ドローンの利活用を進めていくために安全性の確保は重要な課題のひとつだ。日本化薬は、日本初の産業用ドローン向け緊急パラシュートシステム「PARASAFE」を開発し、その課題に取り組んでいる。

 JapanDrone2022で日本化薬が展示した「PARASAFE」は、空中で電源ロストやモーター異常などが起きた際、墜落する前にパラシュートを開いて安全に着地させるための安全装置。日本化薬はエアバックを膨らませる火工品やシートベルトを引き込むためのマイクロガスジェネレーター等自動車用安全部品を製造しているメーカーで、火工品技術をパラシュートの展開に応用しドローン用パラシュート安全装置の開発を行っている。

 ブースで展示されていたのは、開発中の適用重量15kg用(PS CA06-01)。本体重量は500g、パラシュート面積6㎡、降下速度(理論値)7m/s。小型ドローン向けに軽量小型化され、平面の形のドローンであればドローン本体にボルトで固定する。今回、軽量小型モデルが発表された。

これから販売が予定されている15kg用(PS CA06-01)。球面など特殊な形状のドローンに取り付ける場合は要相談。
2021年12月に販売を開始した適用重量25kg用(PS CA12-01)。

 販売中の適用重量25kg用(PS CA12-01)は、多種多様なドローンに対応できるように設計され、ボルトで固定のほか、より強固なアーム部分にラインを取り付けることによって、機体全体をパラシュートで支えられるようになっている。パラシュートは、遠隔で火工品を作動させ、棒でピストンを押し上げパラシュートを射出して開く仕組みだ。目視でパイロットが危険だと判断した時に、送信機からマニュアルで作動させパラシュートを展開して緊急着陸時の衝撃を減らすことができる。

一番左が25kg用(PS CA12-01)。開発中の50kg用(PS CA15-01)、ボルトで取付けるタイプの25kg用(PS CA12-01)、ATSオートトリガーシステムが展示されていた。

 また、これから目視外飛行が増えることを想定し、開発を進めているのが「ATSオートトリガーシステム」だ。これは、搭載したセンサーにより異常な傾きなどドローンの異常を検知し、自動でパラシュートを射出してプロペラを止めゆっくりと降下させるシステムで、安全な着地をサポートする。さらに、150kgの大型ドローン用安全装置や空飛ぶクルマ用の安全装置など、今後進化するドローンに対応した開発プロジェクトを進めているという。

「PARASAFE」が将来に向け開発を進めている安全システム。

 2021年10月には、国家戦略特区である兵庫県養父市の協力のもと、実際にドローンを空中でホバリングしている状態からプロペラを止め下降させる実証実験(条件:機体重量9kg、投下高度35m)を実施した。パラシュートの使用により降下速度は1/6に低減し、着地後プロペラやバッテリーに損傷はなく、ドローン緊急降下時のパラシュート有効性を確認した。

実証実験で確認された落下するドローンの高度変化。

 担当者は、「理論値としてパラシュート不使用時に高度35mから落下開始すると3秒かからずに着地するが、パラシュートを使用すると7秒後ぐらいに着地する。その間に退避など動作をする時間、例えばブザーを鳴らすなど下にいる人間が気付けるような仕組みを検討している」という。ドローンの機体だけでなく、人や地上の安全を守るための検証が行われている。

JapanDrone2022で公開したPARASAFEの実験映像

 2022年に始まる有人地帯における目視外飛行(レベル4)では、リスクの軽減が期待される安全装置はさらに注目されていくだろう。ドローンの社会実装に向けた取り組みに今後も期待したい。