DJIは、農薬散布におけるドローンの作業効率向上を目的としたドローン用発電機「Agras T30専用発電機 D6000i」を発表。それに加え、農薬散布用ドローン「DJI Agrasシリーズ」を展示した。また、2023年3月までに対象の農薬散布機(Agras MG-1P、Agras T20、Agras T10)を購入した人を対象に、バッテリー2本をプレゼントするキャンペーンを開始している。

約18分で充電完了! T30×バッテリー3本×D6000iで22.5haの散布が可能に!

Agras T30専用発電機D6000i。ガソリン式発電機で、定格出力4500w/最大出力6300w。Agras T30用大容量バッテリーの充電に専用発電機を用いれば、約18分で満充電となり、家庭用電源の約半分の時間まで充電時間を短縮できる。サイズは765×675×630mmで重量は約60kg。キャスター付きなので移動も簡単だ。

 農薬散布ドローンAgras T30(以下T30)は液剤30Lの大容量タンクを搭載し、主に大規模圃場や連続散布に使われている。T30は、1フライトで約10~15分、約2haの散布が可能であり、大規模の圃場や連続した散布を行う場合、複数セットのバッテリーを買い揃え、現場で充電と交換を繰り返しながら運用するのが一般的だ。

 担当者は「残量20%から100%まで充電する場合、現状の充電器を使うと50分から1時間程度要する。そのため、大規模散布を行うためには6~8本程度のバッテリーを用意する必要があった」という。

 バッテリーは1本約20万円と高価で、本数を揃えるとなるとコストもかかってしまう。そうした悩みを解決するのが、今回発表されたD6000iだ。充電時間を大幅に短縮することで現場に持ち込むバッテリー本数を削減し、充電時間を待たずに効率良く運用することが可能になる。さらに、同規格の発電機に比べ、約50%軽量化しており、その重量は約60kg。2人での積み下ろしや1人での引き回しが可能で可搬性にも優れている。価格は31万2400円(税込)と公表しており、予備バッテリーの購入を考えれば、大幅にコストを削減することが可能だ。

T30×バッテリー3本×D6000iの組み合わせで運用すると、圃場や周辺環境にもよるが5時間で22.5haの散布が可能となる。移動時でもバッテリーの充電が可能なので効率よく運用できる。

※農林水産省の「令和4年農業構造動態調査結果」(2022年6月28日公表)によると、農業経営体の1経営体当たりの経営耕地面積は全国で3.3ha、北海道で33.1haで前年に比べ全国で0.1ha、北海道で2.3ha増加し、年々規模は拡大傾向にある。

多様なシーンで利用可能なAgras T30と小回りの良さが人気のAgras T10

DJIのブースに展示されたAgras T30(右)とAgras T10(左)。

 T30とAgras T10(以下、T10)は、Agras T20の上・下位モデルとして2021年10月に発売された。両機とも飛行の安全性に注力して設計され、360度検知球型全方向レーダーシステム機能や障害物回避システム、適応飛行機能を搭載している。また、前後に備えたデュアルFPVカメラは、よりクリアな正面/背面の画像を取得し、サーチライトは従来に比べ2倍の明るさとなった。

 使い勝手も向上しており、最大4km離れた場所から安定的に画像を伝送し、5.5インチの高輝度スクリーンは炎天下の環境下でも鮮明に映像を映し出す。また、RTK高精度測位モジュールにより、センチメートルレベルの飛行計画が可能だ。さらに、重要なコンポーネントを3層保護することで、両機ともIP67規格(バッテリーを除く)となり、高い防水性能を追求したものとなっている。

DJI AgrasシリーズのフラッグシップモデルAgras T30。機体寸法は、2858(L)×2685(W)×790(H)mm(アームとプロペラを伸ばした状態)。ノズルは16個、液剤タンク容量は30L、最大散布幅は9m。価格は約170万円。

 T30は1時間あたり最大16haの散布が可能。さらにカーボンファイバーによる収納式のアーム構造で、体積を80%まで削減できる。また、果樹やさまざまな作物に対し、農薬を葉裏へ付着させる散布モードを搭載した。液剤から粒剤タンクへの交換装着も約1分で行える。

Agras T10。機体寸法は1958(L)×1833(W)×553(H)mm(アームとプロペラを伸ばした状態)。ノズル個数は4個、液剤タンク容量は8L、最大散布幅は6m。価格は約120万円。
アームは、スナップ構造によりワンタッチで素早い展開が可能。収納時には使用時の70%程度の大きさとなり、軽トラでの運搬も可能だ。
T30の粒剤散布装置。容量は40kgで1分間あたり20kg以上の吐出量を実現。

 担当者よると、販売実績の割合はT30が3割、T10が7割だという。海外に比べ、日本の圃場は各面積が小さいという特徴がある。そう考えれば、小回りが利いて可搬性も高いT10の人気が高いのは頷ける。しかし、最近はT30が小さな圃場でも利用されるシーンが見られるという。農薬散布は水田への除草剤の散布が一般的だが、最近では肥料散布への要望もあるという。「たとえば、1haの水田に40kgの肥料を播きたい場合、8月の暑い時期に人力で播くのは大変だが、T30の大型粒剤散布装置ならば1回で播くことができる」と話す。また、年々ドローンで散布できる農薬や肥料の種類が増えており、畑作で農薬や肥料をドローンで散布したいと希望する生産者も多いそうだ。「大きい圃場はT30、小さい圃場はT10という基本的な住み分けはあるが、肥料散布や果樹など活用場面の多さがT30のメリットだと思う」という。

 現在、同社の散布用ドローンは主に7割が水稲で除草剤の散布に使用されているそうだが、肥料散布、畑作での散布といった活用も提案していくとのこと。また、生産現場のほかにも、ハウスの遮光剤散布や太陽光パネルの洗浄であるとか、“散布”という場面でさらなる活用を推進していきたいと話した。

#第12回 農業Week 記事