全国新スマート物流推進協議会は7月7日、東京都千代田区において「第2回新スマート物流シンポジウム」を開催した。

全国33自治体と民間企業・団体が参画して新しい地域物流を推進

 日本の物流業界は、近年のEC市場の拡大に伴う宅配取扱個数の増加や、再配達率の増加、トラック積載率の低下に加えて、“物流2024年問題”をはじめとするドライバー不足といった課題を抱えている。一方、日本の社会は人口減少や地方の過疎に起因する物流弱者や買い物弱者、医療弱者の増加といった問題が深刻になってきている。

 そこで、ラストワンマイル輸送の共同配送や貨客混載、さらには陸送にドローン等を使った空輸を組み合わせることなどによって、こうした地域の物流に関する課題を解決する取り組みを「新スマート物流」と定義し、この取り組みを推進するために2022年5月に設立されたのが「全国新スマート物流推進協議会」だ。

全国新スマート物流推進協議会の構成は、自治体を対象としたA会員が19者、企業や団体を対象としたB会員が12者、関係省庁や都道府県などの賛助会員が14者となっている。

 同協議会は北海道上士幌町、山梨県小菅村、茨城県境町、福井県敦賀市、北海道東川町の5自治体を発起人として設立された。会長は北海道上士幌町長の竹中貢氏が、常任理事を山梨県小菅村長の舩木直美氏が務めている。現在はこの5市町村をはじめ全国19の市町村が自治体を対象としたA会員として参加。このほか北海道をはじめ14道県が賛助会員として参加している。

 また、こうした市町村で新スマート物流の取り組みを実施している民間企業12社がB会員として参加。ここには、ドローン物流に必要な機体や通信、サービスを提供するACSLやエアロネクスト、KDDIスマートドローンのほか、物流事業者のセイノーホールディングス、日本航空、ココネットといった企業が参加している。

 同協議会は2022年3月に第1回新スマート物流シンポジウムを開催。このときには発起人となった5自治体による新スマート物流推進に向けた自治体広域連携協定の締結のほか、ACSLの物流用ドローン「AirTruck」が初めて公開されている。

物流DXの中にドローンを位置付ける、国の「物流革新に向けた政策パッケージ」

 今回のシンポジウムのテーマ講演では、ゲストとして招かれた国土交通省の鶴田浩久氏が登壇し、我が国の物流に関する課題と、それに対する政府の方針を説明した。

 物流を取り巻く環境では近年、トラックが1回あたりに運ぶ量が減る傾向にある一方で、その件数や頻度が増えていること、さらには2024年4月から、現在は規制がないトラックドライバーのような自動車の運転業務の時間外労働について、960時間の時間外労働規制が適用されるために、ドライバーの人材不足がさらに加速すると見込まれる。特にこの物流業界の“2024年問題”では、何も対策が講じられない場合、2024年度には14%、2030年度には34%の輸送力不足が発生するという。

日本の物流を取り巻く環境を示したグラフ。貨物1件当たりの貨物量は減少する一方で、物流件数は上昇。労働時間は全職業平均より2割長く、人手不足は約2倍となっている。

 こうした課題に対して政府は6月2日の「我が国の物流の革新に関する関係閣僚会議」において、「物流革新に向けた政策パッケージ」の取りまとめを行っている。この中では「商慣行の見直し」「物流の効率化」「荷主・消費者の行動変容」という3つの施策を設け、物流の効率化の中でドローン物流を含んだ「物流DX」の推進を掲げている。

 鶴田氏はそうした国土交通省の取り組みとして、「無人航空機等を活用したラストワンマイル配送実証事業」や、環境省と連携して実施している「過疎地域等における無人航空機を活用した物流実用化」事業を紹介した。

6月2日に取りまとめられた政府の「物流革新に向けた政策パッケージ」のポイント。
今年度から新たに始まった「無人航空機等を活用したラストワンマイル配送事業」。レベル4飛行がテーマに掲げられている。
国土交通省自動車局長(物流・自動車担当)の鶴田浩久氏。

 全国新スマート物流推進協議会に参加する自治体の多くで、ドローンによる物流プロジェクトを担っているのが、エアロネクストの物流子会社であるネクストデリバリーだ。その代表である田路圭輔氏が成果・事例紹介として登壇し、小菅村や上士幌町での取り組みを紹介。上士幌町ではトラックとドローンのリレー配送のほか、生乳検体のドローン輸送や、新聞配達に物流用ドローンを使う事例を披露した。

北海道上士幌町で行われた共同配送やドローン新聞配達の事例。

 同社は全国でこうしたドローン物流に取り組む中で、すでに物流用ドローンの航路として94ルート、492.2kmのルートを開通するとともに、各地でドローンの運航に従事するスタッフとして、配送を担う軽自動車のドライバーとドローンのパイロットを兼務する人材を募集、育成を行っていると説明した。

ネクストデリバリーではドローン物流を全国展開する中で、地域の人材を登用して育成している。

 また田路氏は、シンポジウムの前日に発表した、新スマート物流ソリューション「SkyHubTMS」について紹介。同ソリューションはサイズや重量、配送距離といった荷物の情報を入力するだけで、トラックやドローンといった配送手段を自動で適切に選択し、さらに配送ルートを最適化してくれるというものだ。同社ではこのシステムとKDDIスマートドローンの運航管理システムとの連携を同時に発表しており、実際にシステムをデモンストレーションして見せた。

