2023年6月26日~28日、千葉県幕張メッセにおいて、第8回目となるJapan Drone 2023が開催された。例年通り、大型ドローンゾーンに出展したエバーブルーテクノロジーズは、帆船型水上ドローン、高機動型水上ドローン、無人自動除雪ドローンを展示した。また6月28日にオープンステージでは、「長時間・長距離運用可能な水上ドローンによる社会課題解決」と題した講演も行った。本稿は展示と講演についてレポートする。

「無人自動除雪ドローン」2023年冬に商品化へ

 エバーブルーテクノロジーズは、風を推進力として活用しながら、遠隔自動操船できるという「帆船型水上ドローン」を開発、提供しているスタートアップだ。例年、この帆船型水上ドローンは、大型ドローンゾーンでもひときわ目を引いている。

 今年の帆船型水上ドローンは、制御する機器の消費電力を海上で賄えるよう、船体に太陽光パネルが2面設置されていた。「令和4年度飛島スマートアイランドプロジェクト」では、消費電力を賄えるプラス充電もできることを実証したという。同社は、海上輸送の脱炭素化と長時間連続稼働を目指しており、次世代海上モビリティの“理想形”に向けて、一歩前進した姿をお披露目した。

 さらに、帆船型水上ドローンには定点自動保持機能もあるため、用途としては海洋モニタリングや、通信中継地、海上警備などもおすすめだという。

オープンステージの講演での投影資料

 また、帆船型水上ドローンの自動操船で培った制御技術を用いて、「高機動型水上ドローン」の開発も手がけている。今回の展示では、製品モデル「AST-181」の追加ラインナップである「AST-181LT」も紹介した。同シリーズは、船体に突起物がなく魚網などにもからまりにくい、転覆しても即座に自動で起き上がる、雨天や波高1m以上の悪条件でも運用できるという特長がある。

 最高速度は時速35kmで、海難救助で活用する場合には、要救助者の位置を特定したら自動でその座標へ駆けつける。「AST-181LT」は、本体に防水カメラを搭載しており、障害物を検知したら自動停止して状況を見て再始動する、衝突回避機能も搭載。何を搭載するかは、カスタマイズも可能だという。

 同社は、既存の小型ヨットや小型ボート、既存船外機を自動操船化できるよう、遠隔から自動操船するコントローラーと通信部分をユニット化した製品も開発し、販売している。今回は、このユニットを転用して、「無人自動除雪ドローン」を開発していた。展示の中でも、無人自動除雪ドローンへの来場者の注目度は特に高く、「これはいいですね。私、出身が青森なんで…」と、雪国出身者からも好評だったという。

 エバーブルーテクノロジーズの野間社長は、「これまで培ってきた技術を、あらゆる社会課題解決につなげたい」と話す。

「水上ドローンと雪かきは、全く関係ないように思えるかもしれないが、雪国では毎日ひたすら除雪し続けなければいけないため、高齢者の方が日々困っておられる、事故で亡くなる方もいると聞いた。雪かきは、非常に切実な社会課題になっている。もともと我々は、脱炭素という社会課題を解決するために立ち上がったスタートアップなのだから、無人自動で除雪できたらというニーズを聞いて、社会課題を解決するため何かお役に立ちたいと考えた」(野間社長)

 2023年2月、除雪機の自動化実験を実施して、商品化の目処が立ったという。面白いのは、「雪が積もってから除雪する」のではなく、「常に除雪して積もらない状態をキープする」と、除雪のコンセプトチェンジを図った点だ。自宅前から公道までの道や駐車場の出入り口などを、「自動で雪かきをし続ける」ことで、除雪機の無人自動化のみならず、小型軽量化、低価格化も両立できる。また、「出かけたいとき、すぐに安全に出かけられる」ユーザーメリットは大きい。2023年冬の商品化を目指すという。

 オープンステージの講演では、「令和4年度飛島スマートアイランドプロジェクト」の実施報告も行われた。飛島は、山形県酒田市の北西方向39kmの日本海上に位置している、山形県唯一の有人離島。エバーブルーの帆船型水上ドローンは、初めて“外洋航行”にデビューした。

 結果は、悪天候で長距離移動を断念した日程もあったが、約20kmを速度時速6kmで航行できることを実証した。帆船型は、推進力が風向きで左右されるため、緊急出動や期日の差し迫った輸送には不向きかもしれないが、飛島では大量に漂着する海ごみを焼却する施設がなく、これを帆船型水上ドローンで輸送する実証も行い、成功を収めたという。ゆっくりとでも、燃料費も人件費もかけずに、目的地まで輸送できるなら非常に有用だろう。また、密漁対策を目的とした安全監視実験、藻場の繁殖状況のAI解析を目的とした水中モニタリング実験も実施し、「帆船型水上ドローンは、外洋においてコストをかけず、二酸化炭素も排出せず、長時間稼働できる」ことを実証できたという。

 こうした特長を生かして、今後は空中ドローンや水中ドローンの海洋における母艦となることや、帆船型水上ドローンにドローンポートの機能を搭載することなども視野に入れる。野間社長は、「適材適所でやっていくことがドローン業界全体を盛り上げることにつながるのでは。さまざまなメーカーさんと協力して、一緒にやっていきたい」と話す。

 また、帆船型水上ドローンと太陽光発電などの給電システムを組み合わせて「無限化を図れる」ことから将来的な構想として、「メッシュネットワーク構想」も打ち出した。LPWA(Low Power Wide Area)という低消費電力で長距離をデータ通信できる無線通信技術を用いて、海上の離れたところにある帆船型水上ドローン同士が、相互通信できることを確認したという。これを拡張することで、非常に広い範囲で通信を構築できるため、海中広域センシングや海の広域監視が可能になるのではないかと、帆船型水上ドローンの新たな利活用方法を提案した。


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