物流ドローンの開発を手掛けるイームズロボティクスは関西方面での展示会に初出展。担当者によれば物流に関連したニーズを引き出せることを期待していたが、災害対策に関心があったり、新規事業立ち上げに向けて情報収集したりする来場者が多い印象を受けたという。

能登半島地震で活躍したイームズロボティクスの災害対応

 2024年1月の能登半島地震におけるJUIDA(日本UAS産業振興協議会)を中心としたドローン支援グループのなかで、イームズロボティクスはスタッフ1名が、ドクターヘリなど有人機との調整を図りながら、各社のドローンを必要な場所に適切に配備・運用する運航調整役を担った。また、自社開発のドローン「E6106FLMP」「E6150MP」を投入して被災地を空撮。隆起した地形のオルソ画像を取得した。担当者は「発災直後は電波が届かなかったり危険だったりしてそもそも飛行に向いていない場合があります。その後、特別に許可を受けたドローンだけが飛行できる緊急用務空域が設定され、電波状況が回復してくると、孤立集落への物資輸送や、被災状況を把握するための撮影といったドローンのニーズがあるとわかりました」と、発災後のフェーズに合わせてドローンの活躍の場が出てくると解説してくれた。

 イームズロボティクスでは災害対応ドローンの開発を進めている。「Rescue“K”」という開発コードネームで呼ばれるその機体は要救助者を発見するため、赤外線カメラや、避難誘導を呼びかけるスピーカーを搭載。さらに「孤立集落で最初に必要なのが通信手段です。現地の様々なニーズを聞けるように衛星電話を運び、置いてくる装置を開発しています」(担当者)とのことで、物流ドローンを手掛けるイームズロボティクスならではの発想といえる。能登半島地震での経験を踏まえた新機軸の機体は2025年5月から販売開始予定だ。なお、このドローンは自治体と災害協定などを結ぶドローン事業者が運用することを想定しているという。

型式認証取得ドローンE6150TCの特長と課題

写真:展示されたE6150TC
第二種型式認証を取得したE6150TC。寸法は2015×2216×754mm。機体重量は18kg。最大離陸重量は24kgなので、最大搭載重量は6kgとなる。

 さて、イームズロボティクスでは2024年4月に第二種型式認証を取得した物流ドローン「E6150TC」を販売開始した。レベル3.5飛行までに対応し、DID(人口集中地区)での飛行や目視外飛行といった特定飛行も可能で話題を集めたが、担当者は現状の問い合わせ内容について「実際のサービスで使うというよりは実証目的のものが多いと思います。ドローンでのサービス提供が本当にできるか、まだ確立されてないところが多いので、まずは試してみようという事業者や研究機関から話をいただいています」と説明。

 物を運ぶドローンでは「DJI FlyCart 30」のデビューも2024年の大きなトピックスとなった。E6150TCの大きなライバルといえそうだが「我々はラストワンマイル配送を目指しています。(飛行経路下に人が立ち入らない)レベル3.5飛行といえども周囲に人がいる場所を飛行させると考えると、型式認証は必須だと考えています」(担当者)とし、型式認証を取得していないDJI FlyCart 30と差別化できるという考えを示した。

写真:ドローンのスキッドに搭載されたカゴ
E6150TCのスキッド(脚部)には荷物を搭載するカゴが取り付けられている。

 物流ドローンでは「置き配に対応できるようにしたい」といった新しい要望も出てきているとのことで、E6150TCの次の機体で実現するか、E6150TCを型式変更して対応するかを検討しているところだ。なお、置き配の仕組みとしては、一度着陸して地面に物資を置く方法、クレーンのように吊り下げて地面に設置する方法などを想定しているようだ。

第一種型式認証取得への課題と展望

 イームズロボティクスは第一種型式認証取得機体の開発も発表している。進捗状況を聞いたところ、難航しているという。その理由として法律の解釈や、設計の考え方について、審査機関とのすり合わせの難しさをあげた。2024年度内の取得を目標にしていたが、後ろ倒しは避けられない状況ということなので、無事に開発が完了することを願うばかりだ。

 地域課題の解決に役立つ先進的なサービスの開発・実装を行う「連携“絆”特区」制度が2024年6月からスタートし、イームズロボティクスは福島県らとドローン物流の社会実装に向けた研究に取り組んでいる。担当者は2025年の見通しについて「“絆”特区での成果を踏まえて現状の航空法等の規制に対する提言をしていきたいと考えています。また、機体開発部門と連携をとりながらドローンを使用したサービスの設計・提供もできるように準備を進めます」と語った。

写真:ブースの壁面に展示されたパネル
連携“絆”特区や能登半島地震における取り組みなどを紹介するパネル。
写真:展示された黒いボディのVTOL型機体モックアップ
開発中のVTOL型機体のモックアップも展示された。

#Japan Drone 2024 in 関西 記事