3G/4G回線とクラウドを活用。近海など、通信キャリアがサポートする範囲内で、常時モニタリングや遠隔操船が可能になるという。また、魚群探査などに利用できる振動子を標準装備するほか、各種IoT機器搭載にも配慮したデザイン・設計だ。