スターリンクを生かした事業やスクールの紹介などが展示されたKDDIスマートドローンブース

 KDDIスマートドローンは、同社が提供する衛星ブロードバンドインターネットサービス「STARLINK BUSINESS(スターリンクビジネス)」と自律飛行型ドローンの有用性を体感してもらおうと、リニューアルオープンしたばかりのKDDIスマートドローンアカデミー君津校(千葉県君津市)とJapan Drone 2023会場(同県千葉市美浜区)の約50kmをつないだ遠隔飛行デモンストレーションを複数回実施。展示では、同校と小山校(栃木県小山市)の直営校計2校に加えて提携8校を含めたスクール体制の概要や2023年6月にサービスを開始したばかりの鉄塔点検ソリューション、建設現場の無人巡視を目指して飛島建設(東京都港区)と連携して進めている実証実験の最新動向などを紹介した。

 同社は昨年12月、有人地帯での目視外飛行(レベル4)を解禁する航空法改正を受け、安全な飛行を担うプロフェッショナル人材確保の観点から本格的なスクール事業への参入を発表。国家資格取得コースはもちろん、撮影や物流、ソーラーパネルの洗浄、Skydio認定コース(2023年5月に新設)といった9つの専門領域コースを提供している。

KDDIスマートドローンアカデミーの直営・提携校や取り扱いコースを紹介した展示

 今回のデモンストレーションでは、閉校した小学校を利用してリニューアルしたばかりのKDDIスマートドローンアカデミー君津校と幕張メッセの約50kmを結び、米国Skydio社製ドローンポート「Skydio Dock Lite」とKDDIが提供するスターリンクを活用した屋内飛行の遠隔操作などを実演。スターリンクアンテナを君津校に設置することで現場をWi-Fiエリア化し、ドローンが廊下を直進したり教室に入っていったりする様子を来場者に披露した。

 他にもKDDIスマートドローンなどが提供する充電ポート付きドローン「G6.0 & NEST」と同社が開発した運航管理システムを組み合わせ、校舎の屋上から飛び立って校庭を巡視するデモも中継するなど、通信のスムーズさをアピールした。実演ブースには同社として初展示となるSkydio Dock for S2+もお目見えし、来場者は足を止めて実機を確認していた。

Japan Drone 2023会場とKDDIスマートドローンアカデミー君津校の約50kmを結んだ遠隔操作の実演に集まる来場者

新たなサービスとして鉄塔点検を追加、省人化の領域広める

 新サービスとしてKDDIスマートドローンが6月26日から取り扱いを始めたのが鉄塔点検。ドローンによる撮影×AI画像解析技術により送電鉄塔の点検を効率化するソリューションで、ブースではサービス内容の紹介やデモ映像を流した。

新サービスとして提供が始まった鉄塔点検について紹介した展示パネル

 鉄塔点検は設備の老朽化で需要が高いものの、作業員が高所に登って点検を行う性質上、作業コストや落下・感電等のリスクが高いことが課題だった。特に地方では作業員の高齢化や人手不足も相まって深刻な問題となっている。

 こうした問題に対し、KDDIスマートドローンはAI技術開発企業アラヤと連携。送電鉄塔の不良事例としてさびが最も多いことを踏まえ、ドローンで撮影した画像を基に画像解析AIが自動でさびを検出するモデルを開発した。ドローンが撮影した1基あたり約1000枚の写真を基にAIでさびのある場所を絞り込む仕組み。不良箇所を絞り込んだ上で点検作業ができるようになるため、作業の大幅な効率化につながるという。

 また鉄塔点検を手掛ける事業者が撮影から分析までの作業を内製化できるよう、6月からKDDIスマートドローンアカデミーに鉄塔点検コースを追加。実際の鉄塔を使いながら撮影の方法や画像解析ソフトの使い方が習得できるという。

 送電鉄塔の不良項目はさび以外にも複数あることから、今後は不良箇所検出ラインナップの更なる拡充を進める予定。すでに東北電力ネットワーク(宮城県仙台市)と連携し、鉄塔1基あたり数千カ所の点検が必要とされるボルト・ナットの緩みや緩み止めの脱落といった不良をAIで解析する技術を共同で研究。早期の実用化を目指している。

通信環境が無い現場でスターリンクの強みを生かす、建設現場での省人巡視も加速

 KDDIは、無線電波が入らない山間部の建設現場やインフラ施設を念頭に、スターリンクを活用した遠隔での監視・巡視体制の確立も進めている。会場では飛島建設とともに5月12日に実施した、電波が入らない現場を想定した実証実験の概要や成果を展示。実験では、飛島建設の技術研究所(千葉県野田市)を電波が入らない現場に見立て、スターリンクアンテナを設置することで現場を通信エリア化。ドローンを遠隔で離着陸させるためのSkydio Dock for S2を使い、あえて障害物を置くなど現場の環境を変えながらも、安定した自律飛行と映像伝送を維持できることを確認した。

 会場では、実験の概要や使用した機材の説明を展示したほか、実証実験の様子をまとめた動画も放映した。

建設現場などの省人化を目指して実施した飛島建設との実証実験などを紹介するブース

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