IHIのブースでは、同社が航空機やロケットで培ってきたエンジン技術のノウハウを活用し、従来の性能限界を突破するガスタービンによるハイブリッド方式発電が可能なドローン試作機を展示していた。同社の技術の集大成として、最大1トンまでの積載が可能なエアモビリティの実現に向けて動き出しているという。
ターボジェネレータで1トン級の荷物を1000kmまで運べるeVTOL!?
近年、配送物流系やエアタクシーなどで、垂直離陸ができるeVTOL活用の可能性が話題になっているが、大量の物資を長距離で一度に運ぶためには、現状の20kg程度のペイロードでは物足りないことは明らかだろう。効率よくモノを運ぶためには、数百kg~1トンクラスのエアモビリティが求められる。
そのためにはエネルギー密度や出力密度の高い動力源が必要だ。そこでIHIグループでは、これまで培ってきた技術を活用し、ガスタービンと発電機を組み合わせた「ターボジェネレータ」をバッテリの代わりに利用することを模索しているという。
現状の大型eVTOLでは航続距離が100kmぐらいまでのエリアしか飛べないが、ガスタービンの出力を100%電力に変換してマルチロータを駆動すると、1トンクラス(総重量4トン)の荷物をトラックよりも速く、しかも最大1000kmの遠距離までピンポイントで運べるようになるという。現在、このコンセプトに基づいて、ラジコン機用のジェットエンジンを搭載した小型eVTOLを開発し、実証実験を行ったばかりだ。
このハイブリッドシステムの出力は10kWほどで、商品化したい機体の100分の1ほどになるが、総重量105㎏の機体を浮上させることに成功している。もしバッテリだけで飛ばそうとすると、それだけで50kgも占めてしまい10分程度しか稼働できない。しかし、この試作機なら理論上では1時間以上は飛べるという。
IHIグループではeVTOL自体は製造しないが、隣接ブースで協力展示していたコンセプトモデル「HIEN Dr-One」のような設計メーカーに対して、パワーモジュール(タービン+発電機のハイブリッドユニット)を提供していきたいそうだ。なお、このHIENについては別項で詳しく紹介されているので、興味のある方は参照されたい。
産業用ドローンに取り付けて長時間飛行を可能にするエンジン発電機も
このほか他社製品になるが、小川精機(O.S.)の産業用ドローン向け搭載型発電機「GT33REUレンジエクステンダー」と、開発中の「GT60REUレンジエクステンダー」もIHIのブースで紹介されていた。
これはIHIグループのパワーモジュールと同様の原理で、動力電源供給用としてエンジンを活用することで、ドローンの飛行時間を伸ばせるようにしたユニットだ。発電機一体型のセルスターターを標準装備し、エンジンとスターター、発電機がワンユニットになっている点が特徴だ。O.S.独自の技術により、セルスターター用ESC(アンプ)と発電機用整流調圧器を一体化している。
GT33REUは、本体重量を2.2kgと軽量化し、できるだけペイロードに影響が出ないように工夫している。強制空冷2ストローク単気筒エンジンを採用し、行程体積33㏄、定格出力1.0kW、電圧48V、燃料消費率1026g/kW・h(定格時)となっている。
内蔵エンジンマネジメントシステムのガバナ機能により、負荷が変動しても自動的にエンジンを制御し、最大11時間の連続稼働を実現している。この検証試験は動画でも公開されているので確認してみるとよいだろう(https://youtu.be/lwH4kZ0ht_U)。
一方、GT60REUレンジエクステンダーのほうは開発中で、2年前のイベントでも参考展示されていたものだ。仕様は完全に固まっていないが、エンジンはGT33REUと同様で、行程体積約60cc、定格出力2.0kW(予定)、電圧48Vで、重量と燃料消費率は未定だ。
ドローンの長距離飛行を検討している場合は、まずはこういった製品から試してみるのも良いだろう。
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