台湾のパビリオンでは、台湾の研究機関にあたる工業技術研究院が複数の企業を取りまとめ、ドローン関連製品を出展していた。以前まで台湾は中国の電子部品を利用していたが、現在は安全保障上の観点から、国内メーカーの要素部品を採用しているという。もともとPCや組み込み系の電子装置の製造が得意なメーカーが多いため、ドローンにも国内製品を転用できるという背景がある。また政府の方針もあり、いまは民生用よりも軍事用のドローンに重点を置いているそうだ。
デュポンの材料を採用したアレイ型衛星アンテナで高信頼化を図ったドローン
展示ブースの中で最も目をひいたのが樂飛創新國際股份有限公司(https://a3funii.com/)のドローンだ。主に物流用途が中心だが、航空撮影・測量、設備点検、農業、軍事など多目的で利用できるという。ペイロードは30kgまで、30分前後の輸送が可能だ。
通信衛星にスターリンクを利用し、TMYTEK社(https://tmytek.com/jp)の専用アンテナも搭載している。このアンテナの素材には、デュポン社のグリーンテープ「MCM LTCC材料システム」を採用し、256個をアレイ状にして組み立て、衛星通信で用いられるKu(12-18GHz)/Ka(27-40GHz)帯に対応している。デュポンの材料はかなり高価だが、性能と信頼性を担保するために、あえて用いているとのこと。
ドローン中央部のヘルメット状のカバー内には、フライトコントローラなどの装備品が内蔵され、展示品では飛行用の3.6kWモータが6基分シンメトリックに配備されていた。ドライバーとPWMコントローラは外付けされており、ヒートシンクがむき出しになっていた点が少し気になった。
軍事用でユニークだったのは航見科技(https://www.hjuavs.com/)の小型ドローン「ATG Duo」だ。ペイロード1.5kgで、飛行高度は3500m、最大飛行距離は15km。カメラやエッジAIボードを取り付け、偵察/監視用として使用できる。もしIMUが故障しても姿勢やナビゲーションの安定性を保てるように、冗長構成を取れるRedundant IMUも搭載。同社にはヘリコプター型ドローンもあり、エンジン駆動でペイロード15kg、最大高度4000m、200kmまでの長距離飛行に対応できるという。
車載用の地上コントロール基地で、どこでも管制塔を実現
ドローン管制などに使える地上コントロールシステムを紹介していたのは、Macroblock社だ(https://www.mblock.com.tw/en)。もともと同社はLEDの駆動ICメーカーとして発足したが、現在ではLEDディスプレイ、バックライト、照明製品などの性能を最大限に引き出す製品を開発している。今回の出展はドローンの周辺機器が中心で、地上固定型のコントロールシステムのほか、モバイル型、ポータブル型などを紹介していた。
地上固定型のコントロールシステムは、オペレータの視認性を考慮した曲面デザインの大型ディスプレイ(幅2669mm)を採用しており、高解像度と高コントラスト特性により、画像の細部を鮮明に表示し、正確な距離感と方向感を提供する。
一方、モバイル型は、地上固定型と同様のコントロールシステムを車載仕様にしたものである。対応するクルマはメルセデス・ベンツのSprinter、フォルクスワーゲンのCrafter、日野自動車の300シリーズ(DUTRO)。ドローンと一緒にコントロールシステムを運んで、どこでも制御できる点がウリだ。
ポータブル型のコントロールシステムはアタッシュケースに収まるサイズで、ケースを開けると、ドローンから無線で送られてきた映像をモニタリングするディスプレイとコントローラで容易に操作できる。ディスプレイは、屋外の明るい日光下でも可読性が低下しないよう最適化されている。
台湾には十数社のドローン専業メーカーがあるそうだが、軍事系イベントと重なっており、本展示会では一部の出展にとどまったという。台湾のドローンメーカーの層は、日本が思っている以上にかなり厚いようだ。
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