Autel Roboticsは2023年6月26日から6月28日まで幕張メッセで開催した「ジャパンドローン2023」に出展した。2023年1月に発表した産業用ドローン「EVO Max 4T」や、全自動機能を備えたコンパクトなDock「EVO Nest」のほか、多様な製品を展示し、来場者の注目を集めた。

高性能ドローンとコンパクトなDockで多様な産業ニーズに応える

 EVO Max 4Tは、高度な自律制御システムを搭載したAutel Roboticsの次世代産業ドローンだ。前後と上下にカメラを搭載し、720°の障害物回避能力を持つ。その能力は先代モデルを凌駕し、夜間でも検知可能となっている。IP43の防水防塵仕様で飛行時間は42分、ジンバル部には1.2kmのレーザー距離計、640×512ピクセルの赤外線カメラ、最大160倍のズームカメラ、1/1.28インチCMOSセンサーを備えた広角カメラを搭載している。

飛行中のEVO Max 4T。

「EVO Max 4Tは、DJIの産業機であるMatrice 30の競合機として位置付けられるモデルです。Matrice 30に備わっておらず、EVO Max 4Tに備わっている機能にホットスワップがあります。運用時にバッテリーを1本装着していますが、ホットスワップ機能によって、交換のためにバッテリーを抜いても機体の電源は落ちません。機体をリセットせずにバッテリーを交換できるのです」と担当者は説明した。

EVO Max 4Tの前面と背面

 最新のドローンに加えて、ドローンを格納し、離着陸場所や充電スポットとして機能する「EVO Nest」も注目を集めていた。重さはおよそ60kgとコンパクトな設計で、専用のドローンでなくても利用できる特徴を持つ。

EVO Max 4Tを格納するEVO Nest。

 Dockとドローンは1対1の運用ではなく、複数のDockを導入し、広範囲をカバーするように設置すれば、ドローンの充電スポットとして機能するため、より長距離・広範囲の運用が可能となり、新たな用途の創出にもつながる。広範囲の敷地内での点検業務のほか、巡回監視の利用も考えられ、物流ドローンを組み合わせれば、拠点間の配送などにも利用できるかもしれない。

産業用ドローンの上位機種「Autel Alpha」

 EVO Max 4Tよりもひと回り大きいサイズとなる「Autel Alpha」も展示されていた。これは、点検業務を目的とした機種であり、搭載しているカメラや機能も豪華な仕様となっている。具体的には、最大250倍のズームカメラ、2kmのレーザー距離計、640×512ピクセルの赤外線カメラ、広角カメラを搭載している。使用するバッテリーは2本となるが、EVO Max 4T同様にホットスワップに対応している。さらに、今後のアップデートでは、障害物検知機能の精度向上を予定しているという。

ジンバルのクイックリリースで利便性を高めたAutel Alpha

産業用から教習、趣味まで、多様な選択肢を持つ「EVO II」シリーズ

 Autel Roboticsのスタンダードモデルとも言える「EVO II」シリーズも展示されていた。EVO IIシリーズは、交換式のジンバルが最大の特長であり、空撮を楽しむホビーユースから産業用途まで幅広く対応している。例えば、コンシューマー向けの「EVO II Pro」を購入し、追加で赤外線カメラを導入すれば「EVO II Enterprise」と同等の運用が可能となる。

EVO IIシリーズには6Kカメラとサーモカメラの2つのモデルを用意。

 ほかにもリーズナブルな選択肢として「EVO Lite」シリーズや「EVO nano」シリーズがある。これらは、GNSSの受信を手動で切ることができるATTIモードを備えているため、操縦訓練を目的としたスクールでの利用などに役立つ。なお、上位機種のEVO II Proにはオーバーライド機能があり、講師がマスター権限で制御し、受講生がスレーブ権限で操縦することで安全に練習することが可能だ。

EVO Lite、EVO nanoは操縦訓練機としても使える。

VTOLや運搬機などラインアップを拡充し、産業の現場を支援していく

 Autel Roboticsの主要モデルのほとんどがマルチコプター型であるが、その一方で、VTOL機(垂直離着陸機)の「Dragonfish」もラインアップしており、ブースで展示されていた。

 このVTOL機は、「Dragonfish Pro」「Dragonfish Standard」「Dragonfish Lite」の3種類があり、それぞれ飛行時間は158分、126分、81分となっている。マルチコプターに比べ、長距離・広範囲での運用が可能となっている。

離着陸時、翼端のプロペラが上を向き、ホバリングすることも可能。

 翼端のプロペラは離着陸時に水平、巡航時には垂直に動作するティルトローター式となっている。飛行の4割は自動化されており、操縦はマルチコプターと同様に行える。機体にはミリ波レーダーによる障害物センサーに加え、全世界の地形データも搭載しているため衝突のリスクを低減できるとしている。

 最後に担当者は、今後の展望について次のようにコメントした。

「ジャパンドローンの来場者からの反応は非常に良く、特に自律飛行が可能なEVO Max 4TとDockのソリューションに注目が集まりました。ただし、室内での利用に関しては一部課題があると認識しており、我々はそれに取り組んでいく予定です。今後1~2年かけて11kgのペイロードを搭載できる運搬機『TITAN』の開発も計画しています。今後、さらに拡充された多彩なラインナップを通じてドローン市場を盛り上げていきます」

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