7月6日にKDDIスマートドローンの運航管理システムとの連携が発表された「SkyHubTMS」の画面。
ネクストデリバリー代表取締役・エアロネクスト代表取締役CEOであり、全国新スマート物流推進協議会理事の田路圭輔氏。

 さらに田路氏に続いてKDDIスマートドローンの博野氏が登壇。SkyHubTMSと連携できるようになった同社の運航管理システムは、飛行中のドローンの監視・制御だけでなく、飛行前後のプロセスを含めて管理できるほか、複数台の運航や、他拠点からの監視にも対応している。このスマートドローン運航管理システムとSkyHubTMSが連携することで、マルチモーダル配送を効率よく実現すると説明した。

複数台運航・他拠点監視に対応したKDDIスマートドローンの運航管理システム。
KDDIスマートドローン代表取締役社長の博野雅文氏。

 パネルディスカッションでは「物流2024年問題に挑む~持続可能な地域物流の実現に向けて」と題して、国土交通省の鶴田氏のほか、佐川急便の佐藤諒平氏、サンワNETSの山崎康二氏をパネラーに、おもにトラック輸送を取り巻く環境について意見が交わされた。

 この中では、積み荷の積載率の向上やドライバーの生産性の向上と労働時間の短縮といった課題が主なテーマに。特に労働時間が長くなる要因の1つとして、荷役時間の短縮が挙げられ、現在はドライバーが行っている荷役作業を、発着地の従業員が行うほか、荷受け時刻を変えるなど、荷主も含めた商慣行の変容が必要だという意見も。また、共同配送では各社の時間軸やシステムのすり合わせが必要であったり、貨客混載では荷役のための施設や車両構造の対応といった課題が挙げられた。

パネルディスカッションには国土交通省の鶴田氏、佐川急便事業開発担当部長の佐藤諒平氏、サンワNETS専務取締役の山﨑康二氏が登壇した。

「再びドローンに関する規制改革をやらないとダメ」と河野デジタル相

 今回のシンポジウムには、特別公演として河野太郎デジタル大臣が登壇した。2021年春に、規制改革担当大臣として、ドローンに関する航空法上の許可基準の改正と手続きの合理化を実施した例を紹介。高高度の目視外飛行における補助者の配置や、目視外の物件投下に関する規制の緩和や、物件管理者への手続きの有無の明確化などについて、規制緩和の内容を自らの言葉で説明した。

 また、2022年10月に茨城県境町で行われているドローン物流の取り組みを視察した際に、“赤信号でドローンも止まらなくてはならない”という話を聞いたというエピソードを披露。このエピソードは当時、広く報道されたが、国土交通省に確認したところ、「人の上を飛ばすのは危ないから一時停止してくれ」ということだったと説明する一方で、「結果的には同じことになるんじゃないか、という話がある」と話した。

 さらに、「機体にカメラで自動検知できるようなシステムを付けろと(言うのだが)、別に空撮用のドローンを飛ばすわけでもないし、ドローン配送で過疎地域を何とかしようよと言っている中で、どれだけの人がいるところを飛ばしているのか」と疑問を呈したことを紹介。「先日も阿賀町に行った時に、(国のドローンの)担当部局はこういう状況を実際に目で見て議論しているのかと尋ねたら、“あまり霞が関から人は見に来ないんです”と言い、そういう現場もしっかり見た方がよい」と語った。

 2022年12月の航空法上のドローンに関する新しいルールが施行されたことに関しては「(こうした規制があるが国土交通省は)“レベル4になったらガンガン飛ばせますから、レベル4に移行してもらえば”と言うが、レベル4に移行するのは結構大変なこと。レベル4で飛ばせる機体がほとんどない中、今はまだレベル3でやらなければならない。そのレベル3の規制が難しい」と評し、「斉藤国土交通大臣にドローンの規制改革をもう1回やらなきゃダメだという話をしている」と話した。

 さらに、「どこまでのエラーどこまでのリスクを許容しながら、しかし、得られるベネフィットとリスクを勘案しながら、ここまでは踏み込むというのをやはり判断しながらやらなきゃいけない。リスクとベネフィットを考えながら、いかにリスクを小さくしてベネフィットを最大化するか。そしてこの日本の世の中をより便利でより快適で、より豊かにしていく。そういう努力を我々は止めてはいけないと思っている」と付け加えた。また、デジタル大臣という立場からは、「デジタルを使って便利な社会を作っていく。それが必要になってくる。デジタル庁でもドローンや自動運転をはじめとしたこれからのモビリティをどうしていくのかを検討するモビリティワーキングチームを立ち上げて、この分野も国土交通省をはじめ、霞が関や民間の事業者の方々と連携をしながら、しっかり前に進めていきたい」と述べた。

「デジタルの力で実現する地方発の豊かな社会づくり」と題した特別公演に登壇した河野太郎デジタル大臣。