福島県に本社を置く、国産ドローンメーカーのイームズロボティクスは、第一種型式認証申請機「イームズ式E600-100型」を公開したほか、開発を進める2機の点検用ドローンの展示を行った。
第一種、第二種の型式認証取得を目指す、イームズロボティクスの取り組み
昨年12月の航空法改正により、レベル4飛行(第三者有人地区の目視外飛行)が可能となったことで、ドローンの本格的な社会実装と市場の拡大が期待されている。イームズロボティクスは、大きく分けて「点検」と「物流」の2種類のドローンを展示していた。
担当者は、「農業用に加え、イームズロボティクスは物流と点検の分野を視野に積極的に取り組んでいきます。ドローン点検の市場は確立し始めていますが、次のステップではドローンポートを用いた自動巡回点検など、操縦者が介入せずに、自律的に動く仕組みが必要だと考えます。それを前提に、点検用ドローンの型式認証に向けて動いています」という。
ブースでは風力発電設備の点検を目的としたドローンが展示されていた。特殊な機体に見えるが、これは、すでに第二種型式認証を申請しているヘキサコプター型の物流ドローン「E6150TC」をベースとした機体で、下部のユニットだけ風力発電設備の点検用にカスタマイズされている。「物流ドローンで第二種型式認証を取得後、それをベースにスキッド部分のユニットを点検用に切り替えて設計変更を行い、点検用ドローンとして第二種型式認証を取得します。点検用の第二種型式認証は、来年度か再来年度初頭には取得できるのではないでしょうか」(担当者)と話す。
また、ほかの機体では、プロペラを上下二重反転させたオクトコプター型の小型点検用ドローンも展示されていた。型式認証は、モーターに関するリスク評価が非常に厳しい。モータートラブルによる墜落リスクが高いマルチコプターは、認証取得が難しいという。そのため、2つのローターにトラブルがあっても安全に飛行可能なオクトコプター以上の機体をベースとしている。なお、第一種型式認証を取得するためには、部品の二重化や冗長化は必須となる。
担当者は、「点検は第三者の立入管理がしやすいため、第三者上空を飛行させない第二種型式認証の取得を考えています。しかし、将来的には都市部でも点検用ドローンを飛行させたいという需要が見込めます。今は開発段階ですが、第一種型式認証を視野に入れ、超小型の点検用ドローンも今後開発を進めていきます」と今後の見通しについて話した。
2025年、配送サービスの実用化を目指す物流ドローン開発
第⼀種型式認証申請機「イームズ式E600-100型」は、個人宅への配達に特化した新型物流ドローンだ。第三者上空飛行が可能なレベル4飛行により、過疎地や離島などの生活利便性向上と持続可能な配送スキームの構築を目指し、2025年を目標に佐川急便と進めるドローン物流実用化用の機体として開発されている。
ドローン物流には、荷物の受け渡し方法などの検証が必要であり、実証段階では自動化が難しく、課題が多い。佐川急便との取り組みでは、自動で目的地に到着したドローンは佐川急便のアプリとリンクしており、個人認証を行ってから荷物を自動的に降ろして戻ってくるというダイレクトな配送サービスを実現する。そのため、安全性の向上を目指した設計、技術開発が継続して行われており、機体は2年後の完成を目指しているという。
航空機関連企業の出身で航空機の認証に詳しい担当者は、「ドローン設計の弱いところは荷重設計がオーバースペックで、機体が重いという点。型式認証では、安全率がいくつでこの航空機の設計をしているのかを航空局に提示していかなければならない。カーボン素材を使用し、軽量かつ高い剛性を持たせるボディーの設計を現在進めており、構造の厚さも8分の1ぐらいまで抑えられる。また、人の上を飛ぶということは、落ちたら誰かが亡くなる可能性があるということ。大切なのは、システムをどう二重化していくのか。例えば、GPSが2台あっても通信系統でどこかが一緒になっていたら2つある意味がない。設計から全てを見直して開発を進めている」と語る。
また、型式認証に向け、一番の課題は「部品」だと指摘する。「航空機の場合、部品単体で認証が取れるが、ドローンは機体の認証しかありません。例えば、フライトコントローラーを作っている日本航空電子工業は、認証を知った上で部品の製造を行っており、採用する側からすると航空局に質問をされた場合に妥当性を証明できるというメリットがあります。型式認証を考えて作った部品がまだほとんど存在しないため、部品の選定が一番難しいのです」(担当者)という。
今後の機体開発について、「まず、第一種型式認証をE600で取得し、来年以降はすでに設計変更を考えています。現状、LTE主体で行っている通信についてもLTEに衛星通信を組み合わせ、山間部や離島地域でも飛行ルートを確保できる通信や荷物の自動切り離しシステムを開発するなど、今後さらにアップグレードし、本当の実装に向けた取り組みを進めていく予定です」(担当者)と話した。
目標は2025年、佐川急便と進めるドローン配送サービスの実用化に合わせ、完全なサービス実装ができる機体を作ることだという。本格的なレベル4飛行を実現する国産ドローンの機体開発の取り組みに今後も注目していきたい。
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