KDDIスマートドローンは、上空のモバイル通信を活用した物流や点検などのソリューションに加え、ドローンの遠隔自律飛行に必要なツールを揃えたパッケージ「スマートドローンツールズ」活用事例と対応機体を数多く展示。それに加え、ドローンの遠隔自律飛行デモを実演し、会場の注目を集めていた。
レベル4解禁!商用化を見据えたラインナップを展示
携帯電話事業者のモバイル通信は、サービスエリアが広く、高速・大容量のデータ伝送が可能だ。モバイル通信端末をドローンに搭載することで、一般的な無線操縦に比べて通信距離が広いため、長距離飛行が可能になるという強みを持つ。そこで、モバイル通信を利用した運航管理システムにより、目視外での長距離飛行・遠隔制御が可能になり、映像やデータを共有しながら飛行を自動化すれば人的コストの削減にもつながる。
この遠隔自律飛行に必要なモバイル通信、運航管理システム、クラウドをパッケージにしたサービスが「スマートドローンツールズ」だ。基本となる「4G LTE パッケージ」(月額4万9,800円)に加え、機体や導入サポートなど用途に応じたオプションを組み合わせることで、利用者のニーズに幅広く対応する。
KDDIとKDDIスマートドローンは、これまでモバイル通信による遠隔・長距離飛行を実現するサービスを構築し、先駆的な取り組みを行ってきた。2020年8月から長野県伊那市で行っている自治体物流配送サービスでは、ドローンで地域住民への日用品や医療品の配送をサービスとして行い、すでに1500kmの飛行実績を持つという。
物流サービスは、有人地帯における目視外飛行(レベル4)解禁に向け注目されている分野の一つであり、パートナーシップによるソリューション開発にも力を入れている。KDDIスマートドローンの設立とともに発表されたのが、航空安全技術を持つJALとのパートナーシップであり、離島地域において物品を輸送する離島間配送を行う。2022年度内には奄美群島において複数機体での実証実験を行う予定だ。地域の特徴やニーズに応じた配送サービスの構築を目指すという。
また、このような地域配送を実現するためには、ペイロードを抑えてでもより長い距離を飛べる機体が必要となる。そこで、KDDIスマートドローンは、エアロネクストとACSLが共同開発した国産の物流専用ドローン「AirTruck」と連携。飛行時間は最大50分、ペイロードは5kgとなる。
2022年3月には新潟県阿賀町において3社で実証を行っている。特に、AirTruckは遠隔から荷物を下ろすことができるため、必ずしも集荷場所に担当者を配置する必要がないという特長を持つ。さらに、エアロネクストとセイノーHDが展開する、ドローン配送と陸路の配送を組み合わせた新スマート物流「SkyHub」と連携することで、ラストワンマイルの課題にも取り組んでいる。
担当者は、「伊那市の場合、ラストワンマイルの部分はボランティアの協力を得ながら地域の見守りという観点も兼ねて行政サービスの一貫として運用を行っている。ビジネスとして市場を広げていくためには、既存の物流システムの中に空の物流システムを組み込んでいくという、陸路とのハイブリッドな運用が必要となる。例えば、3日に1度しか荷物が届かない地域でドローンによる当日配送サービスが実装されれば、ドローン物流の商用化が見えてくる。陸路との連携などこれから枠組みを広げ、各物流のニーズに対応していきたい」と話した。
具体的には、モバイル通信の上空利用に最適化されたドローン専用通信モジュール「Corewing 01」を開発し、これの搭載を進めていくことで協業していく。従来の通信モジュールと違い、Corewing 01は、ドローン専用に耐ノイズ性能を高めた通信品質、電波ログ解析、運航管理システム連携などを実現した。機体に搭載すればワンストップで運航管理ができるようになる。電波ログ解析は、LTEを使って飛行するうえで電波状況を把握することにより、ルートの選定などにも活用できる。なお、DJI Matrice 300 RTKにも搭載できるため、主要モデルでモバイル通信による遠隔制御・長距離飛行が可能になれば、点検や測量、監視など活用の幅が広がる。対応機種は順次増やしていく予定としており、対応機種以外で活用したいという場合は、通信機能に絞った「LTE通信モジュール AU5700S」が利用できる。