アミューズワンセルフは、ドローンに搭載するレーザースキャナシステム「TDOT(ティードット)」を開発している2011年創業のメーカーだ。今回は、ソフトバンクと共同で、国産ドローン「GLOW」シリーズ2機種とドローン搭載用レーザースキャナシステム「TDOT」シリーズ3機種を展示した。
国産ドローンGLOWシリーズ2機種、ハイブリッドドローン「GLOW.H」と汎用型産業用ドローン「GLOW.L」
ハイブリッドモデルのGLOW.Hは、30ccのエンジンとバッテリーを搭載したハイブリッド型の4ローターモデル。エンジンで発電した電気を使い、バッテリーを充電しながら飛行する仕組みとなっており、ペイロード無しでは最長4時間、測量機材のTDOTシリーズを搭載した場合でも2時間のフライトが可能で、広範囲の測量を一度に行うことができる。「通常のラジオ電波では1km、LTE通信なら4km~5kmまで安全にフライトできる」と担当者は説明した。
ペイロードは3kgで、同社のドローン搭載用レーザースキャナシステムTDOTシリーズすべての搭載に対応している。内蔵コンピュータにはAI機械学習、高負荷画像処理、自動運転システムなど負荷のかかる処理も実行可能な「NVIDIA JETSON」を標準搭載。
一方でGLOW.Lは汎用型の産業用ドローンとして位置づけられており、搭載するセンサーの機能を発揮するためにムダをそぎ落としたシンプルなドローンだ。収納サイズはW300×D350×H850mmとコンパクト(フライト時はW1450×H530mm)。ペイロードは5kgで、同社のTDOTシリーズを搭載して約25分のフライトが可能だ(ペイロードなしで35分、5kg搭載時で20分のフライトが可能)。機体の軽量化と重量バランスの最適化を考慮して製品設計されており、ドローンとしての安定性に加え、高度な制御システムで、安定したホバリングや構造物に接近した撮影が可能という。
両機体ともLTEモジュールを標準搭載しており、各通信キャリアのSIMカードを差し込むだけでLTE通信圏内であれば送信機との通信が途切れた場合でもLTE通信に切り替わり、機体情報の閲覧や遠隔操縦を継続して実施できる。さらにGLOW.HにはオプションでLTE通信が途切れた場合でもさらに継続を可能とする衛星テレメトリーを用意している。
そのほか、ドローン設定、操縦設定、フライトプランの表示、実行、フェイルセーフシステム、機体の状態を細部まで確認できるテレメトリー、すべてを直感的にコントロールできるGLOW専用管制アプリケーション「QGC for GLOW」を標準装備し、操縦者の技能レベルを問わず、容易に操縦が行える。国土交通省が定める「無人航空機の飛行記録」「日常点検記録」「点検整備記録」の記録から出力にも対応し、面倒な飛行日誌の記録を一元管理できる。
ドローン搭載用グリーンレーザーなど3次元測量レーザー機器TDOTシリーズ
TDOTシリーズは、最新のTDOT 7 NIRシリーズ2機種とグリーンレーザーモデルのTDOT 3 GREEN、合計3機種が展示された。
リーグル社製レーザーモジュール「VUX120-23」を搭載したTDOT 7 NIR-Sは、秒間最大240万点、400ラインの超高速レーザーモジュールで、ビームは、真下、前方+10°、後方-10°の3方向にビームを連続照射。これにより、建物・構造物の鉛直面、あるいは切立った急崖から成る幅の狭い谷地形のようなレーザー測量が苦手とする対象物に対しても、構造全体を捉える測量データの取得を可能とする。また、可視光カメラとサーモグラフィカメラを搭載したユニットがオプションで用意されている。
同じくリーグル社製「miniVUX-3UAV」を搭載したTDOT 7 NIRは、秒間最大30万点、100ラインのレーザーモジュール。最大の特徴はFOV(視野角)が360°あり、ドローン測量では不要となる上半分の180°の範囲をカットしても、180°の視野角はビルや橋脚、ダムなどの構造物、オーバーハング形状の地形に有効となり、安全なフライトでデータを取得できる。こちらも可視光カメラとサーモグラフィカメラを搭載したユニットがオプションで用意されている。
いずれも同社がシステム化を行っており、TDOTシリーズの最大の特徴である高性能GNSS/INS複合航法システムによる、フライトと測量に特化した点群データ出力までをシームレスに行うプロセスが可能となっている。これは、1秒間に数百万点というレーザー照射をしながらも、数cm級の高精度測量を実現するスペックを備えているということになる。「災害時にフライトしながらリアルタイムで3次元点群データを作成して災害対策本部へ送るなどといった使い方が可能です」という。
グリーンレーザーモデルのTDOT 3 GREENは、濡れた路面や河川の中といったこれまでの近赤外線レーザースキャナが不得意だった場所のスキャニングを可能としている。現状使用されている近赤外線レーザーは、安定性はよいが黒い物体での反射率が低く水に吸収されやすいため、雨が降った次の日や新しく舗装された道路などを測量することができない。グリーンレーザーは緑色域のレーザーを照射することで、近赤外線の弱点を克服できる。近赤外線レーザーと同じ測量も可能なのでTDOT 3 GREEN1台で、陸上と水中の両方の地形測量に対応する。
「地面はドローンで測量し、水面下は船で測量、さらに大型船が入れないような沿岸10m範囲は小さなボートに乗り換えるなど手間暇がかかっていました。TDOT 3 GREENならば、ドローンで陸上と水中の両方をシームレスに測量が可能です」と担当者は話した。
TDOTシリーズはいずれも同社のGLOWシリーズ2機種とDJI社の産業用ドローン「Matrice 300 RTK」などに搭載可能だ。
GLOWシリーズの国内販売はソフトバンク、TDOTシリーズは販売代理店を通じて行う。
同社では空からの測量が主流となる時代に“誰もがドローンを使った測量ができる”というコンセプトのもとドローン計測システムの開発・研究を展開する。
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