トヨタグループのトヨタシステムズは、自動車分野で培ったシステム開発や解析技術を、ドローン領域へと応用する取り組みを進めている。トヨタ自動車向けのシステム開発で培ったノウハウを活かし、流体解析による飛行安定性の検証や経路シミュレーションの実施、画像解析まで一貫して行うプラットフォームを開発中だ。
住宅点検から物流まで!ドローンを進化させる解析技術
トヨタシステムズではこれまで自動車のボディにおける空気の流れを検証して空気抵抗の少ない形を探ると行ったシミュレーション業務を行ってきた。この技術をドローンの飛行にも適用しようと考えている。プラットフォームに搭載される解析技術サービスでは、例えば住宅点検にドローンを用いる場合、機体が建物に近づきすぎると乱流で飛行が不安定になり墜落のリスクが生じるため、流体解析を用いて安全な接近距離を事前に割り出す手法を検討中だ。できるだけ対象物に近づき細部を把握したいが、安全性も確保しなければならない。このジレンマを、空力的な観点から解析し、事前に最適距離を見極めるわけである。
マルチコプタータイプのドローンを飛行中に静止(ホバリング)させようと指示を送っても、その場で急に止まることはできず、機体がやや流れてしまうことがある。トヨタシステムズが「オーバーシュート」と呼ぶこの挙動もシミュレーションでは再現しており、実際の機体挙動を予測したうえでウェイポイントを最適化する検証が行えるようになっている。また、住宅周りを点検する際は、限られたバッテリー容量の中で効率的に飛行する経路計画も重要だ。シミュレーション空間で事前にバーチャル飛行を行い、撮影したい箇所をカメラ画角に収められるかチェックする。実際の点検時にミスがあれば、顧客資産に損傷を与えてしまうため、事前検証は不可欠だ。この解析技術サービスは点検分野だけでなく、物流分野や農業分野にも応用することを検討しているという。
プラットフォームにおける画像解析ツールではAIを活用。住宅を点検した際に得た画像データをAIに読み込ませることで、クラックや汚れを自動的に検出。報告書に出力するまでを一貫して行えるサービスを想定している。一度取得したデータを蓄積していけば、経年変化を踏まえて長期的な傾向を読み解くことができ、建物の劣化や点検時期の予測も可能となる。
新たなモビリティに挑むトヨタの取り組み
空飛ぶクルマを開発するJoby Aviationにこれまで合計8.94億ドルを出資し、自動車以外の新しいモビリティに対して積極的な姿勢を見せるトヨタ自動車。トヨタシステムズもこの動きに合わせてドローンの運航を支援するべく、2023年からこのプラットフォームの開発に乗り出した。トヨタグループには住宅会社もあり、連携も視野に入れているという。「築年数の向上により点検するべき住宅などが増えている一方で、点検員が少なくなってきているので、効率よく少ない人手でチェックを終わらせられる仕組みを作っていきたい」と担当者は意気込みを話した。解析技術を起点にドローン運航の高度化・効率化を目指すという取り組みは同社の強みとなり得る。今後、実用化されれば、点検をはじめ各分野で効率的な運航を実現するためのツールが増えることになるだろう。
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