水素燃料電池を動力源とするハイブリッドドローンの開発に取り組んできたロボデックスは、量産モデルとなるAigis One(アイギス・ワン)を開発し、JapanDrone2022で初めて公開した。

 ロボデックスはDJI Matrice600に水素燃料電池を搭載し、長時間飛行を可能とするドローンの開発を手掛けてきた。水素燃料電池ドローンは水素燃料電池と高圧ガスタンクを搭載し、燃料電池の内部に酸素と水素燃料を取り込むことで化学反応させ、発電する仕組みだ。ロボデックスが開発するハイブリッドドローンは、排ガスを排出することなく60分以上の飛行を実現。また、水素燃料電池ドローンは、水素の充填圧力に比例して飛行時間を延ばせることが最大の特長だ。

高圧ガスタンクや水素燃料電池はボディの中に納められている。

 Aigis Oneは、これまで実証実験を行ってきた試作機のDJI Matrice600同様に、インテリジェント・エナジー製の水素燃料電池と帝人製の高圧ガスタンク(タンク容量4.7ℓ)を搭載。最大飛行時間は90分としているが、これは圧力19.6MPaで充填した現状の飛行時間となる。帝人製の高圧ガスタンクは最大圧力29.4MPaまで認可されており、一般的に29.4MPaで充填することが可能になれば、同じサイズの高圧ガスタンクを搭載しつつも120分以上の飛行が可能だという。機体の下部には5kgの荷物を収納可能なボックスを備え、Aigis Oneは物流専用機として開発された。貝應代表は「この2、3年で数多くの物流ドローンの実証実験が行われてきたが、その飛行時間は30~45分程度のものが多く、そろそろ長時間飛行による長距離物流のフェイズに移っていきたい。水素燃料電池はリチウムバッテリーの限界を超えることができるため、Aigis Oneを使った長距離物流の実証実験に関心のある企業と共に進めていきたい」と展望を話した。

新たにLTEモジュールを搭載。
ボディ内には高圧ガスタンクのほか、ジェイテクト製のキャパシタとフライトコントローラーが納められている。フライトコントローラーはPixhawkを採用。

 同社はDJI Matrice600で水素燃料電池ドローンの開発を行ってきたが、Aigis Oneには新たにLTEモジュールのほか、着陸時の精度を高めるためのRTK、FPVカメラを搭載している。それに加え、自動車のパワステなどを開発生産しているジェイテクト製のキャパシタ(蓄電器)を採用している。キャパシタは充電した電気の放電量を瞬間的に高めるものであり、水素燃料電池の電圧は常に安定しているため、瞬間的な操作入力に対するレスポンスが悪かったり、風によるふらつきに対応が遅れるといった特徴があるが、キャパシタによってこれを改善することに成功している。

 Aigis OneのAigisは、ギリシャ神話に登場する“盾”の意味を持ち、カーボンフリーや排気ガス削減など、環境に配慮して環境を守るという意味合いから名付けられた。また、男心をくすぐるデザイン性に富んだボディ形状については「デザイン性も製品の重要なポイントであり、ひとつの拘った部分でもある」と話す。

 Aigis Oneは受注を開始しており、物流をはじめとした社会実装を目指しながら改良を重ね、2022年10月には長距離飛行テストの実施を予定している。

Aigis One(アイギス・ワン)の仕様

対角寸法、高さ寸法1528mm、550mm
重量15kg
ペイロード5kg
ホバーリング精度水平垂直方向±1.5cm
最大飛行速度35km/h
最大風圧抵抗8m/s
最大飛行時間90分