センシンロボティクスは2022年7月に自律飛行型ドローンであるSkydio製品の取り扱いを発表した。プラント施設の設備点検ソリューションを提供する同社は、Skydio社の飛行支援ソフト「3D Scan」を使ってドローンを飛行させ、プラント点検用のデータ取得方法を実演した。

ソフトウェアのアップグレードで進化するドローン「Skydio」

 米国シリコンバレーで創業したSkydio社は、自律飛行型ドローン「Skydio」を開発。日本国内では鉄塔や橋梁などの構造物点検用としてBtoB向けに国内販売を行っている。すでに米国では2万1000機以上、日本では1000機以上が出荷されているという。

Skydio社が開発したドローン。

 Skydio社は2022年4月にSkydio2の後継機となる「Skydio 2+」を発表。飛行時間が27分に延びたほか、送信機に設けられた通信用アンテナを内蔵型から外部アンテナに変更することで、通信距離の改善も施されている。

 自律飛行型であるSkydio 2+は、高度な操縦技術を必要とせずに運用が可能なため、パイロットの育成に係るコストや時間を削減できる。また、点検構造物から設定した距離(最短80cm)を一定に保つことができるといった安全かつ簡易的に扱えるドローンとして点検現場での活用が広がっている。

 今回、センシンロボティクスがデモ飛行に使用した3D Scanは、Skydio社の飛行支援ソフトであり、プラントや複雑な構造物のデータを簡易的に取得するためのオプションソフト(別売)となっている。従来のドローンでは、構造物の周辺を手動で飛行させ、データを取得していく必要があったが、3D Scanを使用すれば、事前に生成した飛行ルートに従って自律的に飛行し、設定したラップ率での自動撮影が可能となる。

 飛行ルートを生成するためには、手動でドローンを飛行させて飛行範囲を設定していく必要があるが、1度生成したルートは保存され、次回の飛行からはいつでも自律飛行で同じルートを点検することができる。よって、損傷・補修個所を判別するための点検だけでなく、工事の進捗管理や警備監視といった業務にも3D Scanは最適といえる。なお、3D Scanによる撮影方法は、被写体の上空を測量業務のように面的に折り返ししながら飛行して撮影する2Dキャプチャーと、構造物を螺旋的に飛行して撮影する3Dキャプチャーの2つが用意されている。これらで撮影した複数枚の写真はSfMソフトを使用して3Dモデル化することで、現場を訪れずに遠方と共有して点検計画を立案することや、過去のデータと見比べて劣化の進行具合を確認するといった用途に使われる。3Dモデルを生成するSfMソフトはセンシンロボティクスも提供しているが、ユースケースによってサードパーティーのソフトも視野に入れて検討すると良いという。

障害物の多い複雑な現場でも安全かつ自律的にデータを取得

 センシンロボティクスはドローンショーケース兼実証フィールドである「ENEOSカワサキラボ」の構造物を使い、Skydio機を使った点検ソリューションのデモ飛行を実施し、3D Scanを使った飛行ルートの生成から3Dモデル生成までの一連の作業を実演した。

今回、3D Scanを使って3Dモデル化するタンク構造物

 周辺にはほかの構造物が立ち並び、障害物が多いなか、今回はプラントに設けられた円柱状のタンクを被写体としてデモ飛行を行った。タンクを3Dモデル化するため、3Dキャプチャーを使用する。

 まずはじめに、センシンロボティクスのパイロットが手動でドローンを飛行させ、飛行ルートを生成していく。飛行ルートの生成はジオフェンスを設定しながら飛行範囲を決める。その後、実際にドローンを飛ばし、ウェイポイントをマーキングしていくと、ソフトウェア上で飛行範囲や対象物の範囲、ウェイポイントを前提に飛行ルートを生成してくれる。通常のドローンであればウェイポイントを設定していくと、その点をつなぐようにルートを生成していくが、3D Scanを使うと最適な飛行ルートを導き出し、生成してくれるといった具合だ。

ドローンの飛行ルートはARによって画面上に表示される。

 飛行ルート生成後に撮影飛行を開始する。撮影飛行は事前に取得したい写真精度に合わせてラップ率を設定し、離陸ボタンを押すだけだ。飛行中は飛行経路をARでタブレット上に表示したり、撮影しているカメラの映像を映し出すことができる。なお、取得したデータは機体に搭載したSDカードに保存される。

生成した3Dモデル。非常に高精度で再現され、細部の拡大も可能。

 今回作成したタンクの3Dモデルは、データ取得の飛行にかかった時間はおおよそ40分。撮影枚数は約375枚、3Dモデルの生成には約6時間を要したという。3Dモデルの生成時間は撮影データの枚数や解像度によって異なるが、PC上で自動的に生成処理が進められるため、撮影日の夜に生成を開始した場合、翌朝には3Dモデルが完成しているといった具合に効率的に時間を使うことが可能になる。

 担当者は「飛行ルートを生成するために1度手動操縦で飛行させる必要はあるが、その後はとても手軽に運用できる。こういった点検にSkydio 2+を使用するのは、運用が簡単であるほかに、非GPS環境下であっても安全な自律飛行が可能であることや、磁場の影響を受けないといったメリットがある」という。

センシンロボティクスの「SENSYN CORE」と連携したデータの一元管理

 Skydio社はセンシンロボティクスのほか、ジャパン・インフラ・ウェイマーク、NTTコミュニケーションズ(2022年6月迄はドコモ)、KDDIスマートドローン、FLIGHTSと提携し、国内へのシェアを広げている。

 各社でSkydio社の同じソリューションを扱うなかでも、センシンロボティクスは自社のプラットフォームである「SENSYN CORE」との連携を強みとしている。SENSYN COREを使用することで、「SENSYN CORE Datastore」によってセンシンロボティクスのクラウド上で、撮影データを一元管理することが可能になる。撮影場所を地図とリンクさせたり、不具合箇所にコメントをタグ付けするなど、撮影データをより使いやすい状態にし、部署をまたいだデータの共有などもスムーズに運用可能だ。

 センシンロボティクスは、Skydio社による高度なドローンの制御技術と、自社が提供するプラットフォームを組み合わせることで、Skydio 2+のさらなる効率的な使い方を提案しており、今後はSkydio 2+の飛行ルート生成の自動化などにも取り組んでいくと話した。