双葉電子工業のブースでは、本イベントで初お披露目となる消防用ドローンを出展していた。災害大国の日本では、日常で頻繁に発生する水害や土砂災害、さらに突発的に発生する大規模災害に対し、俯瞰的に情報を収集できるドローンが非常に有効な手段となる。そのため、消防庁・消防本部でもドローンの本格導入と活用を推進しているという。

小山市消防本部に導入済み! 救助資機材や応急手当資器材を投下できる消防用ドローン

 双葉電子工業は、クオリティソフトと共同で、従来の産業用ドローン「FMC-02」(ヘキサ型、最大ペイロード5.0㎏、無可搬時のフライト時間40分)に、動画カメラ、物件搬送&投下装置などの機能を搭載することで、消防分野に活用できるドローンを開発。ペイロード4.0㎏で約20分の飛行が可能で、ドローン本体と搭載機器は消防庁が求める防水性能等級3(IPX3相当)以上の「災害対応ドローン」機能要件や、風速15m/sの耐風性能も有している。

消防用ドローン。火事の消火用ではなく、救難救助用に使うもの。すでに小山市消防本部で導入済みだ。
ベースとなる産業用ドローンの耐風試験の様子。風速15m/s以上の耐風性能を有し、強風でも安定飛行。

 物件搬送&投下機能によって、救助用ロープや救命胴衣・浮環などの救助資機材、AED・応急手当資器材の搬送・投下も可能になる。隊員・車両が近づけないような現場では、要救助者や傷病者へのアクセスが格段に向上し、災害対応力の強化につながるという。

 一方、災害発生時の広域アナウンスや避難誘導を行うスピーカーには、指向性に富んだクオリティソフトの「圧電スピーカーユニット」を採用し、100m以上(可聴距離直線は約300m)も先の離れた場所まで音声がクリアに聞こえるように工夫を凝らした。この圧電スピーカーは約800gと軽量で、消費電力も5Wと小さく、ドローンの飛行時間への影響を最小にしている。また磁石を使用せず、ドローンの電子コンパスに影響を与えない設計だ。

 さらにドローンのプロペラによる「風切り音」の影響を抑え、音圧減衰の少ない設計にすることで、上空からもクリアな音声でアナウンスできるという。オプションだが、日本語のテキスト文章から自然なアナウンス音声を生成できるAIアナウンス機能も用意。最大29カ国語によるアナウンスも可能だ。これにより、災害発生時に被災者への適切な行動指示や励ましの言葉を発することができる。

 実は、この消防ドローンは「災害対応アナウンサードローン」として、すでに小山市消防本部で導入済みだ(https://drone-journal.impress.co.jp/docs/news/1184748.html)。現場での活用に徹底的に配慮している消防用ドローンは、小山市消防本部を皮切りに、全国の消防署でも検討されていくだろう。

出光と共同開発した便利なマルチユースのドローンも展示

 もう1つ、双葉電子工業が出光興産と共同開発したドローンも展示されていた。これは1台の機体で、複数用途に対応できる「マルチユース」のドローンで、両社が2022年度から開発を進めてきたもの。

双葉電子工業が出光興産と共同開発したマルチユースドローン。機体下部アタッチメントを付け替えて、マルチユースで使える。

 ドローンの機体下部にあるアタッチメントを付け替えることで、物流、撮影、有線による長時間飛行など、さまざまな用途に対応できる。さらにモバイルネットワークを介してドローンを制御する「上空LTE」を活用して、外部サーバを経由せずに複数拠点にデータを送信。またネットワークを通じて、リアルタイムの撮影画像などを送れる「オンタイム電送」も可能になる。

 両社は、この共同開発のドローンを活用し、地域課題を解決するサービスの事業化を検討していく意向だ。マルチユース対応の機体開発に加え、サービスステーション(以下、SS)を起点とした設備点検や物流配送、災害対応、農業利用といった各種サービスの事業化や、ドローン操縦技術者などの人材育成にも取り組む予定である。

 たとえば、製造分野では出光興産の事業所内設備や、北海道の寒冷地でのソーラーパネル設備点検、災害対応分野ではSSを拠点とした有線給電飛行による長時間監視と自治体への状況提供、農業分野では果樹・茶畑など傾斜地での巡回生育監視・測量、観光地の空撮やSSを活用した物流でも実証実験を行い、サービス範囲の拡大を目指していくという。

画像の長距離伝送も! 開発中のオールインワン型のコントローラ

 そのほかの目玉展示としては、画像伝送機能を備えたオールインワン型コントローラが挙げられるだろう。これまではコントローラ、ミッションプランナー用のPC、画像を受信するPCというように、バラバラに機材を用意する必要があったが、新コントローラでは、すべての機能がてんこ盛りで入っている贅沢な仕様である。

画像伝送機能を備えたオールインワン型コントローラ。1年越しで開発中とのこと。ミッションプランナーの搭載が秀逸だ。

 従来のコントローラの機能に加え、リアルタイム映像を手元で見られる点は便利だ。またドローン制御が可能なミッションプランナーは、飛行中にドローンにデータを転送し、自動航行のプランを指示することで、航行プランを容易に変更できる。このコントローラが1台あれば、ドローンのマニュアル操縦から自動航行、そしてフルHD映像をリアルタイムで遅延なく見られる。

 実は、こちらは昨年も出展していたものだが、開発が続いているという。というのも、従来の通信距離は1~2kmだったが、新コントローラでは通信距離を5kmまで伸ばそうとしているため、入念に準備しているとのこと。製品化にはもう少し時間がかかりそうだ。

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