金井度量衡はDJI JAPAN、NSi真岡の協力のもと、新製品であるDJI Mavic 3 Enterpriseシリーズを紹介するセミナーを開催した。
小型ながら本格的に業務をこなすMavic 3 Enterpriseシリーズ
2022年9月27日にDJIからMavic 3 Enterpriseシリーズの「DJI Mavic 3E(測量用途向け)」と「DJI Mavic 3T(点検・災害対応用途向け)」の2機種が発表され、10月から出荷を開始している。コンシューマー向けのスタンダードモデルとなるMavic 3は非常に高スペックな機体であり、それに点検と測量業務に適したカメラを搭載したのがMavic 3EとMavic 3Tだ。初めてドローンを業務に導入する人や、導入済みのドローンの買い替えを考えている人など、幅広いユーザーをカバーするモデルとなっている。また、Mavic 3 Enterpriseシリーズを購入すると、3Dモデリングやデジタル管理が可能となるDJI Terraが無料で付帯し、ドローンによるデータ取得からデータ活用まで完結できるワンストップソリューションとして販売を開始している。
Mavic 3 EnterpriseシリーズはMavic 3同様に機体重量は1kgを切り、Mavic 3Eは915g、Mavic 3Tは920gとなっている。DJI初のRTKモジュールを搭載し、測量用途向けに人気を博した「Phantom 4 RTK」は優れた機能を搭載しているが、その機体重量は1300gを超えており、機体を折り畳んで収納することはできず携帯性に難がある。小型かつ高精度なカメラを搭載したMavic 3 Enterpriseシリーズは点検・測量に使用する産業用大型ドローンよりも運用しやすいのが特徴だ。
Mavic 3Eは測量用のカメラを搭載しているのに対し、Mavic 3Tは上位モデル同等の赤外線カメラのほか、センサーサイズ1/2インチの光学広角カメラを搭載し、光学7倍×デジタル8倍の最大56倍ズームに対応した点検向けモデルとなる。
各業務をストレスフリーで実施できる優秀なカメラ性能
ドローンを利用した点検、測量において、カメラ性能や画質は非常に重要な要素である。例えば、「Matrice 300 RTK」で写真測量を行う場合、「Zenmuse P1」というカメラジンバルを用いることが多い。Zenmuse P1は写真測量に特化したカメラジンバルであり、45MPフルサイズセンサーによる並外れた効率性を発揮する。
それに対し、Mavic 3Eは20MP4/3型CMOSセンサーを備えたカメラを搭載している。当然このスペックだけを見るとZenmuse P1には劣るだろう。しかし、Mavic 3 Enterpriseシリーズは産業用ドローンのエントリーモデルとしては申し分ないほど機能性が充実している。この広角カメラに導入された大型ピクセルに伴い、精度の高いメカニカルシャッターを搭載しているため、飛行中の撮影でブレが生じにくいカメラ構造となっており、写真測量において十分な性能を備えている。Matrice 300 RTKやZenmuse P1の導入コストに対し、大幅にコストを抑えることができ、エントリーモデルとしても魅力的だ。一方で、Matrice 300 RTKは、レーザー測量用であるZenmuse L1の搭載が可能だ。
Mavic 3Eに搭載されている広角カメラは、測量用広角カメラとしても利用できるカメラであり、メカニカルシャッター機能だけではなく、マイクロ秒単位でのセンサー中心座標を取得するタイムシンク機能も搭載している。
タイムシンク機能では常にジンバルやカメラの中心座標を記録できるようになっており、Mavic 3Eに別売のRTKモジュールを搭載すると衛星の受信状況に基づいたセンサーの中心座標を自動的に記録できるよう設定されている。風に揺られたりジンバル角度を変えたりした時に、タイムシンク機能を使ってセンサーの中心がズレるのを未然に防ぐことができる。
効率的なドローン測量・点検を実施するための細かいポイント
ドローンは、バッテリーを駆動源としているため、バッテリーを交換するという手間を省くことはできない。しかし、測量や点検の現場としては「可能な限りバッテリー交換回数を減らして飛行を継続したい」というのが本音だろう。Mavic 3 Enterpriseシリーズは現場の声を反映させ、飛行可能時間をPhantom 4 RTKより15分長い約45分まで向上させた。
Mavic 3 Enterpriseシリーズは、バッテリー1本ごとの充電時間を短縮することにも成功している。従来のMavic 3の一般向けバッテリー充電器は65Wまでしか充電できなかったが、Mavic 3 Enterpriseシリーズに新しく対応した充電器では最高で100Wまで充電可能となった。Mavic 3ではフル充電までに96分ほどの時間を要していたが、Mavic 3 Enterpriseシリーズでは最短65分で充電できるようになったため、予備バッテリー本数が少ない場合であっても、充電サイクルを回しやすくなったのも大きな特徴だ。Phantom 4 RTKはバッテリー1本あたり、約80分の充電時間を要していたことを考えると、さらに効率的な運用が可能になったと言える。
豊富に拡充されたオプション品で活用用途を拡大
Mavic 3 Enterpriseシリーズは送信機が専用品になっているのに加え、オプション品も豊富に用意されている。
Mavic 3 EnterpriseはMatrice 300 RTKに類似した形状の送信機を使用するが、この送信機は新しくマイクが内蔵された専用品だ。オプション品として用意されているスピーカーを搭載している時に内蔵されたマイクに音声を吹き込むと、スピーカーからリアルタイムで音を出すことが可能。Mavic 2 Enterpriseでもスピーカーから音を流すことはできたが、Mavic 3 Enterpriseでは録音音声だけではなくリアルタイムでの音声を流せるようになった。
Mavic 3Tに搭載されたサーマルカメラとスピーカーを活用すれば人命救助や捜索活動にも活用することができる。
アクセサリーはスピーカーだけではなく、RTKモジュールも用意されている。Mavic 3 Enterprise専用に新しく開発されたRTKモジュールはcmレベルの正確な測位を実現するアイテムであり、非GPS環境であっても精度の高い測量データを取得できる。RTKモジュールは約20gと非常に小型であり、Mavic 2 Enterprise AdvancedのRTKモジュールに対し、軽量化と省電力化が施されている。ネットワークRTK、カスタムネットワークRTKサービス、D-RTK 2モバイルステーションとさまざまなRTKに対応している。
Mavic 3 Enterpriseシリーズは以上のような、点検・測量の現場の声を反映させた細かい機能が搭載された携帯可能な業務用ドローンだ。今回新発売されたMavic 3 Enterpriseシリーズは、まさにこれから点検・測量を始める方でも扱いやすいモデルであるため、初心者でも細かい業務をこなすことができるようになる。今後ドローンによる点検・測量を導入したいという事業者はMavic 3 Enterpriseシリーズの導入を検討してみるのも良いだろう。